悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! 学園生活を満喫するのに忙しいです

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

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第四部 第四部 古の古代帝国公爵家の野望

アド視点8 婚約者が自分のせいで反省房に閉じ込められたとは知りませんでした

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心配したフランもフランの後輩も無事だった。
しかし、事件の背景を知ろうにも、フランはこの件の親玉を馬で弾き飛ばして意識不明にしていたのだ。下っ端では全く話しにならなかった。
大半の者がフランを怖れて話さないし。

シルヴァンとフランの弟に調べさせたが、碌なものは出てこなかった。
みんな、フランを怖れて王都から逃げ出した荒くれ者の親分に見捨てられた子分たちで、小物ばかりだった。
そして、その親分も翌朝には死体になっていた。
服毒したみたいだが、絶対に毒殺だ。
騎士団の中にまで、敵の配下が入っている。
俺は頭が痛くなった。

まあ、王弟が関与が疑われるのだ。騎士団の中に無い通者がいてもおかしくない。

結局、犯人は判らず、公国の連中は怪しい……で終わってしまった。

俺はさらに警戒することにした。

そして、それ以外にフランだ。

俺は今回の件で、何とかフランと話せるようになったので、勉強を教えるという餌を前に出して、全面的に仲直りをしようと計画した。

最初は嫌がったフランも、フェリシーの夏休みの補講を避けるためという大義名分のもとにやっと許してくれたのだ。

俺にとっては物理様様だった。

そして、今日は俺が個別にフランを教えるという事で、生徒会室に呼び出したのだ。
久し振りの二人きりだった。
さすがにテスト前で生徒会室には誰も来ないだろうと思ったのだ。

フランを応接の席に案内すると、俺は当然フランの真横にピタッとくっついて座ったのだ。

腰に手を回そうとしたら流石にフランにその手を叩かれた。

「いてっ」
「アド、今回のテスト、やばいの本当に洒落じゃないんだから。平均でA組に負けたらフェリシー先生の補講まっしぐらなんだから。頼むから真面目に教えてくれる!」
フランが頼んで来たのだ。

「それは当然だろう。でも、偶にはイチャイチャしてもいいじゃないか」
俺は抵抗したが、

「テストが終わったらね」
フランは冷たかった。
「ええええ!」
俺が不満の声を上げるがフランはびくともしない。

「はいはい。じゃあ、終わったらお礼のキスくらいしてくれよな」
「判ればね」
フランは頷いてくれた。
「よし、約束だからな」
俺は喜んで教えだしたのだ。
物理を教えるならお手の物だ。フランの頭の構造は判っているし。躓きそうな所も当然わかっていた。そこを中心に説明するとフランはみるみる理解していったのだ。
物理の教師は余程教えるのが下手みたいだ。替えた方が良いんじゃないか、と俺が思わず思ってしまうくらい、フランは理解していた。


そして、勉強の終わった後に
「じゃあ、お礼のキス」
俺はそう言うと、フランに躊躇させるまもなく迫ったのだ。

「えっ」
フランは少し戸惑ったが、

チュッ

と半ば強引に唇にキスしたのだ。

さすがのフランも抵抗しなかった。

久しぶりのフランの唇は甘かった。

俺は有頂天になっていた。

でも、誰もいないと思っていたのは間違いだった。


「キャッ!」
俺たちの後ろからいきなり悲鳴が聞こえたのだ。

「えっ?」
俺達は慌ててそちらを見るとそこには真っ赤になって立っているクラリスがいたのだ。

「ええええ! クラリス、いつからそこにいたの?」
フランが慌てて聞いた。

変だ。気配は今まで感じなかったのに。こんな事があるのか。
でも、俺も動転していた。クラリスは真面目なのだ。ついこの前までは……


「す、すいません。今日は休みだから誰もいらっしゃらないと思って」
しどろもどろでクラリスが言う。
「生徒会室で不純異性行為をするなんて、何しているんですか」
クラリスの後ろからカミーユが顔を出して注意してきたんだけど。
キスくらいで不純異性行為なんて言うな!

「フランに勉強を教えていたんだ」
「勉強とキスは関係ないのでは」
俺の言い訳にカミーユが更に突っ込んできた。

「そう言うお前らこそ何しに来たんだ?」
「生徒会室は殿下のものじゃないでしょ。僕らが来ても問題ないよね」
俺の言葉に答えたカミーユの言う事も最もだ。でも、何か変だった。

「すみません。お二人がいらっしゃるとは思ってもいなくて、私がノートを忘れたので、カミーユ様についてきてもらったのです」
「いや、こちらこそ、生徒会でもないのに勝手に入ってごめんなさい。すぐに出るわ」
フランが慌てて立ち上ったのだ。

「えっ、フラン、そんなに慌てなくてもいいじゃないか」
「だって私、生徒会じゃないし、食堂戻って次の単元勉強しないと」

俺は慌てて、フランを送っていくことにした。
邪魔しやがって、そう思って二人を睨んだら、二人は何故か変な笑みを浮かべていたのだ。
その笑みはシルヴァンが碌でもないことを考えた笑みと同じだった。

俺はその時もっと注意して考えればよかったのだ。


しかし、その事を深く考える間もなく、その後から俺は急遽父から呼ばれたのだ。

折角フランと仲直りできた、このテスト前の忙しい時になんだとむっとして王宮に帰ると、なんと、サマーパーティーに急遽公国の連中が来ることになったというのだ。
本当に面倒くさい。
叔父の動きもきな臭いし、これは絶対に何か企んでいるに違いない。

俺はテスト前にもかかわらず、他の事で寝る間もないほど忙しくなったのだ。
そう、フランとの事を考えている暇も無くなったのだ。
俺の大切なフランが、俺とキスしたことで奴らの企みにはまって、フェリシーの怒りを買って反省房に閉じ込められたなんて知らなかったのだ。

知っていたならこんなにのんびり、公国の奴らを迎える準備なんてしなかったのに!

*************************************************************

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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