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襲ってきたオルコット侯爵の残党を瞬殺しました
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「さあ、心が決まりましたら、楽しい帝国への旅をお楽しみ下さい」
私は言われるまま、ほとんど着の身着のままで、剣のおじちゃんが持ってきた馬車に乗せられていた。
馬車で帝国の国境まで5日の距離だった。
でも、私は中々気分が切り替えられなかった。
「さようなら、カート」
私はけじめをつけるためにも王都を離れる時に王宮の方へ向かってその言葉を発していた。
考えたらカートにはお別れも言えなかった。
別れくらいきちんと言えば良かったかな。
いや、だめだ。お別れなんて面と向かって言えない。
言ったら確実に泣き出してしまっただろうし、絶対にカートに抱きついて離しそうになかった。
本当に醜態を晒すところだった。
そう思って私は涙にくれてカートあての手紙を書こうとした。
でも、なんて書けば良いのだろう。
中々筆は進まなかった。
書こうとすれば涙が後から後から出てくるのだ。
馬車はカートの想い出深いサウス湖畔への道を通っていたのだ。今は冬。辺りは冬景色だ。
でも夏のサウス湖畔での楽しい想い出が、私の脳裏に次々に浮かび上がって来た。
凍った湖畔に建つパフェのお店の横を通るとカートに食べさせてもらったフルーツの味を思い出すし、氷の上に浮かぶように見える湖畔の雪化粧のお城は一緒に踊ったカートのことが思い出された。そう言えばその前に第一王子としても踊ったんだ。よく考えたら踊る仕草とか癖とかおんなじだった。なんで気づかなかったんだろう。
私は大きなため息をついた。
空は私の心と同じで、空はどんよりと曇っていて、今にも雪が降ってきそうな空模様だった。
私の瞳からは次々に涙が、流れ落ちていた。
私は失恋したんだ。もう、二度とカートに会えない。
そう思うと涙は止まらなかった。
私は涙にくれていた。
私の頭の中はカートとの想い出が涙で流れていた。
もう終わった恋だ。いつまでうじうじと悩んでいるんだ。
私は自分を叱咤激励しようとしたが、だめだった。
そして、馬車は私の心を表したように凍りついた湖の畔を離れて雪の山道に入った。
その私の想い出をも亡き者にしようとする勢力が馬車に近づいているのを感じた。
私はそこに明確な悪意を感じた。
「剣のおじちゃん」
山道の中で私はルーカスに声をかけた。
「どうされましたか」
「なんかつけてきてるよね」
「ふんっ。雑魚ですな。私一人でも対処できますが」
「すいません。私が対処していいですか」
「リア様。大丈夫なのですか」
剣のおじちゃんが気を使ってくれた。
「まあ、大丈夫じゃないので、ちょっと本気を出していいですか。母達からは絶対に本気を出してはいけないと言われているのですが・・・・」
剣のおじちゃんが逡巡した。
「リア様のお好きなようにされれば良かろうかと」
少し考えたあとで剣のおじちゃんは認めてくれた。
多少地形が変わるくらい問題ないと思ってくれたのだろう。
「ありがとう」
そこは山肌が迫っている狭い道だった。両側が雪の壁になっている。
左の斜面の上から馬の蹄の音がする。
100騎以上の大軍だった。
「オーレリア・チェスター。オルコット侯爵の恨み晴らしてくれるわ。そこでなおっておれ」
騎馬隊の指揮官らしきものが叫んで、突入してきた。
100騎もの騎兵が逆落としててに突撃して来るさまは結構壮大な情景だった。
砂煙を上げて騎士の大軍が突っ込んできた。
「馬さん。ごめんなさい」
私はそう言って前もって謝ると
「カートのバカヤロウ」
私はそう叫ぶと、一瞬で障壁を発動。正面から叩きつけていた。
ドカーーーん。
その瞬間消しくずのように騎馬の大軍を弾き飛ばして、その障壁は山肌に突き刺さり、凄まじい、砂塵を巻き上げていた。
爆炎が収まった後には、そこにあった山肌は消滅しており、障壁によって大量の木々が遥か彼方まで倒されていた。
地形はちょっとどころか大きく変わっていた。
帝国の騎士たちは大きな口を開けて唖然としてみていた。
「すいません。お時間を取らせました」
私は頭を下げた。
「さ、さすが、オーレリア様。凄まじいお力ですな」
呆れたようにルーカスが言った。
5人の棋士は私の前に跪いていた。
「すいません。ちょっとむしゃくしゃしていたので、やってしまいました。馬さんたちには悪いことをしました」
「いえ、リア様に逆らったのですから、当然の結果でしょう。さすがリア様ですな」
「貴国の皇女殿下と比べると全然だと思いますが」
「はっ?、皇女殿下でございますか」
何故かルーカスさんは明後日の方を見ていた。
「エーレンフリートさんに聞きました。皇女殿下は素手でドラゴンを倒されると」
「はい?」
何故かルーカスさんはぽかんとしていた。
「そのような事を申しておられましたか」
頭を押さえている。
なんでだろう? 私はたしかにそう聞いたのに。違うんだろうか?
その後、すわ攻撃かと驚いた両軍の騎士が駆けつけて結構大変だった。
釈明は剣のおじちゃんがやってくれたが・・・・
うーん、やっぱり私は全力出してはいけないと改めて心に刻みこんだのだ。
私は言われるまま、ほとんど着の身着のままで、剣のおじちゃんが持ってきた馬車に乗せられていた。
馬車で帝国の国境まで5日の距離だった。
でも、私は中々気分が切り替えられなかった。
「さようなら、カート」
私はけじめをつけるためにも王都を離れる時に王宮の方へ向かってその言葉を発していた。
考えたらカートにはお別れも言えなかった。
別れくらいきちんと言えば良かったかな。
いや、だめだ。お別れなんて面と向かって言えない。
言ったら確実に泣き出してしまっただろうし、絶対にカートに抱きついて離しそうになかった。
本当に醜態を晒すところだった。
そう思って私は涙にくれてカートあての手紙を書こうとした。
でも、なんて書けば良いのだろう。
中々筆は進まなかった。
書こうとすれば涙が後から後から出てくるのだ。
馬車はカートの想い出深いサウス湖畔への道を通っていたのだ。今は冬。辺りは冬景色だ。
でも夏のサウス湖畔での楽しい想い出が、私の脳裏に次々に浮かび上がって来た。
凍った湖畔に建つパフェのお店の横を通るとカートに食べさせてもらったフルーツの味を思い出すし、氷の上に浮かぶように見える湖畔の雪化粧のお城は一緒に踊ったカートのことが思い出された。そう言えばその前に第一王子としても踊ったんだ。よく考えたら踊る仕草とか癖とかおんなじだった。なんで気づかなかったんだろう。
私は大きなため息をついた。
空は私の心と同じで、空はどんよりと曇っていて、今にも雪が降ってきそうな空模様だった。
私の瞳からは次々に涙が、流れ落ちていた。
私は失恋したんだ。もう、二度とカートに会えない。
そう思うと涙は止まらなかった。
私は涙にくれていた。
私の頭の中はカートとの想い出が涙で流れていた。
もう終わった恋だ。いつまでうじうじと悩んでいるんだ。
私は自分を叱咤激励しようとしたが、だめだった。
そして、馬車は私の心を表したように凍りついた湖の畔を離れて雪の山道に入った。
その私の想い出をも亡き者にしようとする勢力が馬車に近づいているのを感じた。
私はそこに明確な悪意を感じた。
「剣のおじちゃん」
山道の中で私はルーカスに声をかけた。
「どうされましたか」
「なんかつけてきてるよね」
「ふんっ。雑魚ですな。私一人でも対処できますが」
「すいません。私が対処していいですか」
「リア様。大丈夫なのですか」
剣のおじちゃんが気を使ってくれた。
「まあ、大丈夫じゃないので、ちょっと本気を出していいですか。母達からは絶対に本気を出してはいけないと言われているのですが・・・・」
剣のおじちゃんが逡巡した。
「リア様のお好きなようにされれば良かろうかと」
少し考えたあとで剣のおじちゃんは認めてくれた。
多少地形が変わるくらい問題ないと思ってくれたのだろう。
「ありがとう」
そこは山肌が迫っている狭い道だった。両側が雪の壁になっている。
左の斜面の上から馬の蹄の音がする。
100騎以上の大軍だった。
「オーレリア・チェスター。オルコット侯爵の恨み晴らしてくれるわ。そこでなおっておれ」
騎馬隊の指揮官らしきものが叫んで、突入してきた。
100騎もの騎兵が逆落としててに突撃して来るさまは結構壮大な情景だった。
砂煙を上げて騎士の大軍が突っ込んできた。
「馬さん。ごめんなさい」
私はそう言って前もって謝ると
「カートのバカヤロウ」
私はそう叫ぶと、一瞬で障壁を発動。正面から叩きつけていた。
ドカーーーん。
その瞬間消しくずのように騎馬の大軍を弾き飛ばして、その障壁は山肌に突き刺さり、凄まじい、砂塵を巻き上げていた。
爆炎が収まった後には、そこにあった山肌は消滅しており、障壁によって大量の木々が遥か彼方まで倒されていた。
地形はちょっとどころか大きく変わっていた。
帝国の騎士たちは大きな口を開けて唖然としてみていた。
「すいません。お時間を取らせました」
私は頭を下げた。
「さ、さすが、オーレリア様。凄まじいお力ですな」
呆れたようにルーカスが言った。
5人の棋士は私の前に跪いていた。
「すいません。ちょっとむしゃくしゃしていたので、やってしまいました。馬さんたちには悪いことをしました」
「いえ、リア様に逆らったのですから、当然の結果でしょう。さすがリア様ですな」
「貴国の皇女殿下と比べると全然だと思いますが」
「はっ?、皇女殿下でございますか」
何故かルーカスさんは明後日の方を見ていた。
「エーレンフリートさんに聞きました。皇女殿下は素手でドラゴンを倒されると」
「はい?」
何故かルーカスさんはぽかんとしていた。
「そのような事を申しておられましたか」
頭を押さえている。
なんでだろう? 私はたしかにそう聞いたのに。違うんだろうか?
その後、すわ攻撃かと驚いた両軍の騎士が駆けつけて結構大変だった。
釈明は剣のおじちゃんがやってくれたが・・・・
うーん、やっぱり私は全力出してはいけないと改めて心に刻みこんだのだ。
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