22 / 66
白馬の騎士視点 初恋の相手に失恋しました
しおりを挟む
長男と次男のお家争いが終わって長男が継ぐことが決まって長男と仲の良かった三男だった父も帝都に帰還できることが決まった。俺もそれについて帰ったのだ。
我が一族は家を継がない人間が剣聖を代々継いでいた家だった。
俺は帝都に帰るやいなや、必死に剣術を磨き出したのだ。三男の父が家を継ぐことは無いと思っていたから俺が剣聖を継いでも何も問題はないだろうと思ったのだ。というか、長男も次男も息子がいなかったので、大叔父から継ぐ者がいなかったのだ。剣聖だった大叔父も父に継がせようとしたことがあったらしいが、父は剣術はからきしだめで匙を投げだしていたのだ。
その稽古は過酷を極めた。俺は何度も投げ出しそうになった。
しかし、その度にあの生意気なリナの「私は剣聖のお嫁さんが良い」のひと言が思い出されて留まったのだ。
俺は16歳の時に学園に入った。学園では多くの女たちが俺に寄って来たが、俺はあまり興味がわかなかった。何故か金色のくりくりした瞳が思い出されたのだ。
俺は首を振ったが、あの子以上に惹かれる者がいなかった。女たちはお互いにいがみ合って本当に口うるさかった。
まあ、三男の息子の俺が別に焦る必要はあるまいと思ったのも事実だ。相手はじっくりと選べばいいだろうと。
しかし、のんびりしていた俺が20になった時に長男だった伯父が亡くなった。
元々体がそれほど丈夫でなかった上に継承争の時の毒が遠因で亡くなったらしい。
それからが大変だった。父が継ぐことになり、俺の仕事も莫大に増えたのだ。その頃、剣聖も継いでいた俺は遠征に同行することも求められていて、帝国内を飛び回ってもいたのだ。
そんな時だ。リナがメンロスの王子と婚約したのは。
俺はあの小さなリナが俺以外の人間と婚約する何て想像もしていなかったのだ。
そして、とてつもないショックを受けていることに驚いた。
「将来結婚してあげてもいい」
その言葉はほんの子供心の戯言だ。俺自身、そこまで本気にしていなかったし、剣聖になったのもたまたま俺しか継ぐ者がいなかったからだ。
でも、それを聞いた俺はしばらく何も言えなかったのだ。
俺は慌てて使節団の一行に自分を紛れ込まして、ハウゼンに行った。
そこでは国王夫妻が大きくなった俺を見て歓迎してくれた。
しかし、そこにはもうリナはいなかった。リナの代わりに鈍そうな男が養子として座っていたのだ。
ハウゼンで女が継ぐことは叶わず、国王の甥を迎え入れたらしい。
俺がきょろきょろしているのを見て、
「ああ、リナなら婚約してメンロスに行ったわ。オイゲンの所からどうしても息子の嫁に欲しいと頼まれたのよ」
王妃はそう言うと意味深に笑ってくれたのだ。
王妃は言葉の外に遅かったと言っていた。
俺は少しむっとして
「いえ、この地で一年間も過ごさせていただいたので、その時の御礼が彼女にも言えたらと思ったのです。彼女が幸せならそれでよいです」
俺は自分の矜持が傷付いたのを悟られないように気を付けながら、そう言い切ったのだ。
「そう、ならそう伝えておくわ」
王妃は妖艶に笑ってくれたのだ。
王妃の笑みは俺の悔しい心を見透かしたようだった。
それは俺の初めての失恋だった。
我が一族は家を継がない人間が剣聖を代々継いでいた家だった。
俺は帝都に帰るやいなや、必死に剣術を磨き出したのだ。三男の父が家を継ぐことは無いと思っていたから俺が剣聖を継いでも何も問題はないだろうと思ったのだ。というか、長男も次男も息子がいなかったので、大叔父から継ぐ者がいなかったのだ。剣聖だった大叔父も父に継がせようとしたことがあったらしいが、父は剣術はからきしだめで匙を投げだしていたのだ。
その稽古は過酷を極めた。俺は何度も投げ出しそうになった。
しかし、その度にあの生意気なリナの「私は剣聖のお嫁さんが良い」のひと言が思い出されて留まったのだ。
俺は16歳の時に学園に入った。学園では多くの女たちが俺に寄って来たが、俺はあまり興味がわかなかった。何故か金色のくりくりした瞳が思い出されたのだ。
俺は首を振ったが、あの子以上に惹かれる者がいなかった。女たちはお互いにいがみ合って本当に口うるさかった。
まあ、三男の息子の俺が別に焦る必要はあるまいと思ったのも事実だ。相手はじっくりと選べばいいだろうと。
しかし、のんびりしていた俺が20になった時に長男だった伯父が亡くなった。
元々体がそれほど丈夫でなかった上に継承争の時の毒が遠因で亡くなったらしい。
それからが大変だった。父が継ぐことになり、俺の仕事も莫大に増えたのだ。その頃、剣聖も継いでいた俺は遠征に同行することも求められていて、帝国内を飛び回ってもいたのだ。
そんな時だ。リナがメンロスの王子と婚約したのは。
俺はあの小さなリナが俺以外の人間と婚約する何て想像もしていなかったのだ。
そして、とてつもないショックを受けていることに驚いた。
「将来結婚してあげてもいい」
その言葉はほんの子供心の戯言だ。俺自身、そこまで本気にしていなかったし、剣聖になったのもたまたま俺しか継ぐ者がいなかったからだ。
でも、それを聞いた俺はしばらく何も言えなかったのだ。
俺は慌てて使節団の一行に自分を紛れ込まして、ハウゼンに行った。
そこでは国王夫妻が大きくなった俺を見て歓迎してくれた。
しかし、そこにはもうリナはいなかった。リナの代わりに鈍そうな男が養子として座っていたのだ。
ハウゼンで女が継ぐことは叶わず、国王の甥を迎え入れたらしい。
俺がきょろきょろしているのを見て、
「ああ、リナなら婚約してメンロスに行ったわ。オイゲンの所からどうしても息子の嫁に欲しいと頼まれたのよ」
王妃はそう言うと意味深に笑ってくれたのだ。
王妃は言葉の外に遅かったと言っていた。
俺は少しむっとして
「いえ、この地で一年間も過ごさせていただいたので、その時の御礼が彼女にも言えたらと思ったのです。彼女が幸せならそれでよいです」
俺は自分の矜持が傷付いたのを悟られないように気を付けながら、そう言い切ったのだ。
「そう、ならそう伝えておくわ」
王妃は妖艶に笑ってくれたのだ。
王妃の笑みは俺の悔しい心を見透かしたようだった。
それは俺の初めての失恋だった。
182
あなたにおすすめの小説
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
初対面の婚約者に『ブス』と言われた令嬢です。
甘寧
恋愛
「お前は抱けるブスだな」
「はぁぁぁぁ!!??」
親の決めた婚約者と初めての顔合わせで第一声で言われた言葉。
そうですかそうですか、私は抱けるブスなんですね……
って!!こんな奴が婚約者なんて冗談じゃない!!
お父様!!こいつと結婚しろと言うならば私は家を出ます!!
え?結納金貰っちゃった?
それじゃあ、仕方ありません。あちらから婚約を破棄したいと言わせましょう。
※4時間ほどで書き上げたものなので、頭空っぽにして読んでください。
田舎娘をバカにした令嬢の末路
冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。
それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。
――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。
田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
俺の妻になれと言われたので秒でお断りしてみた
ましろ
恋愛
「俺の妻になれ」
「嫌ですけど」
何かしら、今の台詞は。
思わず脊髄反射的にお断りしてしまいました。
ちなみに『俺』とは皇太子殿下で私は伯爵令嬢。立派に不敬罪なのかもしれません。
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
✻R-15は保険です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる