王太子に婚約破棄されて両親を殺した野蛮王に売られそうになった時、白馬の騎士様が助けてくれました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

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白馬の騎士視点 初恋の相手に失恋しました

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長男と次男のお家争いが終わって長男が継ぐことが決まって長男と仲の良かった三男だった父も帝都に帰還できることが決まった。俺もそれについて帰ったのだ。

我が一族は家を継がない人間が剣聖を代々継いでいた家だった。
俺は帝都に帰るやいなや、必死に剣術を磨き出したのだ。三男の父が家を継ぐことは無いと思っていたから俺が剣聖を継いでも何も問題はないだろうと思ったのだ。というか、長男も次男も息子がいなかったので、大叔父から継ぐ者がいなかったのだ。剣聖だった大叔父も父に継がせようとしたことがあったらしいが、父は剣術はからきしだめで匙を投げだしていたのだ。

その稽古は過酷を極めた。俺は何度も投げ出しそうになった。
しかし、その度にあの生意気なリナの「私は剣聖のお嫁さんが良い」のひと言が思い出されて留まったのだ。

俺は16歳の時に学園に入った。学園では多くの女たちが俺に寄って来たが、俺はあまり興味がわかなかった。何故か金色のくりくりした瞳が思い出されたのだ。
俺は首を振ったが、あの子以上に惹かれる者がいなかった。女たちはお互いにいがみ合って本当に口うるさかった。

まあ、三男の息子の俺が別に焦る必要はあるまいと思ったのも事実だ。相手はじっくりと選べばいいだろうと。
しかし、のんびりしていた俺が20になった時に長男だった伯父が亡くなった。
元々体がそれほど丈夫でなかった上に継承争の時の毒が遠因で亡くなったらしい。

それからが大変だった。父が継ぐことになり、俺の仕事も莫大に増えたのだ。その頃、剣聖も継いでいた俺は遠征に同行することも求められていて、帝国内を飛び回ってもいたのだ。

そんな時だ。リナがメンロスの王子と婚約したのは。
俺はあの小さなリナが俺以外の人間と婚約する何て想像もしていなかったのだ。

そして、とてつもないショックを受けていることに驚いた。
「将来結婚してあげてもいい」
その言葉はほんの子供心の戯言だ。俺自身、そこまで本気にしていなかったし、剣聖になったのもたまたま俺しか継ぐ者がいなかったからだ。
でも、それを聞いた俺はしばらく何も言えなかったのだ。

俺は慌てて使節団の一行に自分を紛れ込まして、ハウゼンに行った。

そこでは国王夫妻が大きくなった俺を見て歓迎してくれた。
しかし、そこにはもうリナはいなかった。リナの代わりに鈍そうな男が養子として座っていたのだ。
ハウゼンで女が継ぐことは叶わず、国王の甥を迎え入れたらしい。

俺がきょろきょろしているのを見て、
「ああ、リナなら婚約してメンロスに行ったわ。オイゲンの所からどうしても息子の嫁に欲しいと頼まれたのよ」
王妃はそう言うと意味深に笑ってくれたのだ。
王妃は言葉の外に遅かったと言っていた。

俺は少しむっとして
「いえ、この地で一年間も過ごさせていただいたので、その時の御礼が彼女にも言えたらと思ったのです。彼女が幸せならそれでよいです」
俺は自分の矜持が傷付いたのを悟られないように気を付けながら、そう言い切ったのだ。
「そう、ならそう伝えておくわ」
王妃は妖艶に笑ってくれたのだ。
王妃の笑みは俺の悔しい心を見透かしたようだった。

それは俺の初めての失恋だった。
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