王太子に婚約破棄されて両親を殺した野蛮王に売られそうになった時、白馬の騎士様が助けてくれました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

文字の大きさ
51 / 66

帝国皇后視点 息子がハウゼン王国を復活させようとしていると聞いてやめさせようとしたら皇帝に止められてしまいました

しおりを挟む
私はアデリナを初めてみた時に驚いた。長い青い髪と金色に光るひとみがあまりにもカリーナに似ていたのだ。
私の驚きは想像に絶するものだった。

私は過去の嫌な事を思い出してしまったのだ。

カリーナにアレクシスを取られたときのことがまざまざと思い出されたのだ。

また、カリーナが現れて、私の息子を私から取り上げようとしていると感じてしまった。

エルヴィンは帝国の第一皇子で次の皇帝だ。そして、私の唯一人の子供だった。
次期皇帝は確実だと思われたが、その下には側室の子供のクリスティーネがいるのだ。
下手な者をその配偶者にすると足元を救われる可能性もある。私はなんとしてもエルヴィンに皇帝位を継がせたかった。

そんな時に考え無しのエルヴィンは亡国の王女でカリーナの娘と婚約すると言いだしたのだ。
本当に母に似てアデリナも男をひきつけるホルモンを持っているらしい。
私は頭に血の上った状態でアデリナに会ったのだ。冷静な判断が出来るわけはなかった。

そして、騎士たちに指示して、護送車でアデリナをディール伯爵家に送るように指示を出してしまったのだ。

それは流石にやりすぎだった。せめて普通の馬車で送り出せば良かった。
私が後悔した時だ。

血相変えてやってきたエルヴィンは、アデリナは諦めるようにという私の言葉は全く聞いてくれなかった。

出ていこうとするエルヴィンに私は言った。
「お待ちなさい。エルヴィン! あなたは帝国の第一皇子なのです」
「第一皇子である前に私は剣聖です。これ以上余計なことをされたら、私は帝国の第一皇子を降りますから」
と言い放ってくれた。
「別に妹のクリスがいるのです。帝位はクリスに継がせれは良いでしょう。そこまで反対するならば俺は好きにさせてもらいます」
そう言うや、エルヴィンは飛び出したのだ。

私の制止など聞いてもくれなかった。

呆然と私が佇んでいると侍女頭が、私の騎士が帝国を裏切ってアデリナをエンゲルに引き渡そうとしていたと報告してきた。

「エルヴィン様がその場に居合わせられて止められたそうですが、もうエルヴィン様の立腹は相当なもので、二度と宮廷には帰らないとおっしゃられているとか」
「な、なんですって、そんな事が許されるわけはないでしょう。直ちに帰還するように伝えなさい」
私は侍女頭に伝えたが、エルヴィンはアデリナといっしょにディール伯爵領に行ったという話だった。

「本当にどいつもこいつも私の言うことを聞かないのね」
私は周りの侍女たちに八つ当たりしていた。


そんな時だ。私は帝国軍がハウゼン王国を復活させてアデリナを女王にすると言う話を聞いたのだ。
寝耳に水だった。

私は事実を確かめるためにすぐにヘルムートの所に行った。

「ヘルムート、どういうことなのですか? ハウゼン王国を復活させてアデリナを女王にするなど正気の沙汰ですか?」
私は最初から喧嘩腰だった。

「何を言っているのだ。オリーヴィア。俺は何もそのようなことを望んではいない」
「じゃあ誰が望んでいるのです」
私が驚いて聞くと、
「エルヴィンが剣聖の剣に誓って、エンゲルに鉄槌を下すと宣言したのだ」
「なんですって! あの子がそんな事を進んで言う訳はないでしょう。また、アデリナにそそのかされたのね」
私はムッとして言った。

「そんな事をすれば」多くの兵士たちが死にましょう。直ちに皇帝命令で停められればいいではありませんか」
私が言うと、

「それが出来ないからこうして苦慮しているのだ」
ヘルムートが困り果てて言ってきた。

「何故です? あなたは唯一の皇帝ではありませんか?」
「皇帝と言えども剣聖が一度言い出したことは覆せんのだ」
「そんな馬鹿な」
私には信じられなかった。

「帝国の始まり自体が剣聖の誓いですから。皇帝陛下と言えどもひっくり返せないのです。そもそも、今回のエンゲルのハウゼン侵攻は我が同盟国に対しての攻撃でしたからな。元々軍部からは何故援軍を送らなかったと突き上げられておるのです」
「それに今回の剣聖に対する婚約者の誘拐未遂に対して、軍部の強硬派も主戦論でして、我が外務もどうしようもありません。皇后陛下からエルヴィン殿下に対してなんとかしていただけるようにお話して頂けたら嬉しいのですが」
軍務卿の後に外務卿も言ってくれた。

「ちょっとお待ちなさい。そもそも、私はエルヴィンの婚約者にあの女をおすのを許した記憶はありませんが」
私がムッとして言うと、

「オリーヴィア、それは無理だ。エルヴィンは剣聖の剣の誓いでアデリナと結婚すると誓っているのだ。剣聖の誓いは皇帝や皇后の意向に左右はされない」
「そんな事が許されるのですか」
ヘルムートの言葉に私が言うと、

「許されるも何も事実だ。軍部の騎士たちもその点についてはエルヴィンを支持している。それに10年前の皇位継承問題で我が国を引っ掻き回してくれたエンゲルに対して、帝国民も良い印象は持っていない。軍部の強硬派はエルヴィンの侵攻作戦を支持しているのだ。ここはもう認めるしかない」
「そんな事が……」
私は言葉の発しようもなかった。

「陛下がアデリナ様と結婚するのを素直に認めていればここまでにならなかったかもしれませんが、もう、これは停められません」
軍務卿が言ってくれた。
「何を言っているのですか? こうなったら私が行ってカルヴィンに言い聞かせます」
私は閣僚たちに宣言した。

「オリーヴィア、これ以上、話をこじらせるな。下手したらエルヴィンは侵攻後にハウゼンの王配となって二度と帝国に帰ってこないと言いかねないぞ」
「そんな馬鹿な。あの子は私が泣いて頼めば聞いてくれると思います」
ヘルムートの言葉に私は言い張った。

「オリーヴィア、とりあえず、今日は部屋に帰って寝るんだ。一晩寝ればもう少し冷静に慣れよう」
「しかし」
「次女頭、皇后を部屋に連れ帰れ。じっくりと休養させるのだ」
「あなたでもそれでは……」
私はなおも言い募ろうとしたが、ヘルムートは首を振って次女頭たちに指示してくれたのだ。
誰も私の言うことなんて聞いてくれなかった。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

初対面の婚約者に『ブス』と言われた令嬢です。

甘寧
恋愛
「お前は抱けるブスだな」 「はぁぁぁぁ!!??」 親の決めた婚約者と初めての顔合わせで第一声で言われた言葉。 そうですかそうですか、私は抱けるブスなんですね…… って!!こんな奴が婚約者なんて冗談じゃない!! お父様!!こいつと結婚しろと言うならば私は家を出ます!! え?結納金貰っちゃった? それじゃあ、仕方ありません。あちらから婚約を破棄したいと言わせましょう。 ※4時間ほどで書き上げたものなので、頭空っぽにして読んでください。

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

俺の妻になれと言われたので秒でお断りしてみた

ましろ
恋愛
「俺の妻になれ」 「嫌ですけど」 何かしら、今の台詞は。 思わず脊髄反射的にお断りしてしまいました。 ちなみに『俺』とは皇太子殿下で私は伯爵令嬢。立派に不敬罪なのかもしれません。 ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻R-15は保険です。

処理中です...