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国王のいちばん大事な仕事は領地の配分ではなくて金勘定だと言うことを思い知らされました

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伯爵を一撃で返り討ちにしたクリスティーン様を見て、敵軍兵士たちは戦意喪失、降伏した。まあ、クリスティーン様はまだまだ戦い足りなさそうにしていたが、ここは我慢してもらうしか無い。

1時間位して遅れてやってきた本隊は、そのまま、パパランダ伯爵領を制圧に向かった。その日のうちに、パパランダ地方は完全制圧、アンネローゼ王国に編入された。

一週間もしないうちに領土は3倍になったが、その統治をどうするか、悩みどころだ。ここで失敗すると反乱が起こったりして大変なのだ。そもそも前回のクイバニ伯爵領の統治もまだ、ままならないのだ。それが3倍ってどうするんだ?

私の執務室にイェルド様とフィル様それに元ヴァルドネル伯爵家の家令のヤルモが集まって悪巧みをしているんだけど。
うーん、私を巻き込まないで欲しい。
そう思っていた時だ。

「殿下、何ですか?その他人事みたいな感じは」
私の顔を見て、イェルド様が嫌味を言ってくる。

「ええええ、だって」
「だっても糞もここの女王はあなたです。あなたの国なんですよ」
「そうです。もう少しきちんと考えていただかないと」
ヤルモにまでブツブツ言われるんだけど。なんだかなと思わないまでもない。

「皆、それは違うわよ。ここは皆の国よ。私は国民皆が暮らしやすい国を作っていきたい」
「それ絶対に自分が考えるのが嫌なだけよね」
「アン、あなたも少しは考えなさいよ」
私の横に居たイングリッドとエルダにまで言われるんだけど。

「今回、クイバニ領での戦功で一番は当然アンだろう」
フィル様がいきなり言われるんだけど。
「まあ、クイバニ伯爵を消滅させたのは殿下だし」
「伯爵邸も消滅させられましたが」
「私達も殺されそうになったけれど」
イェルド様の言葉にヤルモとイングリツドが言う。イングリッドは未だに根に持っているみたいだ。もう、ちょっと忘れていただけじゃない・・・・。
そう思ったらイングリッドの目が怖かった。

「殿下のご希望は」
イェルド様が聞いてきた。

領地の問題は貴族たちの根幹に係る問題で、とても大切なことだと、フィル様の婚約者として少しだけ受けたお妃教育でも言われていた。
ヴァルドネル伯爵についていたダール子爵などは一番最初から味方していたのだから自分こそ、伯爵になるべきだと思っているみたいだったが。でも、今回の件についてはまだ何も活躍していないと思うんだけど。
「ここはニクラスに」
私が言うと、
「えっ」
端の方にいたニクラスが驚いた声を出した。

「えっ、ニクラスはただついてきていただけじゃない」
イングリッドが言うんだけど。

「でも、私のせいで彼のお父様がブルーノに殺されたのは事実だし、このヴァルドネルの地も私達が今は占拠しているようなものじゃない。彼には新たな領地を治めることで、力を発揮して欲しいの」
私が言うと、

「左様ですな。一番最初から殿下にお味方しているのはニクラスですから。彼に新たな領地を与えるのは地方派も文句は言いますまい」
「でも、良いのか。あの地はあの下衆なクイバニ伯爵が治めていた地だぞ、配下の子爵家や男爵家も一癖も二癖もあるものが多かろう」
フィル様が指摘してくれるんだけど。

「そこはヤルモがちゃんとフォローしてくれるわ」
私が笑って言った。
「この地のことは」
「ここはイェルド様がいるから大丈夫よ」
「この地を明け渡せと仰せか」
ヤルモが食いついてきた。

「ヤルモ。この戦いが終了すれば、この地はちゃんとニクラスに返すわよ」
私が言うと

「いや、それは判りません」
イェルと様が反対してきた。

「えっ」
「そんな」
皆げっとした顔でイェルド様を見る。

「この戦いが終わればこの国は全てアンネローゼ王国になるのです」
皆を見回してイェルド様が言った。

「今回の治世いかんによってはもっと大きな領地の治世をお願いするかも知れませんからな」
イェルド様が笑みを浮かべて言う。

「な、なるほど、ニクラス様は侯爵になるかもしれないということですな」
ちゃっかりと確約をもらいたそうにヤルモが言うんだけど。

「ニクラスだけではないぞ。ヤルモ、その方も爵位もちになるのは確実なのだから」
「わ、私もですか」
「当然だ。うまく行けば伯爵位もある得るぞ」
「そ、そんな、伯爵位などと」
ヤルモが慌てて言うんだけど。

「まあ、そこは、ブルーノに勝てればよ」
私が皆に釘を刺した。

「まあ、そうよね」
エルダが頷く。

「それでパパランダ領は」
「そこはクリスティーん様で決まりでしょう」
「まあ、そうですな。ただし、税の半分はこの戦争が終わるまでは国に半分治めてもらうということで。それはニクラスも宜しくお願いしますね」
黒い笑みを浮かべてイェルド様が言うんだけど。
「しかし、税が取れるのは来年の秋だろう?」
「基本は兵士を派遣してもらいます。伯爵家は千人、子爵家は200人。男爵家は40人」
イェルド様の言葉に皆息を飲んだ。

「約半分の戦力か」
「それも兵糧等込です」
「なるほど、結構な出費だな」
「まあ、1年位何とかなるでしょう」
「でも、1年くらいしか続かないぞ」
「それはブルーノ側も同じかと。奴らは今までもエスカールとは結構やりあっていますからな。食料はオースティン経由である程度は輸入するので物価もそれほど高くならないかと思いますから」
「まあ、それでやっていくしかあるまい」

フィル様が言う。ややこしい金勘定はイェルド様らに任せておけば大丈夫だろう。
私は甘かった。
「そうね。イェルド様。宜しくお願いします」
私は他人事宜しく思っていたのだ。

「何をおっしゃっているのですか。殿下。これこそ、一番大切な国主のお仕事です。これから私と一緒に計算しましょうね」
ええええ! イェルド様から黒いオーラが出ている。

そんな、ばかな。

金計算は不得意ではないけれど、何か碌でもない気がする。

これが国王教育です、とそれから1週間。延々と、軍費にかかる金勘定の計算を一からイェルド様に叩き込まれたのだった・・・・




そして、戦いがいかに金がかかるかよく判った。こんなにかかるのに戦争を起こす意味がわからない・・・・。終わった後に借金しか残らないじゃない・・・・

もう起こしているのに今更判っても仕方がないじゃない!
夜逃げをしようと私は真面目に考えたのだった。
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