悪役令嬢に転生したみたいだけど、皇子様には興味ありません。お兄様一筋の私なのに、皇帝が邪魔してくるんですけど……

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

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私の元にホフマンの騎士達が続々と集まってくれました

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 お兄様の胸の中はとても温かかった。
 私はぐっすり眠れたのだ。
 しかし、だ。
 その朝方だ。

「アルトマイアー様! これはどういう事ですか? 幾らご兄妹とはいえ、一緒の布団で寝られるなど、言語同断です!」
 私は横で大声で怒られるお兄様に対する叱責の声で目覚めた。

 これはニーナだ!
 やばい!
 私は目を覚ました。

「いや、ニーナ。ユリアが不安に思っていてだな」
「不安に思おうが何しようが、ユリアーナ様はあなた様の大切な妹ではありませんか。その方と一緒に寝るなど、変な噂が立てばどうなさるおつもりですか?」
「責任は俺が取るが」
「はああああ! どう責任を取ると申されるのです」
「ニーナごめん。私が不安に思ってお兄様に昔みたいに一緒に寝てもらったのよ」
 怒り狂うニーナに私が言い訳した。
「ユリアーナ様もユリアーナ様です。幾ら不安に思おうが、もうあなた様も学園に入学されたのですよ。いつ婚約者様が出来ても問題ないお年頃なのです。行動はもっと慎重になって……」
「ニーナ、だから全責任は俺が取ると言っただろう。俺がユリアを娶る」
「「えっ?」」
 私はお兄様から変な言葉を聞いたような気がした。
 思わずお兄様をガン見した。
 私がその言葉をもう一度尋ねようとした時だ。
「アルトマイアー様。ここでしたか?」
 そこにお兄様の護衛騎士のギルベルトが現れた。
「おお、ギルベルト、どうした?」
「どうしたではありません。いきなりいなくなるのはおやめ下さい」
「ユリアと一緒にダンジョンに潜りに行くと言っただろうが」
 お兄様が怒るギルベルトに反論したけれど、
「これがダンジョンに行かれた結果なのですか? いきなり皇帝陛下に反逆されたと知った時は心臓がとまくるかと思いました。ご兄妹の皆様方もショックを受けていらっしゃいましたよ」
「それは悪かったな。で、首尾は」
「首尾はではございません!」
 あまりにも平然とお兄様が反論するのでギルベルトは更にキレていた。
「いきなり遠隔地の騎士達から知らされて、館は大混乱に陥ったのでございますよ」
「私ちゃんと送ったよね」
 私が言い訳すると、
「「『先立つ不孝をお許しください』で判ると思いますか!」」
 私の言葉に二人に突っ込まれてしまった。
 お兄様が多少の誤差が出るかもしれないと言われたので、届かなかったことを考えて暗号にしたのに! 意味がわからなかったらしい。
 私とお兄様が無理心中するなんてあり得ないとたちの悪い冗談で済んでしまったそうだ。
 必死に考えたのに……

「で、どうしたのだ?」
「エックハルト様が公爵様に連絡されました。公爵様は最悪の手段としていた総動員令を発令されました」
「そうか、予定通りだな」
「予定通りではございませんよ。こういうことはきちんと手順を踏んでください」
 ギルベルトは叫んでいた。
「で、その後は?」
「エックハルト様とリーゼロッテ様は公爵様と合流するために国境に向かわれました。館にはフランツ様とピー様が残られました」
「ちょっと待ってよ。ピーちゃんを館に残してきたの?」
 私は慌てて聞いた。ピーちゃんは食い意地が張っているから食料調達の心配をされて残されたんだろうか?

「ユリアーナ様。気にされるところはフランツ様ではなくてピー様ですか」
 ギルベルトが呆れて聞いてきたんだけど、
「だってフランツお兄様はいつでも逃げ足だけは早いじゃない。いざとなったらピーちゃんを置いて逃げ出すわよ」
「いや、ユリア、ピー助はどこでも生きていけると思うぞ」
「さようでございます。ピー様は小さいとは言え黄金竜の子供ではありませんか」
「何言っているよ。ピーちゃんはまだあんなに小さいのよ。帝国の四天王になぶり殺しにされたらどうするのよ!」
 私は食い意地が張っているピーちゃんが殺される未来しか見えなかった。
「絶対にないと思うが」
「四天王を餌にしてでも生き残ると思いますよ」
 お兄様もギルベルトも酷い言いようだ。

 私は心配だったから後で長に相談したら
「黄金竜様が四天王に殺される訳はなかろう」
 と相手にもしてくれなかったんだけど……私があまりにも心配するものだから
「本当にその方は余計な事を心配するの」
 仕方なさそうにピーちゃんがどうしているか画像で見せてくれた。
 遠見の術とか言う奴で中々珍しい術らしい。

 廃墟の中でピーちゃんはフランツお兄様に食べ物を持って来てもらって喜んでガツガツ食べていた。
 私はそれを見てあきれ果てた……心配して損した!
「だから言っただろうが」
「そんなの見せてもらうのならばもっと有益なもの見せてもらえば宜しいものを!」
 お兄様には馬鹿にされるし、ギルベルトには呆れられた。
 これも全部ピーちゃんのせいだ。
 会ったらお仕置きしてやるんだから!
 私は心に決めたのだ。

「ところでギルベルト、用があったのではないのか?」
「左様でございました。帝国の辺境の地に派遣されていた騎士達が総動員令を受けて続々と集まって来ております」
 そうか、帝国に派遣している騎士達を集めてくれているんだ。私はお父様の判断に感謝した。でも、そんなことして良いのか?
 どのみち私が奴隷を逃がして、皇帝に反逆したから、連座になって、やるしかないのですとニーナに聞いて、お父様や家族に悪いことをしたと思ってしまった。
「ふんっそんなのはお前を預かった時から覚悟していることだ!」
 と後でお父様に言われてしまったけれど……

「若様、お久しぶりでございますな」
「おお、これは爺か」
 食堂で食べていた騎士達が慌ててお兄様に跪いた。
 確かハンスという老騎士だった。昔館にいてよくお兄様の死の特訓に付き合ってくれたとても強い騎士だったと思う。
「元気にしていたか?」
「はい、帝国の辺境には強い魔物の巣が沢山ありましてな、爺は更に強くなりましたぞ」
「あれ以上強くなったんだ!」
 私もハンスは昔とても強い騎士だというイメージがあったから、あれ以上強くなったらどうなるんだろうと呆れていた。
「これは下の姫様。お久しぶりでございますな。おきれいになられて、若様が夢中なのがよくわかりますな」
「爺!」
 お兄様が笑ったハンスに文句を言ったが、そんなにきれいになったんだろうか? 私は赤くなっていた。
「ハンス様!」
 ギルベルトが注意していた。
「ああ、そうじゃった。ユリアーナ皇女殿下であらせられましたな」
「そのように改めなくても」
 私がかしこまる必要はないと首を振ったが、
「そう言うわけには参りますまい。何しろ姫様は今回の旗印ですからな」
 そう言うとハンスは改めて私の前に跪いてくれた。他の騎士達も従う。
「ユリアーナ皇女殿下、我らは、殿下のご両親をしい逆した悪逆非道のヴィクトールを討たれるあなた様の助太刀を致しまする。何卒許すとおっしゃって下さい」
 全員が私を見あげてきた。
 その眼光が鋭い。
「許します」
 私はそう言うしかなかった。

「ということでユリアーナ様を我がホフマン公爵家で一丸となって支えることになった。皆、心してかかるように」
 お兄様が私の横で皆を見渡した。
「宜しく頼むぞ!」
「「「はっ」」」
 全員が私に頭を下げてくれたのだった。
こうして、次々と公爵家の騎士が私の元に馳せ参じてくれて、予想以上に兵力は大きくなっていったのだった。

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