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16:二人乗り
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あの誓いの夜以来、ヴィンスからのスキンシップが増えた。
毎朝一緒に朝食をとるのは変わらない。けれどいつもはホールの前で待っていただけなのに、今は部屋まで迎えに来てくれる。
そして手を差し出し、完璧なエスコートをされてしまう。恥ずかしい反面、俺の事を大事にしてくれているのが伝わってきて嬉しい。だって、手を重ねるだけでヴィンスは至極嬉しそうに目元を緩めるんだ。
こんな事されて、ときめかない人はいるのだろうか?いるとしたら、その人はきっとロボットだ。
それだけじゃない。授業が終わった後必ずお茶に誘われるし、庭園の散策にも付き添ってくれる。
その度優しく腰を抱かれたり、肩を撫でられたり…然も全然わざとらしくなく、ごく自然に。手馴れてる様子に少しもやもやとするけれど、ヴィンスの笑みをみたらそんなものも何処かへ吹き飛んでしまう。
告白されて早々、俺はもう恋に落ちてしまっている。だけどそれを、まだ打ち明けられずにいた。
いや、ヴィンスはもう気づいているのかもしれない。俺が自身で伝えてくれるのを、静かに待ってくれているだけかも。
そう思ったら途端に申し訳なくて、落ち込む。ヴィンスの気持ちが不安なわけじゃない。大事にしてくれているのは十分に伝わっているし、これが揺るがない事くらい理解している。
俺を悩ませているのは、件の呪いの犯人だ。俺のせいでもしヴィンスが怪我をしたら、そう考えるだけで身体が震える。
犯人の狙いが分からない。侯爵家に恨みを持っている?それなら、俺よりザックを狙うはずだ。ザックはまだ幼いし、俺や父が溺愛しているのは社交界でも有名。
父を恨む者の犯行ならば、俺よりザックに危害を加えた方が早い。だけど、先日届いたアルフォンスからの手紙では、侯爵家は至極平和だという。
完璧に、俺だけを狙っている。だからアルフォンスも巻き込まれたんだろう…俺が、想いを寄せていたから。
「…シル、少し外に出ないか?」
思いがけない提案に、俺はゆるく首を傾げる。突然どうしたのだろうか…いや、凄く嬉しいけれど。
不思議に思いつつも了承すれば、ヴィンスは嬉しそうに双眸を細めた。その表情に、どうしようもなく胸が高鳴る。
俺はヴィンスに手を引かれるまま、ただただ歩みを進めていった。
「シル、怖くないか?」
「うん、平気。初めて乗ったけど、視線が高くなって面白いんだな」
「喜んでくれたなら、良かった」
ヴィンスは、遠乗りに誘ってくれた。ただそこで、問題が一つ。
俺は乗馬未経験者だった。というのも、小さい頃に目の前で人が落馬し怪我をするのを見てしまいトラウマになってしまったから。
侯爵は貴族の嗜みとして乗馬を習得させたかったみたいだが、俺はそれを即座に拒否。どうにか理由をつけ乗馬を断り続け、今に至る。ので、勿論馬の上に跨ることすら出来ないのだ。
それを正直に言ったら、ヴィンスは一言嬉しいと言った。意味が分からなくて何故だと問えば、
「だって、シルと2人乗りしたのは私が初めてと言う事だろう?」
そう、笑顔で言われてしまった。そんな反応に俺は言わずもがな照れてしまう。
そして、今に至る。ヴィンスと一緒に彼の愛馬に乗り、俺はしっかりとヴィンスに腰を抱かれている。
自然と俺の背と彼の上半身が密着するが、緊張より心地良さ勝ってしまった。
なので、普段は味わえない視界の高さを楽しめている。ヴィンスの側は、やっぱり落ち着く。
「…少しは、元気が出ただろうか」
「え?」
「最近、何か思い悩んでいただろう?時々表情が曇っていて、気になった。気が晴れるかと思って遠乗りに誘ったが、どうだった?」
彼の気遣いに、ぎゅっと心臓が掴まれたように苦しくなる。あぁ、俺やっぱりヴィンスの事が好きなんだ。
今直ぐ彼に縋りたい。己の不安を全部ぶち撒け、大丈夫だと慰めて欲しい。だけど、そんな情けない姿を晒したくないとも思ってしまう。
矛盾だらけだ、俺は。ヴィンスを求めたいのに、求めてはいけないと無意識に自制してしまう。
此方を心配そうに見つめる彼に、俺は精一杯の笑みを浮かべた。
毎朝一緒に朝食をとるのは変わらない。けれどいつもはホールの前で待っていただけなのに、今は部屋まで迎えに来てくれる。
そして手を差し出し、完璧なエスコートをされてしまう。恥ずかしい反面、俺の事を大事にしてくれているのが伝わってきて嬉しい。だって、手を重ねるだけでヴィンスは至極嬉しそうに目元を緩めるんだ。
こんな事されて、ときめかない人はいるのだろうか?いるとしたら、その人はきっとロボットだ。
それだけじゃない。授業が終わった後必ずお茶に誘われるし、庭園の散策にも付き添ってくれる。
その度優しく腰を抱かれたり、肩を撫でられたり…然も全然わざとらしくなく、ごく自然に。手馴れてる様子に少しもやもやとするけれど、ヴィンスの笑みをみたらそんなものも何処かへ吹き飛んでしまう。
告白されて早々、俺はもう恋に落ちてしまっている。だけどそれを、まだ打ち明けられずにいた。
いや、ヴィンスはもう気づいているのかもしれない。俺が自身で伝えてくれるのを、静かに待ってくれているだけかも。
そう思ったら途端に申し訳なくて、落ち込む。ヴィンスの気持ちが不安なわけじゃない。大事にしてくれているのは十分に伝わっているし、これが揺るがない事くらい理解している。
俺を悩ませているのは、件の呪いの犯人だ。俺のせいでもしヴィンスが怪我をしたら、そう考えるだけで身体が震える。
犯人の狙いが分からない。侯爵家に恨みを持っている?それなら、俺よりザックを狙うはずだ。ザックはまだ幼いし、俺や父が溺愛しているのは社交界でも有名。
父を恨む者の犯行ならば、俺よりザックに危害を加えた方が早い。だけど、先日届いたアルフォンスからの手紙では、侯爵家は至極平和だという。
完璧に、俺だけを狙っている。だからアルフォンスも巻き込まれたんだろう…俺が、想いを寄せていたから。
「…シル、少し外に出ないか?」
思いがけない提案に、俺はゆるく首を傾げる。突然どうしたのだろうか…いや、凄く嬉しいけれど。
不思議に思いつつも了承すれば、ヴィンスは嬉しそうに双眸を細めた。その表情に、どうしようもなく胸が高鳴る。
俺はヴィンスに手を引かれるまま、ただただ歩みを進めていった。
「シル、怖くないか?」
「うん、平気。初めて乗ったけど、視線が高くなって面白いんだな」
「喜んでくれたなら、良かった」
ヴィンスは、遠乗りに誘ってくれた。ただそこで、問題が一つ。
俺は乗馬未経験者だった。というのも、小さい頃に目の前で人が落馬し怪我をするのを見てしまいトラウマになってしまったから。
侯爵は貴族の嗜みとして乗馬を習得させたかったみたいだが、俺はそれを即座に拒否。どうにか理由をつけ乗馬を断り続け、今に至る。ので、勿論馬の上に跨ることすら出来ないのだ。
それを正直に言ったら、ヴィンスは一言嬉しいと言った。意味が分からなくて何故だと問えば、
「だって、シルと2人乗りしたのは私が初めてと言う事だろう?」
そう、笑顔で言われてしまった。そんな反応に俺は言わずもがな照れてしまう。
そして、今に至る。ヴィンスと一緒に彼の愛馬に乗り、俺はしっかりとヴィンスに腰を抱かれている。
自然と俺の背と彼の上半身が密着するが、緊張より心地良さ勝ってしまった。
なので、普段は味わえない視界の高さを楽しめている。ヴィンスの側は、やっぱり落ち着く。
「…少しは、元気が出ただろうか」
「え?」
「最近、何か思い悩んでいただろう?時々表情が曇っていて、気になった。気が晴れるかと思って遠乗りに誘ったが、どうだった?」
彼の気遣いに、ぎゅっと心臓が掴まれたように苦しくなる。あぁ、俺やっぱりヴィンスの事が好きなんだ。
今直ぐ彼に縋りたい。己の不安を全部ぶち撒け、大丈夫だと慰めて欲しい。だけど、そんな情けない姿を晒したくないとも思ってしまう。
矛盾だらけだ、俺は。ヴィンスを求めたいのに、求めてはいけないと無意識に自制してしまう。
此方を心配そうに見つめる彼に、俺は精一杯の笑みを浮かべた。
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