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22:もやもや
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「シル、すまない。急遽用事ができてしまった…この埋め合わせは、必ずする」
そう言って俺の前で頭を下げるヴィンス。彼と出掛けられないのは残念だが、急用ならば仕方ない。
というか今まで用事がなさ過ぎた。この国の王弟なのだから、それなりに公務があっても可笑しくないのに。
いや、もしかしたら陛下が勉学を優先しろと言ったのかもしれない。ヴィンス本人は王位を狙う気が無いみたいだし、自立の為に学ぶ事を重要視したのかも。
そんな事をぼんやりと考えていた所為か、ヴィンスが不安そうに俺の名を呼んだ。
「ごめん、考え事してた…全然いいよ、俺の事は気にしないで用事を済ませてきて」
「本当にすまない、明日授業の後話し合おう…シル?」
ひらひらと、手を振る心算だった。
浮かせた手は無意識にヴィンスの服の袖を掴む。え、と動揺した後直ぐに離した。
俺、今一体何を。引きとめようとしたのか?いいよとか言っておいて、本当は行かないで欲しいと縋り付きたかったのか。
自分自身が分からなくて戸惑う。それを誤魔化すように、先に部屋から出た。
「なんでもない。じゃあ、また明日」
「…あぁ。また、明日」
足早にその場を立ち去る。顔が熱くて仕方ない、今頃きっと真っ赤になってしまっている。
寂しい、だなんて。彼の傍に居る事が日常になってしまった。一日の中で、離れている時間の方が短いくらいだ。
彼の気配が直ぐそこにあると酷く落ち着く。
俺は明らかにヴィンスに依存している、そう思わざるを得なかった。本当に、本当にヴィンスの事が…。
「……すき、なんだ」
「何がですか?」
突然聞こえた声に思わずうおあ、と間抜けな声を上げる。
慌てて振り返れば、不思議そうに首を傾げているレイモンドがいた。そうだ、さっき部屋に戻ってきたばかりだったっけ。
ヴィンスの事を考えるの夢中で、レイモンドの存在を完全に忘れてしまっていた。
己を落ち着かせるようにふう、と息を吐き出す。誤魔化すべくゆるりと笑みを浮かべた。
「魔術が好きだなぁって思っただけ。知ってるだろ、それくらい」
「シル様は我が国きっての魔術馬鹿ですからねぇ」
カラカラと笑うレイモンド。どうやら、ちゃんと誤魔化せたようだ。
授業で使っていた教材を机に置き、窓を全開にする。今は少しだけ落ち着きたい。
ヴィンスの事を考えると逸る鼓動も、顔の熱も何もかも。一旦落ち着かせて、今後の身の振り方を考えないと。
アルフォンスから呪いについての進捗報告は定期的に来るけれど、いまいち進展はないみたいだ。
「…呪いは、追跡が難しいからなぁ」
窓の縁に腰掛け、ぼんやりと外を見つめる。
庭園に咲く花々は鮮やかで、花祭りの光景を思い出した。あれは、楽しかったなぁ。
視界の端に、見慣れた白銀がちらつく。驚いて視線を向ければ先程まで一緒にいたヴィンスが歩いていた。
用事、向かってるんだろうな。そう思っていた矢先、ヴィンスの向かい側から一人の女性が歩いて来る。
知り合いだったのか、ヴィンスが軽く会釈した。女性もドレスの裾を軽く持ち上げ、綺麗な礼をする。
その後その場にヴィンスが跪いて、女性の手の甲にキスをした。
男性が女性に対して行う、親愛の挨拶。
「……っ、」
胸が締め付けられる様に苦しい。二人は、何の知り合いなのだろうか。
胸の中にどろりとした黒い物が溢れ出てくる。
俺には、嫉妬する資格なんか無いのに。ヴィンスはこんなにも俺に好意を伝えてくれているのに、応えずに居続けているのは俺なのだから。
だから、例えヴィンスが誰かに乗り換えたって。俺には、引き止める資格なんか。
俺は勢いよく窓を閉め、二人が見えない様にカーテンで視界を塞いだ。
そう言って俺の前で頭を下げるヴィンス。彼と出掛けられないのは残念だが、急用ならば仕方ない。
というか今まで用事がなさ過ぎた。この国の王弟なのだから、それなりに公務があっても可笑しくないのに。
いや、もしかしたら陛下が勉学を優先しろと言ったのかもしれない。ヴィンス本人は王位を狙う気が無いみたいだし、自立の為に学ぶ事を重要視したのかも。
そんな事をぼんやりと考えていた所為か、ヴィンスが不安そうに俺の名を呼んだ。
「ごめん、考え事してた…全然いいよ、俺の事は気にしないで用事を済ませてきて」
「本当にすまない、明日授業の後話し合おう…シル?」
ひらひらと、手を振る心算だった。
浮かせた手は無意識にヴィンスの服の袖を掴む。え、と動揺した後直ぐに離した。
俺、今一体何を。引きとめようとしたのか?いいよとか言っておいて、本当は行かないで欲しいと縋り付きたかったのか。
自分自身が分からなくて戸惑う。それを誤魔化すように、先に部屋から出た。
「なんでもない。じゃあ、また明日」
「…あぁ。また、明日」
足早にその場を立ち去る。顔が熱くて仕方ない、今頃きっと真っ赤になってしまっている。
寂しい、だなんて。彼の傍に居る事が日常になってしまった。一日の中で、離れている時間の方が短いくらいだ。
彼の気配が直ぐそこにあると酷く落ち着く。
俺は明らかにヴィンスに依存している、そう思わざるを得なかった。本当に、本当にヴィンスの事が…。
「……すき、なんだ」
「何がですか?」
突然聞こえた声に思わずうおあ、と間抜けな声を上げる。
慌てて振り返れば、不思議そうに首を傾げているレイモンドがいた。そうだ、さっき部屋に戻ってきたばかりだったっけ。
ヴィンスの事を考えるの夢中で、レイモンドの存在を完全に忘れてしまっていた。
己を落ち着かせるようにふう、と息を吐き出す。誤魔化すべくゆるりと笑みを浮かべた。
「魔術が好きだなぁって思っただけ。知ってるだろ、それくらい」
「シル様は我が国きっての魔術馬鹿ですからねぇ」
カラカラと笑うレイモンド。どうやら、ちゃんと誤魔化せたようだ。
授業で使っていた教材を机に置き、窓を全開にする。今は少しだけ落ち着きたい。
ヴィンスの事を考えると逸る鼓動も、顔の熱も何もかも。一旦落ち着かせて、今後の身の振り方を考えないと。
アルフォンスから呪いについての進捗報告は定期的に来るけれど、いまいち進展はないみたいだ。
「…呪いは、追跡が難しいからなぁ」
窓の縁に腰掛け、ぼんやりと外を見つめる。
庭園に咲く花々は鮮やかで、花祭りの光景を思い出した。あれは、楽しかったなぁ。
視界の端に、見慣れた白銀がちらつく。驚いて視線を向ければ先程まで一緒にいたヴィンスが歩いていた。
用事、向かってるんだろうな。そう思っていた矢先、ヴィンスの向かい側から一人の女性が歩いて来る。
知り合いだったのか、ヴィンスが軽く会釈した。女性もドレスの裾を軽く持ち上げ、綺麗な礼をする。
その後その場にヴィンスが跪いて、女性の手の甲にキスをした。
男性が女性に対して行う、親愛の挨拶。
「……っ、」
胸が締め付けられる様に苦しい。二人は、何の知り合いなのだろうか。
胸の中にどろりとした黒い物が溢れ出てくる。
俺には、嫉妬する資格なんか無いのに。ヴィンスはこんなにも俺に好意を伝えてくれているのに、応えずに居続けているのは俺なのだから。
だから、例えヴィンスが誰かに乗り換えたって。俺には、引き止める資格なんか。
俺は勢いよく窓を閉め、二人が見えない様にカーテンで視界を塞いだ。
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