満月に囚われる。

柴傘

文字の大きさ
26 / 48

25:散りばめた意味

しおりを挟む
あれからあっという間に月日が流れ、舞踏会当日。

相変わらず俺の調子は上がったり下がったりだった。碌に動けない日もあれば、体力が有り余りすぎて夜寝付けなかったり。
寝れない夜は、バルコニーに出て月明かりを浴びると落ち着いた。昔から月は魔力の増幅に関係があると言われているので、そのせいかも知れない。

呪いは、術者の魔力と被術者の魔力が多大に関わってくる。

「~っ、レイモンド、それは苦しすぎる」
「わがまま言わない!これくらい締めないと、綺麗に着こなせませんよ!」
「っぐ、う、」

ぎゅう、レイモンドがコルセットの腰紐を勢いよく引っ張る。

別に太っているわけではないが、ヴィンスが誂えてくれた礼服が確りと身体のラインが出るデザインだったのだ。

なので、張り切ってしまった。そう、レイモンドが。
先日届けられた礼服を見た瞬間、レイモンドの目が爛々と輝いた。過去に何度か見た事がある、熱の籠った眼差し。
レイモンドは誰より何より、着飾るのが好きだった。そりゃあもう、俺に似合う化粧を何パターンも開発してしまうくらいには。

本人曰く、自分が生まれてきたのは俺を着飾る為らしい。意味がわからない。

だけどこうなってしまったレイモンドは、誰にも止める事のできない暴走列車だ。
やり過ごすには、好きにさせるしかない。まぁ、出来上がりは本当に素晴らしい物なので俺もやぶさかじゃないんだけど。

普段俺が着飾らない分、ここぞと言う時に暴れるレイモンド。もう、こういう物だと諦めている。

「さっ、シル様!取り敢えずお着替えは終わりました!次はお化粧して、髪をセットして…」
「…まだかかるの?」
「何を仰いますか!まだ、着ただけですよ!」
「ごめんなさい…」

ちょっと面倒になって弱音を吐き出すと、恐ろしい顔で怒られた。

思わず小さく震えながら謝れば、宜しいと一言言った後化粧の準備を再開する。
本当に今の表情は怖かった。俺、一生レイモンドに敵わない気がする。いや、もう二度と歯向かわない。

ふと、姿身に映る自分の姿を見る。きっちりと首元まで絞められた詰襟に、至る所に散りばめられた黄色い宝石。礼服の主色は、白だった。

部屋の照明に反射して、きらきらと煌いている。ふと、以前街にヴィンスと訪れた際初めて見た宝石が思い浮かぶ。
月のかけら。そうだ、この礼服に縫い付けられている宝石は、月のかけらにそっくりなんだ。

確かあの宝石はとても希少で、凄く高価だと聞いた。でもそんな、まさかね。

「シル様、ヴィンセント殿下と何かありました?この礼服、完全にヴィンセント殿下の色ですよね…髪飾りだって、」
「レイモンド、お願いだからそれ以上は言わないでくれ」
「おやおや」

そう、ヴィンスは礼服と同時に髪飾りも贈ってくれた。

シンプルなシルバーの土台に、満遍なく月のかけらが散りばめられていて凄く綺麗だ。
獣人族が髪飾りを贈るのは、その相手に想いを寄せている証拠だ。古い慣習ではあるものの、獣人族の間では当たり前の話らしい。

きっとヴィンスは、俺がその慣習を知らないと踏んでいる。知ってるから、困ってるんだけど。

「シル様、愛されてますねぇ」

ニヤニヤと揶揄うように笑うレイモンドに、俺は拳を落とした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました

キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。 けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。 そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。 なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」 それが、すべての始まりだった。 あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。 僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。 だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。 過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。 これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。 全8話。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

大嫌いなこの世界で

十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。 豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。 昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、 母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。 そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

処理中です...