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原作開始前
04:建国祭
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レオンハルト・ライラック、齢8歳。
第二王子はあれ以降、殿下とのお茶会について来なくなったものの、俺が婚約者として王宮を訪れる際には必ず姿を表し、小さな嫌がらせをして直ぐに隠れる。
余りにも幼稚すぎて、相手にしてられない。
俺が殿下に言いつけないでいるのを何か勘違いしてるのか、すれ違い様に侮辱されるのも増えた。
この間なんて、「どうせ直ぐ飽きられるさ」ってわざわざ耳元で囁かれたんだ。
うるせぇぶっ飛ばすぞ…って意味を込めて笑みを向けたらちょっと怯えていたのはいい気味だな…その内殿下に纏めて報告しよう。
そんなお子ちゃまの話はどうでも良くて…俺と殿下は今、市井に遊びにきている。
勿論周りには私服の護衛騎士が10人以上待機してるし、父上の最強防御魔法が幾重にも重ね掛けされている…大袈裟な。
兄様は兄様で、婚約者候補殿とデート中だ。
そう、デートだ。
俺と殿下は今、年に一度行われる建国祭を見て回っているのだ。
弱冠俺のテンションが高い気がするが、殿下はにこにこと優しげな笑みを浮かべている。
思わずにへら、と緩んだ笑みを向けてしまうのも仕方ないだろう…だって、楽しいんだ。
がやがやと騒めく街、色とりどりのお菓子や料理…何より殿下の珍しい平民服姿!
こんなレアな格好、もう二度と見れないかもしれないんだぞ…そりゃあ興奮もするさ。
何を着ても滲み出てしまう高貴なオーラ…うーん、美しい。俺の旦那様は完成されすぎてるな。
そんな事考えながら歩いていても、人には一切ぶつからない。
俺の腰を片腕で抱く、殿下の完璧なエスコートのおかげだ。やっぱ俺の旦那様は最高だぁ…。
もう、建国祭へ参加するのは難しいだろう。それ程、俺たちの身分は高く危険が多い。
だから、せめて今日だけでも2人で楽しめるように…思い出を作りたくて。
実は今回、俺がわがままを言い張ったのだ。
近頃殿下は忙しそうで、公爵邸への訪問も週に一回に減ってしまっていた。
俺が寂しいのも、理由の一つだ。
「…レオ、あっちにも行ってみて良いかな?」
「はい、もちろんです!今日は好きな所に好きなだけ行きましょうね」
いつも俺の事優先な殿下が、珍しく自分の行きたい場所を強請ってきた。
それが本当に嬉しい、信用してもらってる証拠だろう。
だから俺は、満面の笑みで返すんだ。
この小さい背中から、今だけでも重たい責任が降りてくれますように。
殿下が行きたがってたのは、祭りの時期限定で開かれているアクセサリーの露店。
こんなとこで安物買わなくても良いのに…そう思った矢先、少し怪しげな雰囲気を漂わせる髭をたっぷり蓄えた店主が口を開いた。
「…ふむう、お主厄介な運命にあるようじゃのう」
…は?
店主の何処か楽しそうな台詞に、全身がぞわりと粟立った。
あまりにも、的確すぎたから。
「店主、私の婚約者の運命が何だって?場合によっては不敬罪で…」
「ふぉっふぉ、お貴族様じゃったか…なに、運命と言っても、今の時点では不確定なものじゃ。お主の行動次第で様々な活路が見出せるじゃろ」
声が、出なかった。
店主自体は怪しいが、先の未来の漠然とした不安を、否定されているような気がして。
小さな安堵が、確実に生まれた。
黙った俺を心配そうに見つめる殿下
彼を安心させるべく、俺は柔らかな笑みを浮かべた。
「熱いのう…お二人さんに幸多からんことを」
そう言った後、俺たちが少し目を話した隙に…その店は忽然と消えていた。
確かに目の前にあったのに、もうそこには何もない。
2人して首を傾げた後、思わず小さく笑い合った。
第二王子はあれ以降、殿下とのお茶会について来なくなったものの、俺が婚約者として王宮を訪れる際には必ず姿を表し、小さな嫌がらせをして直ぐに隠れる。
余りにも幼稚すぎて、相手にしてられない。
俺が殿下に言いつけないでいるのを何か勘違いしてるのか、すれ違い様に侮辱されるのも増えた。
この間なんて、「どうせ直ぐ飽きられるさ」ってわざわざ耳元で囁かれたんだ。
うるせぇぶっ飛ばすぞ…って意味を込めて笑みを向けたらちょっと怯えていたのはいい気味だな…その内殿下に纏めて報告しよう。
そんなお子ちゃまの話はどうでも良くて…俺と殿下は今、市井に遊びにきている。
勿論周りには私服の護衛騎士が10人以上待機してるし、父上の最強防御魔法が幾重にも重ね掛けされている…大袈裟な。
兄様は兄様で、婚約者候補殿とデート中だ。
そう、デートだ。
俺と殿下は今、年に一度行われる建国祭を見て回っているのだ。
弱冠俺のテンションが高い気がするが、殿下はにこにこと優しげな笑みを浮かべている。
思わずにへら、と緩んだ笑みを向けてしまうのも仕方ないだろう…だって、楽しいんだ。
がやがやと騒めく街、色とりどりのお菓子や料理…何より殿下の珍しい平民服姿!
こんなレアな格好、もう二度と見れないかもしれないんだぞ…そりゃあ興奮もするさ。
何を着ても滲み出てしまう高貴なオーラ…うーん、美しい。俺の旦那様は完成されすぎてるな。
そんな事考えながら歩いていても、人には一切ぶつからない。
俺の腰を片腕で抱く、殿下の完璧なエスコートのおかげだ。やっぱ俺の旦那様は最高だぁ…。
もう、建国祭へ参加するのは難しいだろう。それ程、俺たちの身分は高く危険が多い。
だから、せめて今日だけでも2人で楽しめるように…思い出を作りたくて。
実は今回、俺がわがままを言い張ったのだ。
近頃殿下は忙しそうで、公爵邸への訪問も週に一回に減ってしまっていた。
俺が寂しいのも、理由の一つだ。
「…レオ、あっちにも行ってみて良いかな?」
「はい、もちろんです!今日は好きな所に好きなだけ行きましょうね」
いつも俺の事優先な殿下が、珍しく自分の行きたい場所を強請ってきた。
それが本当に嬉しい、信用してもらってる証拠だろう。
だから俺は、満面の笑みで返すんだ。
この小さい背中から、今だけでも重たい責任が降りてくれますように。
殿下が行きたがってたのは、祭りの時期限定で開かれているアクセサリーの露店。
こんなとこで安物買わなくても良いのに…そう思った矢先、少し怪しげな雰囲気を漂わせる髭をたっぷり蓄えた店主が口を開いた。
「…ふむう、お主厄介な運命にあるようじゃのう」
…は?
店主の何処か楽しそうな台詞に、全身がぞわりと粟立った。
あまりにも、的確すぎたから。
「店主、私の婚約者の運命が何だって?場合によっては不敬罪で…」
「ふぉっふぉ、お貴族様じゃったか…なに、運命と言っても、今の時点では不確定なものじゃ。お主の行動次第で様々な活路が見出せるじゃろ」
声が、出なかった。
店主自体は怪しいが、先の未来の漠然とした不安を、否定されているような気がして。
小さな安堵が、確実に生まれた。
黙った俺を心配そうに見つめる殿下
彼を安心させるべく、俺は柔らかな笑みを浮かべた。
「熱いのう…お二人さんに幸多からんことを」
そう言った後、俺たちが少し目を話した隙に…その店は忽然と消えていた。
確かに目の前にあったのに、もうそこには何もない。
2人して首を傾げた後、思わず小さく笑い合った。
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