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りすわん

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プロローグ――少女兵と、雨に濡れた廃墟

Ep.2『白の魔王』

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 それが、目に入った景色の最初の印象だった。

 眩しい。

 視界に広がるのは――
 青々とした芝生。
 白亜の建物。
 かしずく鉄鎧の騎士たち。

(……お城?)

 少女兵の意識は、この景色をそう認識した。
 宙に浮いたように俯瞰している視点。
 体を動かそうとして、自分の体の感覚がないことに気づく。
 少女の肉体はここには存在せず、ただ視界だけが景色を映していた。

(夢……なのかな。お城に、騎士……こんな明るい場所、見たことない。
 それにあれば……白い、女の子?)

 白のワンピース・ドレスに身を包んだ、真っ白な髪。白の世界に、白い少女。その中で瞳だけが妖しく真紅の光を宿していた。
 鎧を着込んだ騎士たちは、一様にその白の少女を敬うようにひざまずき頭を下げる。

(私は、いったいどうなって……)

 あれだけの攻撃を受けて、生きているとは思えない。だとしたら、ここは死後の世界なのだろうか……

 そうして思考を巡らせ始めたとき、視界の中にいる白いドレスを着た紅眼の少女が、ふいに――こちらへと振り向いた。

(……ッ!)

 白い少女と視線が交わり、驚きで一瞬思考が止まる。
 彼女は妖しい微笑みを浮かべ、その可憐な唇を開いた。

「見つけた」

 空間の中に、白い羽根が無数に舞い上がり、視界いっぱいに覆った。
 同時に少女兵の意識が、ふたたびフェードアウトしていく――。



「――えっ?」

 気づいたら、少女兵は暗闇の中で仰向けになっていた。
 いや、実際には上も下もわからないため、うつ伏せかもしれないし、立っているのかもしれない。
 夜空のように闇の中を星屑ほしくずが漂う。そのただ中に少女は浮かんでいた。
 肉体はあったが、動くことは叶わなかった。
 両手は真横に伸ばされ、両足は揃えられた状態のまま。血のように真っ赤ないばらによってがんじがらめにされ、少女兵の体は従事を描く形で固定されていた。

「くっ」

 動こうとするほどその華奢な身体に茨の棘が食い込む。

 コツ。コツ。

 星空の海の中を、近づいてくる靴音がひとつ。少女兵は目線だけを音の方へと向けた。
 白いドレスをまとった姿が目に入った。先ほど見た白の少女だった。

「はじめまして。会いたかったわ」

 長い髪を揺らしながら、白の少女が口を開いた。その声は鈴の音のように可愛らしく、それでいて妖艶な雰囲気を醸し出していた。

「だれ……? 私は、どうなって――」

 少女兵の小さな胸に左手、唇に右手の人差し指を添えて、白い少女は言葉を遮った。

「儚いのね……なんて小さな影力……並の戦士にも満たない」
「いったい、何を言って……んんッ!」

 白い少女は少し寂しそうな表情を見せたあと――そっと顔を近づけて、自らの唇を少女兵のそれに重ねた。
 突然の接吻に思考がまとまらない。ずっと軍の施設で厳しく育てられ、なおかつその施設でも他の子とあまり馴染めなかった少女兵は――当然、他人とキスをした経験など今までに一度もなかった。

「……ん、ぅ……ぁ……」

 陶器のようになめらかな手が、少女兵のほっそりとしたウエストをなぞり、もう片方の手で後ろ髪を優しく撫でる。
 その手に軽く触れられるだけで、少女兵の身体は不思議なほど敏感に反応し、顔が熱くなって、おなかの奥がうずいた。

「ぁ――ふぁ……ん、ぷはっ……ハァ……ハァ……。
 ど、どうしてこんなこと……」
「ねぇ、あなたのこと……みんなみたいに『キューナナ』って呼んでもいい?」
「なぜそれを――んッ!!」

 白い少女はもう一度キスで唇を塞ぐと、少女兵の腹部を、黒いインナーの中央にわずかにくぼみを作ったおへその辺りを指でつまんで、おなかがちぎれそうなほど強く捻った。

「ンッ! んぁ……ぅ、ぐ、んむ――」

 白い少女の力は予想以上に強く、少女兵――キューナナと呼ばれた少女は激痛で喘ぎ、悶えた。
 キューナナというのは少年兵訓練施設にいたころに呼ばれていた名前。九七番という識別番号を由来につけられた呼び名だ。それをどうして、初対面のはずの彼女が知っているのだろう。

「んぐぅぅッ!! あう……んぅ……く……!」

 考えを巡らそうとしても、そのたびに白い少女の指が万力のような圧力でおなかをつねり、舌が喉まで届きそうなほど奥に侵入してキューナナの口の中を荒らしまわる。

 ん。ちゅ。――ぺちゃ。ちゅっ。……っ、こくん。

 白い少女の濃厚なディープキスに、呼吸すらできずにされるがままのキューナナ。
 唇を甘噛し、舌を好き勝手もてあそばれ、唾液を吸われては、逆に流し込まれる。それはまるで媚薬のようで、少女と体液を交換するたびに体中が火照って、敏感になっていく。

「~~~~ッ!!!」

 白い少女はキスで唇を塞いだまま、キューナナのおへその周りの皮を、ちぎり取らんばかりの乱暴さでねじりながら引っ張り上げた。
 腹を視点に身体がのけぞり、おしりが浮き上がってしまい、下腹部や胸を強調するような体勢になる。
 日頃から鍛えられ、かつ細身のキューナナのおなかには無駄な肉はほとんどなく、それゆえにつねられるさいに痛点が集中し、強い痛みを感じていた。
 白の少女はおなかをつねっている方とは逆の手で、キューナナの肢体を――華奢な腰を、あばらを、隠すことのできない腋を、儚げな首と鎖骨を、なめらかな黒髪を、柔らかな下腹部を、閉じられた内ももを――くすぐるような優しい手つきで、ゆっくりと撫でる。

「ぷはっ……ぜはぁ……はぁ……は、ん……イヤ、あ……やめ、て……くだ、さ……」
「本当に……? やめてほしいの……? そんなこと言って、ちょっと触れただけでトロトロだわ」
「い、や……ぁ……」

 かぷり。とキューナナの耳を唇で挟んで加える。
 ただそれだけのことで、キューナナの体は電撃を浴びたようにビクンとのけぞった。

「フフ。キューナナ……かわいい」
「はぁ……んく……はぁ……はぁ……」
「その邪魔な服も、脱がしてあげる」
「やぁ……」

 いやいやと首をふるキューナナに柔らかくほほえみながら、白い少女はジャケットの留め具に手をかけて、丁寧に外していく。
 口では否定するものの抵抗するすべのないキューナナは、ただ顔をそむけて震えていた。

「今ね。わたしはあなたの意識の中に、じかにお邪魔させてもらっているの」
「……え?」

 上目遣いで、不安げに白の少女を見上げる。

「これは、意識の深層にある世界。夢のようなもの」

 白い少女は、歌うように語りかける。
 ジャケットを脱がし、インナーをめくり上げておなかを露出させる。なめらかな肌。薄っすらと描かれた腹筋の縦線。おへその周囲には痛々しく痣ができていた。
 細く引き締まっているが、触ると柔らかくてなめらかで、心地よい。

「ねぇキューナナ。……寝ているときに、エッチな悪戯されたことはある?」

 白い少女は、インナーの内側へと手を潜り込ませる。
 膨らみかけの小さく敏感な胸の周りを、まるで陶芸をするようなタッチで愛撫をする。

「あ、あァ……んん!」
「寝ているときにエッチなことされるとね……理性と肉体のストッパーが効かなくて、すごく気持ちよくなれるの。
 夢の中では、心が許す限り、どこまでも快楽を感じることができる」
「や、なに、これ……あぁぁぁッ」

(なにか……くる……いや、だ……やめ――て)

 白い少女は指で鼠径部をなぞるようにしてキューナナのショートパンツを降ろし、その下のレギンスも膝の辺りまでめくる。
 飾り気のないぴっちりとした下着がさらけ出される。
 その上から、少女の手がキューナナの秘部に触れて――

「――――ッッ!!」

 キューナナは、声にならない絶叫を上げた。股間の割れ目から溢れ出た愛液が下着を濡らし、白い少女の指がぴちゃぴちゃと水音を立てる。

「あら。もうイっちゃったのかしら? とってもうぶで、感じやすくて……かわいいわ」
「はぁ……はぁ……な、にが……はぁ……くっ、ん……。起き、て……」
「まだ、そういうことも知らないのね……。
 使命のため、自分を犠牲にして、ただただまっすぐに生きて……本当に、あの子にそっくり。
 あのね。わたし、あなたの敏感なとこ、きもちよく感じるとこ、弱いとこ……キューナナのことはぜんぶ知っているの」

 微笑みを浮かべて告げられた少女の熱を帯びた言葉に、キューナナの背筋は凍りついた。

(な、なんなの……? この子、なんでそこまで私のこと……)

「わたしが何者なのか、知りたいのね」

 絶頂の余韻。それに、自分のすべてを見透かされているような得体の知れない恐怖で、何も答えることができなかった。
 白い少女が手のひらをかざすと、そこに鋭いつららのような形状の氷塊が出現する。

「身体が熱くてたまらないでしょう。冷やしてあげる」

 少女はつららを握りしめ、あらわになったキューナナのへそに力任せに突き刺した。

 ボズゥゥッ!!
 ぐり――グチュ――。

「あぁぁぁ! が、カハ……えあ“……はぐっ! ア、ア”……」

 へそに刺した氷をぐりぐりを動かし、腹の中をかき混ぜていく。
 冷たく硬い異物が体の中をすりつぶしていく感覚。夢の世界――意識の奥底で増幅された痛みと悪心に、キューナナのすべて・・・が支配されていく。

「素敵だわ。どんなふうに虐めても、可愛くて愛おしい表情を見せてくれる……心地よい声を聴かせてくれる……」

 少女は厳かな表情で、まるで琴を奏でるように、あるいはケーキの生地を泡立てるように……キューナナのおなかを念入りにこね回す。
 少女の手が踊るたびに、キューナナの身体はびくびくと痙攣して、苦悶の声が絞り出された。

「痛くして、苦しくして……それじゃあ次は、気持ちよくしてあげなくちゃね」

 へそに刺した氷でキューナナの腹の中をかき混ぜながら、空いた手でびしょびしょに濡れた秘部にふれる。
 カチカチに固くなった小さな陰核を、少女の美しい指がショーツ越しにトントンとノックし、周囲をくるくるとなぞり、軽くつまみ、指で弾くように撫でてもてあそぶ。
 いかなる魔法か――あるいは呪いか。少女の指が触れるたび、人の身では本来感じることができないほどの圧倒的な快楽が、戦いと訓練だけの毎日を生きてきたうぶな少女に雪崩のように押し寄せてくる。

「ア……アァ……ッ……」

 少女の魔性の指がもたらす、ありえないほどの快楽。
 冷たい氷の棘の責めによる、地獄のような苦痛。
 肉体的な死の訪れない精神のみの世界で、少女兵の心はついに果てようとしていた。

「さすがのあなたも、そろそろ限界? ……みたいね」
「……っ、――」
「じゃあ、そろそろ目覚めるといいわ。
 ……とは言っても、またすぐに殺されちゃいそうだけど」

 白の少女はキューナナを責めるのを止め、その黒髪を優しく撫でて微笑んだ。
 いつの間にか、おなかの傷は綺麗にふさがっている。だが痛みだけはいつまでも残り、収まる様子がなかった。

「とっても楽しかったわ。……この千年の中で、一番幸せな時間だった」
「……」

 キューナナの――少女兵の意識が、星空に溶けるように消えていく――

「わたしは魔王――『白の魔王』
 かつてあなたたちに、そう呼ばれていた」


 …………
 ……
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