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再会
宝物
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「じゃあ、もう1つ。
この州……ホペ州に、心残りはないか?」
「心…残り…?」
「ここの州長、波花さんの……いや。
ゆのかのじいさんか、ばあさんだろ?」
そう──ゆのかの祖母は、この州で最も偉いとされる州長。
ゆのかは、そんな人から逃げてきた。
「ちなみにどっち?」
「…おばあ様。
おじい…ちゃんは……もう…亡く…なってて…」
悲しい内容だったこともあり、ゆのかは少しだけ、俯いた。
あいると星が、アイコンタクトを交わし、ハンドサインを送り合う。
ハンドサインとは、職業柄、必要なもので、言うならば、エール号の船員だけが通じる手話のようなものだ。
(星…おじいちゃんに、おばあ様だとよ。やっぱ、クソババア…)
(ま…大体、想像ついていたけど。)
(じーさんが死んだってことは…クソババアのやりたい放題じゃねぇか!!
まさか、波花さんの時と、同じことしていたんじゃ……)
(いや…女子船員が服を取り替える時に、体を見たらしいが、目立った外傷はなかったらしい。
何にせよ、話を聞くしかねぇな。)
2人は、ハンドサインをやめた。
「はっきり言って…ホペ州はアクセスが悪くて、逃げ道も少ない。
しかも、州長の孫となれば…連れ戻すためなら、手段を選ばないかもしれねぇだろ?
州民も使うことだってできるし…力があるなら、他の州から応援を呼ぶことだってできる。」
「………。」
州民というのは、州に住む人のこと。そして、ホペ州長であるゆのかの祖母は、恐怖で州民を操ろうとしている。
ゆのかは、星の言ったことに心当たりがあり、小さく頷いた。
「いろいろ考えて……もし、ここに戻ってこれるとしたら、最低でも5年はかかる。
心残りや忘れ物があったら、嫌だろ。」
星に言われて、ゆのかは思い出す。
(心残り…か……)
幼馴染達には、手紙を送った。彼らには、手紙以上のことを言うつもりはない。それに、無闇に会いに行って、ゆのかの家の人に見つかりでもしたら、彼らや彼らの家族が酷い目に遭うだろう。
実は…ゆのかには、幼馴染以外のことで、心残りが1つだけあった。
ゆのかにとって、かけがえのない宝物が、家で厳重に保管されている。保管と言えば、聞こえはいいが…要は、ゆのかが家から逃げないよう、宝物を人質にされている。それもあって、家出をしようかどうか、ゆのかは直前まで迷っていた。
それでもゆのかは、家から逃げた。宝物を捨てる覚悟の上で。
「あ…ありません。」
捨てるつもりだった宝物のことで、2人に気を使って欲しくない。
ゆのかは首を横に振って、必死に嘘を告げた。
だが星は、はぁ…と溜め息を吐いて、少しだけ不貞腐れた。
「え…?」
「分かりやすい嘘、吐くんじゃねーよ。
言ってみろ。なにが心残りなんだ?」
どうやら星に、嘘を吐いていたことが、しっかりバレていたようだった。
それでも、しらを切り通そうかと、迷ったが…星が、不機嫌な顔をしているので、ゆのかは観念して口を開いた。
「ギター……です…」
「ギター?…もしかして、奏多さんの?」
ゆのかは、首を縦に振った。
ギターとは…祖父母に引き取られる時、父の形見として持ってきた、父のギターのことだ。
家族を失ったゆのかにとって、唯一、家族と繋がっていられる大切な物。
だが、それを捨てるつもりで、家に置いてきた。そうまでしても、ゆのかは家から逃げたかったのだ。
「じゃ、取ってくるか。
で、その後、すぐ出航で。」
「だなっ!
ゆのかっ、ギターは家か?」
「……?!」
取ってくる。そんな危険なこと、ゆのかは、考えたこともなかった。
「あ…あのっ、大丈夫…だから………
だって……もともと…置いて、いく…予定、だった………私が…家、から…逃げ…ない……ように……厳重に…警備、されてる………取り戻す…なんて…絶対、無理…
…………それに」
おばあ様と“あの人”がもう、帰ってきているかもしれない。
(そこから先は、言っちゃ駄目…!
言ったら……“あの事”も、言っちゃうかもしれない………それだけは、駄目!!)
ゆのかは、何かを隠すように、慌てて口を押さえた。呼吸が乱れ、瞳が怯えている。
「それに…の後は?」
「っ……!!」
「それ言わねぇと、出航できない。」
「そん…な……」
見たこともないゆのかの様子に…星は譲らなかった。
ゆのかが俯く。すると…あいるは、ゆのかの頭をポンと撫でた。
「ゆのか。あたし達は…今まで会えなかった分、ゆのかの力になりたい。
話してくれないか?今まで、何があったのか…アンタが、何を怖がっているのか……頼む。」
“助けたい”
遠い昔にも言われたあたたかい言葉が、ゆのかの心にジワリと染み込んでいく。
(何も知らないあいるさん達は……無条件に、私に優しくしてくれる………
でも…もし…2人が……本当の私を…知ったら……?)
きっと嫌われ、もう抱きしめてくれないかもしれない。今みたいな温かい言葉も、かけてくれないかもしれない。大好きな笑顔も見れなくなるかもしれない。
(でも…きっと、今の2人を説得するには……“あの人”の話を、しなきゃいけないんだ………
この話をして、2人が、ギターを諦めてくれるなら………2人を…“あの人”に、会わせる可能性が…少しでも、潰せるなら……)
ゴクン、と唾を飲み込む。ゆのかは、話すことを決めた。
「………航ちゃん…いるかもしれない…から…」
「航ちゃん?」
「誰だ?」
大きな深呼吸をすると…ゆのかは、これまでのことを話し始めた。
この州……ホペ州に、心残りはないか?」
「心…残り…?」
「ここの州長、波花さんの……いや。
ゆのかのじいさんか、ばあさんだろ?」
そう──ゆのかの祖母は、この州で最も偉いとされる州長。
ゆのかは、そんな人から逃げてきた。
「ちなみにどっち?」
「…おばあ様。
おじい…ちゃんは……もう…亡く…なってて…」
悲しい内容だったこともあり、ゆのかは少しだけ、俯いた。
あいると星が、アイコンタクトを交わし、ハンドサインを送り合う。
ハンドサインとは、職業柄、必要なもので、言うならば、エール号の船員だけが通じる手話のようなものだ。
(星…おじいちゃんに、おばあ様だとよ。やっぱ、クソババア…)
(ま…大体、想像ついていたけど。)
(じーさんが死んだってことは…クソババアのやりたい放題じゃねぇか!!
まさか、波花さんの時と、同じことしていたんじゃ……)
(いや…女子船員が服を取り替える時に、体を見たらしいが、目立った外傷はなかったらしい。
何にせよ、話を聞くしかねぇな。)
2人は、ハンドサインをやめた。
「はっきり言って…ホペ州はアクセスが悪くて、逃げ道も少ない。
しかも、州長の孫となれば…連れ戻すためなら、手段を選ばないかもしれねぇだろ?
州民も使うことだってできるし…力があるなら、他の州から応援を呼ぶことだってできる。」
「………。」
州民というのは、州に住む人のこと。そして、ホペ州長であるゆのかの祖母は、恐怖で州民を操ろうとしている。
ゆのかは、星の言ったことに心当たりがあり、小さく頷いた。
「いろいろ考えて……もし、ここに戻ってこれるとしたら、最低でも5年はかかる。
心残りや忘れ物があったら、嫌だろ。」
星に言われて、ゆのかは思い出す。
(心残り…か……)
幼馴染達には、手紙を送った。彼らには、手紙以上のことを言うつもりはない。それに、無闇に会いに行って、ゆのかの家の人に見つかりでもしたら、彼らや彼らの家族が酷い目に遭うだろう。
実は…ゆのかには、幼馴染以外のことで、心残りが1つだけあった。
ゆのかにとって、かけがえのない宝物が、家で厳重に保管されている。保管と言えば、聞こえはいいが…要は、ゆのかが家から逃げないよう、宝物を人質にされている。それもあって、家出をしようかどうか、ゆのかは直前まで迷っていた。
それでもゆのかは、家から逃げた。宝物を捨てる覚悟の上で。
「あ…ありません。」
捨てるつもりだった宝物のことで、2人に気を使って欲しくない。
ゆのかは首を横に振って、必死に嘘を告げた。
だが星は、はぁ…と溜め息を吐いて、少しだけ不貞腐れた。
「え…?」
「分かりやすい嘘、吐くんじゃねーよ。
言ってみろ。なにが心残りなんだ?」
どうやら星に、嘘を吐いていたことが、しっかりバレていたようだった。
それでも、しらを切り通そうかと、迷ったが…星が、不機嫌な顔をしているので、ゆのかは観念して口を開いた。
「ギター……です…」
「ギター?…もしかして、奏多さんの?」
ゆのかは、首を縦に振った。
ギターとは…祖父母に引き取られる時、父の形見として持ってきた、父のギターのことだ。
家族を失ったゆのかにとって、唯一、家族と繋がっていられる大切な物。
だが、それを捨てるつもりで、家に置いてきた。そうまでしても、ゆのかは家から逃げたかったのだ。
「じゃ、取ってくるか。
で、その後、すぐ出航で。」
「だなっ!
ゆのかっ、ギターは家か?」
「……?!」
取ってくる。そんな危険なこと、ゆのかは、考えたこともなかった。
「あ…あのっ、大丈夫…だから………
だって……もともと…置いて、いく…予定、だった………私が…家、から…逃げ…ない……ように……厳重に…警備、されてる………取り戻す…なんて…絶対、無理…
…………それに」
おばあ様と“あの人”がもう、帰ってきているかもしれない。
(そこから先は、言っちゃ駄目…!
言ったら……“あの事”も、言っちゃうかもしれない………それだけは、駄目!!)
ゆのかは、何かを隠すように、慌てて口を押さえた。呼吸が乱れ、瞳が怯えている。
「それに…の後は?」
「っ……!!」
「それ言わねぇと、出航できない。」
「そん…な……」
見たこともないゆのかの様子に…星は譲らなかった。
ゆのかが俯く。すると…あいるは、ゆのかの頭をポンと撫でた。
「ゆのか。あたし達は…今まで会えなかった分、ゆのかの力になりたい。
話してくれないか?今まで、何があったのか…アンタが、何を怖がっているのか……頼む。」
“助けたい”
遠い昔にも言われたあたたかい言葉が、ゆのかの心にジワリと染み込んでいく。
(何も知らないあいるさん達は……無条件に、私に優しくしてくれる………
でも…もし…2人が……本当の私を…知ったら……?)
きっと嫌われ、もう抱きしめてくれないかもしれない。今みたいな温かい言葉も、かけてくれないかもしれない。大好きな笑顔も見れなくなるかもしれない。
(でも…きっと、今の2人を説得するには……“あの人”の話を、しなきゃいけないんだ………
この話をして、2人が、ギターを諦めてくれるなら………2人を…“あの人”に、会わせる可能性が…少しでも、潰せるなら……)
ゴクン、と唾を飲み込む。ゆのかは、話すことを決めた。
「………航ちゃん…いるかもしれない…から…」
「航ちゃん?」
「誰だ?」
大きな深呼吸をすると…ゆのかは、これまでのことを話し始めた。
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