夢の音を奏でます!〜第1話 始まりの唄〜

水澄 涼海

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再会

いつもの公園で

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◇◇◇

 ゆのかは、いつもの公園で、幼馴染達とお喋りしていた。
 ジャングルジムの頂上に登ると海が見える公園は、ゆのか達が出会った場所で…ゆのかのお気に入りだった。

「……もう、2年か。」

 鉄棒に座っていた大和やまとが、ぼそりと呟く。
 ゆのかや、他の幼馴染は、何のことかすぐに分かった。

「なんとか卒業式に間に合って欲しいけど…厳しそうだな。」
「早いよねぇ………」

 鉄棒に寄りかかる“よしくん”こと良也よしやと、ブランコに座る“みぃちゃん”こと水湖みこも、寂しそうな顔をした。
 航の母が殺されたあの日から、2年が経った。
 航は……まだ、見つかっていない。

(航ちゃん……)

 ゆのかは、航と出会ったあの日のことを、鮮明に思い出していた。
 航は、ゆのかをこの公園に連れてきてくれた。そこで出会った3人───大和と良也と水湖とは、今でも仲が良い。
 楽しい時は一緒に笑い合い、困っている時は助けてくれる。ゆのかにとって、航と同じくらい大好きな人達だ。

 それでも……ゆのかの胸には大きな穴が、ぽっかり空いたままだった。それだけ、航と過ごした1年は、大切でかけがえのない時間だった。

(私が…大人だったら……航ちゃんを捜し出すことが、できたのかな……)

 なんて、切ない思いをしたこともあったが…まだ子どもだったゆのかは、航を待つことしかできなかった。
 時の流れの早さは残酷で、もうすぐゆのか達の小学校の卒業式。来月から、ゆのか達は中学生だ。
 短いような、長いような……ゆのかは、時間の感覚がよく分からなかった。

「航くん…生きてる…よね……?」

 水湖が、悲しそうに呟く。

(生きていて欲しい…)

 ゆのかは、ブランコの鎖を、ギュッと握りしめた。

(でも…大事な人は、いつも私のもとから、いなくなる………
 いつも…いつも、そうだった…)

 気持ちが沈むゆのかとは対照的に、大和はケラケラ笑っている。

「当たり前だろ!
 みぃ…オマエ、いくら航が好きだからって、心配しすぎだって!」
「う、うるさいっ!!!」

 水湖は、顔を真っ赤にして、頬をぷくー!と膨らませている。水湖の身長は小さくて、怒ったところで、小動物のようだった。
 ゆのかは思わず、クスッと笑った。

(可愛い…リスみたい。)

 頬を赤くした水湖は、これ以上言わせまい!と、鉄棒に座った大和の足を、手加減しながら揺らした。

「うぉっ?!!」

 すると、大和はバランスを崩して、体が頭の後ろの方へ倒れてしまった。

「…!」
「えっ…?」
「大和?!」

 想定外のことに、良也とゆのかと水湖は、瞬時に動けなかった。
 …が、大和は座った状態のまま、鉄棒で一回転し…気づいた時には元の位置に戻っていた。

「へへっ。ビビったか?!」

 ゆのか達3人が呆然としている中、大和は1人、可愛いイタズラをした後のように笑っていた。

「……っ、あんたねぇ!!!」
「みぃ、あぶねぇぞ~?突然押すなよ~」
「あんたがっ…変なこと言うからでしょ?!!」
「ぎゃっ!
 おい!!本気で押すなよ!!!」

 その様子を見た良也は、溜め息をいた。

「お前ら…本当にやってることが、漫才だよな……」

 普段冷静な良也も、少し肝が冷えたようで、大和を睨んでいる。ゆのかは苦笑いするしかなかった。

「お、いいじゃん、漫才!
 みぃ、コンビ組もうぜ!」
「よっしー、ふざけないで!
 こいつなんかと、やるわけないじゃん!」
「でも…2人の漫才、私は好きだよ?」
「漫才じゃないから!!」

 ゆのかの言葉に、水湖は鋭いツッコミをいれた。

(2人で漫才…いいと思うけどなぁ……)

 ゆのかが半分本気で思っていると、良也は帰る準備を始めた。

「……悪い。
 そろそろ塾の時間だから、帰る。」
「えーっ、よっしー、帰っちゃうの??」
「ほんっとに、勉強好きだよなぁ~」

 良也は頭が良く、難しい宿題もあっという間に終わらせては、ゆのか達の宿題も手伝ってくれる。
 ゆのかも勉強はそこそこできるものの、勉強が嫌いな水湖と大和は、つまらなそうに口を尖らせた。

「別に…好きじゃないけど。」
「将来の夢のため…なんだよね?」

 ゆのかが言うと、良也は小さく笑った。

「そゆこと。じゃあな。」

 残った3人は、良也の後ろ姿を見送った。

(何の職業かは教えてくれなかったけど…よしくんは一生懸命勉強しないと、なれない職業らしくて。
 夢を追いかけて、難しい勉強を頑張るなんて…尊敬するなぁ。)

 隣の2人を見ると、同じようなことを思っていたようで…目を輝かせていた。

「すっげぇよなぁ……よしは。」
「ほんと、よっしー、頑張ってるよね~!中学いっても、ガリ勉貫くのかな?」
「よしくんは…ガリ勉でも、格好いいと思う。」
「そぉ?ま、顔はカッコイイと思うけど……心配だなぁ~私達以外に、お友達できるかどうか…」
「みぃ…それはよしに、失礼だろ!」

 珍しく、大和がツッコミ担当になっている。その後、しばらく話をして、その日はお開きとなった。
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