夢の音を奏でます!〜第1話 始まりの唄〜

水澄 涼海

文字の大きさ
11 / 35
再会

いつもの公園で

しおりを挟む
◇◇◇

 ゆのかは、いつもの公園で、幼馴染達とお喋りしていた。
 ジャングルジムの頂上に登ると海が見える公園は、ゆのか達が出会った場所で…ゆのかのお気に入りだった。

「……もう、2年か。」

 鉄棒に座っていた大和やまとが、ぼそりと呟く。
 ゆのかや、他の幼馴染は、何のことかすぐに分かった。

「なんとか卒業式に間に合って欲しいけど…厳しそうだな。」
「早いよねぇ………」

 鉄棒に寄りかかる“よしくん”こと良也よしやと、ブランコに座る“みぃちゃん”こと水湖みこも、寂しそうな顔をした。
 航の母が殺されたあの日から、2年が経った。
 航は……まだ、見つかっていない。

(航ちゃん……)

 ゆのかは、航と出会ったあの日のことを、鮮明に思い出していた。
 航は、ゆのかをこの公園に連れてきてくれた。そこで出会った3人───大和と良也と水湖とは、今でも仲が良い。
 楽しい時は一緒に笑い合い、困っている時は助けてくれる。ゆのかにとって、航と同じくらい大好きな人達だ。

 それでも……ゆのかの胸には大きな穴が、ぽっかり空いたままだった。それだけ、航と過ごした1年は、大切でかけがえのない時間だった。

(私が…大人だったら……航ちゃんを捜し出すことが、できたのかな……)

 なんて、切ない思いをしたこともあったが…まだ子どもだったゆのかは、航を待つことしかできなかった。
 時の流れの早さは残酷で、もうすぐゆのか達の小学校の卒業式。来月から、ゆのか達は中学生だ。
 短いような、長いような……ゆのかは、時間の感覚がよく分からなかった。

「航くん…生きてる…よね……?」

 水湖が、悲しそうに呟く。

(生きていて欲しい…)

 ゆのかは、ブランコの鎖を、ギュッと握りしめた。

(でも…大事な人は、いつも私のもとから、いなくなる………
 いつも…いつも、そうだった…)

 気持ちが沈むゆのかとは対照的に、大和はケラケラ笑っている。

「当たり前だろ!
 みぃ…オマエ、いくら航が好きだからって、心配しすぎだって!」
「う、うるさいっ!!!」

 水湖は、顔を真っ赤にして、頬をぷくー!と膨らませている。水湖の身長は小さくて、怒ったところで、小動物のようだった。
 ゆのかは思わず、クスッと笑った。

(可愛い…リスみたい。)

 頬を赤くした水湖は、これ以上言わせまい!と、鉄棒に座った大和の足を、手加減しながら揺らした。

「うぉっ?!!」

 すると、大和はバランスを崩して、体が頭の後ろの方へ倒れてしまった。

「…!」
「えっ…?」
「大和?!」

 想定外のことに、良也とゆのかと水湖は、瞬時に動けなかった。
 …が、大和は座った状態のまま、鉄棒で一回転し…気づいた時には元の位置に戻っていた。

「へへっ。ビビったか?!」

 ゆのか達3人が呆然としている中、大和は1人、可愛いイタズラをした後のように笑っていた。

「……っ、あんたねぇ!!!」
「みぃ、あぶねぇぞ~?突然押すなよ~」
「あんたがっ…変なこと言うからでしょ?!!」
「ぎゃっ!
 おい!!本気で押すなよ!!!」

 その様子を見た良也は、溜め息をいた。

「お前ら…本当にやってることが、漫才だよな……」

 普段冷静な良也も、少し肝が冷えたようで、大和を睨んでいる。ゆのかは苦笑いするしかなかった。

「お、いいじゃん、漫才!
 みぃ、コンビ組もうぜ!」
「よっしー、ふざけないで!
 こいつなんかと、やるわけないじゃん!」
「でも…2人の漫才、私は好きだよ?」
「漫才じゃないから!!」

 ゆのかの言葉に、水湖は鋭いツッコミをいれた。

(2人で漫才…いいと思うけどなぁ……)

 ゆのかが半分本気で思っていると、良也は帰る準備を始めた。

「……悪い。
 そろそろ塾の時間だから、帰る。」
「えーっ、よっしー、帰っちゃうの??」
「ほんっとに、勉強好きだよなぁ~」

 良也は頭が良く、難しい宿題もあっという間に終わらせては、ゆのか達の宿題も手伝ってくれる。
 ゆのかも勉強はそこそこできるものの、勉強が嫌いな水湖と大和は、つまらなそうに口を尖らせた。

「別に…好きじゃないけど。」
「将来の夢のため…なんだよね?」

 ゆのかが言うと、良也は小さく笑った。

「そゆこと。じゃあな。」

 残った3人は、良也の後ろ姿を見送った。

(何の職業かは教えてくれなかったけど…よしくんは一生懸命勉強しないと、なれない職業らしくて。
 夢を追いかけて、難しい勉強を頑張るなんて…尊敬するなぁ。)

 隣の2人を見ると、同じようなことを思っていたようで…目を輝かせていた。

「すっげぇよなぁ……よしは。」
「ほんと、よっしー、頑張ってるよね~!中学いっても、ガリ勉貫くのかな?」
「よしくんは…ガリ勉でも、格好いいと思う。」
「そぉ?ま、顔はカッコイイと思うけど……心配だなぁ~私達以外に、お友達できるかどうか…」
「みぃ…それはよしに、失礼だろ!」

 珍しく、大和がツッコミ担当になっている。その後、しばらく話をして、その日はお開きとなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは

紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。 真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。 婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。 白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

処理中です...