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2章:テイマーとしての覚悟

59. 2章 エピローグ

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「それで、運営から連絡は来たんでしょうか?」

 バグモンスターの発見から討伐までの経緯を運営に連絡したのだが、状況の確認後に改めて連絡をすると返信が来た為、昨日はそのまま解散となった。
 ちなみにロコさんのペットやギンジさんの腕の状況についても説明している。……後、出来れば見なかった事にしたかったのだが、私のインベントリ内にある正体不明の文字化けしたアイテムについても説明した。

「連絡自体は来たのじゃが、もう少し詳細な情報が欲しいと言うことで、後日運営のプライベートエリアに招かれる事になったのじゃ」
「運営のプライベートエリアなんてあるんですね!」
「うむ、基本的に運営がプレイヤーと交流を持つための場じゃな。わっちも昔、テイマーという職業についてやペット関連について意見を聞きたいと呼ばれたことがあるのじゃ」

 ――運営から直接意見を聞きたいと請われるテイマー……私の師匠凄すぎない?

「それで、ロコさんのペットやギンジさんの腕については?」
「それもその時に対応してくれるそうじゃ。ログ解析も済んでおるから、運営のプライベートエリアまで来てくれれば修復はすぐに済むと連絡を受けておる」
「良かった! 相手がよく分からないモンスターだったから、もしこのまま治らないなんて事にならないだろうかって少し心配していたんです」

 今回の敵は本当に意味が分からないモンスターだった。
 テクスチャは壊れてる。ダメージは通らない。データは壊す。そのデタラメさからして、このゲームに居てはいけないモンスターだと言うことは分かる。……下手をすればロコさんはペットを失っていた可能性すらあったのだ。

「……丁度良いタイミングかもしれぬな。……ナツよ、お主がこれからもテイマーであり続けるのであれば、持っておかねばならない『テイマーの覚悟』と言うものがあるのじゃ」
「テイマーの覚悟ですか?」
「そうじゃ」

 ロコさんは一つ大きく頷くと、真剣な目をしてこちらを見つめた。その真剣な様子に私は自然と佇まいを正す。

「テイマーとしての覚悟、それはペットを死なせないこと。そして……ペットが死ぬことへの覚悟じゃ」

 『ペットが死ぬことへの覚悟』その言葉を聞いた時、私は体の中心から冷えていくのを感じた。

「どんなに準備を整え、どんなに最善を尽くしたとて、ちょっとした原因からペットを失う事はある。……現にわっちも昔ペットを死なせてしもうた経験があるからの」
「……ロコさんがですか?」

 それはとても意外なことだった。私の中にあるロコさんのイメージは、何でも出来て、何でも知っていて、途方もなく強いプログレス・オンラインで一番テイマーだからだ。
 そんなロコさんがペットを死なせてしまう光景を想像することが出来ない。

「そうじゃ。わっちがギルドマスターを務めておった時には数多くの優秀なテイマーが在籍しておったが、ペットを死なせた経験が無い者の方が少数派であったよ」
「……そうなんですね」

 ロコさんはより一層真剣な眼差しを私に向け、諭す様に言葉を紡いでいく。
 
「もう一度言うがの。どんなに準備を整え、どんなに最善をつくしたとて、ちょっとした原因からペットを失う事はある。……じゃから、わっちらテイマーはペットを失わないために努力し備える必要があるのじゃ」

 どんなに準備を整えていようともペットが死ぬときは死ぬ。だからこそペットを失わない為に努力し備える。それらの言葉は矛盾しているようで矛盾していない、とても重い言葉に思えた。……つまりこれが『覚悟』なのだ。
 
「お主がこれからもテイマーを続けるのであれば、このことを忘れるでないぞ? そして、努めよ」
「……はい」

 私もレキもパルもこれからもっと強くなる。何も失わない為に。
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