蒼き炎の神鋼機兵(ドラグナー)

しかのこうへい

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第八章

悪鬼の終焉-02

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『-ほう… 今頃安全弁を抜くとは、いささか準備不足ではないかね?-』
マーダーは静かな口調で、俺を挑発していく。
「なァに、これも作戦のウチってね…」

刹那、マーダーが絨毯スレスレに大剣をブン!と振るった。ガラスの破片が一気に巻き上がる。ガラスの雨の中、俺は視界を奪われ咄嗟に右へと回避行動を取った。そのついでに、俺がいた位置に右のパイルバンカーを射出する。
『-避けたか…-』
「手応えあり、かな?」
ステンドグラスを繋ぎ止めていた細かな粒子の煙が、お互いの視界を遮る。俺のパイルバンカーのニードルは、オフツィーア・ベクツェの左肩のポールドロンを破壊していた。
『-相変わらず、小賢しいな…-』
「…褒め言葉と受け取っとくぜ…」
そして、離脱。お互いの間合いを取り直した。

ジリ… ジリ…
息を抜けないにらみ合いが続く。

『-来たよ!-』
シェスターが追いついてきた。マーダーはその瞬間を見逃さなかった。三連装のハンディ・カノンを地面に向け発砲! 舞い上がるガラスのチリや土煙で、再び視界が奪われる。そして、上方で鉄骨が破壊される鈍い音とともに再びガラス片が降ってきた。
「シェスター! 上に逃げた!」
『-…了解!-』
フオォォォ…ン!
ブースターの音も軽やかに、ラーヴァナが空へと舞い上がった。それに続いて、俺も空高くジャンプした。

空中で、周囲を見渡す。オフツィーア・ベクツェは基本的にランダーだ。そう遠くへは行ってないはず。

…いた! ハープシュタット城南西、城下町へと降りていくのが見える。しかも、予備らしいハンディ・カノンを装着していた。これは、マズい!
「マーダー、てめぇ、市民巻き込むつもりかよ!?」
『-それの何が悪い? ここは戦場… 正しい情報も得ず逃げぬ者が悪いのだよ-』
「その情報すら流さぬくせに…!」
『-民草など所詮、儂の盾に過ぎぬわ-』
「マァァア… ダァァアア…!」
俺はブースター圧を更に上げた。落下速度に上乗せして、オフツィーア・ベクツェに体当たりを敢行した。マーダーと俺は城下町の一歩手前で落下した。

『-甘い甘い甘い…-』
着地の寸前、マーダーは右腕のハンディ・カノンのマガジンを交換した。そして、それを発砲しながら、右腕を振り回した。”光の爪”が、眼前に襲い掛かってきた。避けきれない!

ガッ! 金属が弾かれる音が響き渡る。シェスターのハンディ・カノンだった。マーダーの右腕の軌道はわずかに逸れ、俺の左手を奪っていった。間髪入れずに、俺は頭からフック気味にパイルバンカーを入れる。マーダーはわずかに軌道を読み、俺が破壊できたのは背面のブースターの片翼だけだった。だが、それで良し! 少しでも削れればいいのだ!

続けて左腕をアッパー気味にパイルバンカー! これもマーダーは仰け反って、避けきった。俺の左を追うように、マーダーの右腕が襲ってくる。俺は蹴りを入れて、マーダーの間合いから外れた。そして、両者着地。

間髪入れずにダッシュローラーで一気に間合いを詰める。で、両足ピックで急制動、右足ピックの超信地旋回、右フックのパイルバンカー! …マーダーは体を低くして避けた。左足ピックに切り替えて、超信地旋回!その勢いを乗せて左フックのパイルバンカー! しかし、これを右腕で弾かれる。俺はピックをフリーにして、信地旋回を繰り返し間合いを取り直した。

その間に、マーダーは左腕のハンディ・カノンのマガジンを交換。ブン!と振って”光の爪”を伸ばす。そしてダッシュローラーで一直線に間合いを詰めてきた。左下方からのフック! 俺は右手でマーダーの手首を弾いた。その勢いで空中を前転、振り向きザマに右腕のパイルバンカーを上から放つ! ニードルが金属を抉る、鈍い音が響いた。手応えあり! だが、同時にマーダーの左も俺の右腿を抉っていった。再びにらみ合いが続く。

マーダーの両腕の”爪”は、既に効力を失っていた。ヤツはゆっくりとハンディ・カノンのマガジンを交換すると、前傾姿勢を取る。…マズい。今度は両腕から”爪”が来るぞ…。俺はマーダーを凝視しながら、右腕のハンディ・カノンのマガジンを交換した。まだまだ睨み合いは続く。動くか… 動かざるか…。

最初に動いたのは、俺だった!
左のハンディ・カノンを連射、マーダーの足元に着弾させて、俺は左寄りに間合いを詰めた。すれ違い様のパイル! しかし、既にそこにはいない。土煙の中、頭上から”光の爪”が落ちてくる! 左足ピックの超信地旋回! 辛うじてその攻撃を避けた。

続け様、マーダーの左が横に薙いできた。おれはその手首を掴み、深く間合いに入り込んで肩口に左手を添え、思い切り前へと倒れ込み、一気に両足を伸ばした! ズム… と大地にめり込む音が周囲に響いた。決まった! おそらく、ドラグナーでは初めての一本背負いだろう。
『-ぐぬぅ…!?-』
「…ヘヘッ、…三船久蔵もかくありなん、ってな!」

マーダーは瞬時に態勢を立て直すと、両腕を構えた。既に”光の爪”は小さくなっていた。
『-…認めよう。小僧、お前は強い!-』
「けッ… ならとっとと投降しろってんだ!」
『-それはならぬ-』
「プライドが許さない、か?」
『-この世界でも儂が惨めに倒るるのが許せぬのよ-』
「…そうかよ…ッ!」
俺は瞬時に間合いを詰めた。そして、マーダーの腰の大剣を抜くと、右ピックの超信地旋回! その勢いのままで、胴体を横に薙いだ。ガッ… と金属がめり込む音が響く。
『-甘いと言うにッ…!!-』
マーダーはその両腕で、大剣を叩き折った。あと少しで、刃がヤツに届くというところだった。

『-…この儂の右半身、童が奪っていったのだったな…-』
俺は思わず振り抜いてしまった右腕に、左足ピックで超信地旋回による勢いを上乗せして… ハンディ・カノンを発砲した。振り向きざまに見たマーダーの表情は笑っていた。何故なら…。

俺のハンディ・カノンから、”光の爪”が伸びていたのだ…。

”光の爪”はオフツィーア・ベクツェの胴体を薙ぎ、その身体をふたつに引き裂いた。
「…拾ったんだよ、たった一発だけ。お前が落としたハンディ・カノンからさ、一発だけ取り出せたんだ。この時のためだけに準備した、一発だったんだよ…」
『-…フン、最期まで小賢しい手に出たものだ… 負けたよ…-』

こうして、俺とアムンジェスト=マーダーとの戦いは幕を閉じたのだった。いつの間にか、天気は崩れ酷い雨が降っていた。

「…ライヴだ、…ライヴ=オフウェイだ、聞こえるか…、聞こえるか…!」
俺は噛みしめるように、一語一語を確認しながら言葉を紡いだ。

「…俺はライヴ=オフウェイだ。今から宣言を行う。よく聞いてほしい。ここ、グリーティスタンでの戦闘は終わった。敵将メッド=クラウンことアムンジェスト=マーダー卿は倒れた。この俺が倒した!…これ以上の犠牲は出したくない。皆投降してほしい。繰り返す、アムンジェスト=マーダーは倒した。これ以上の戦闘は無意味だ! 生き残った戦士たちは投降してほしい…」
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