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第一章
マーダーの影-01
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「ダメだ、協力はできない」
ベッドに横たわったままで、その品格ある貴族のおっちゃんは厳かに言った。
「何故です? あのフィーバー=ハンディンは追い出したんですよ?」
俺も食い下がって引こうとするつもりはない。
「だからだよ、少年。だからこそこのオースティン砦が余計な注目を受けているのがわからないのかね?」
「それは…」
俺は二の句が告げなかった。確かにこのブルムント=ヴィジッターという砦の主の言うことにも一理ある。
「我々はただでさえ微妙な立場にあるのだ。これを見るといい」
「これは…」
「先日撮影された写真だ。そこに映っているのが何か、わかるかね?」
ち、ちょっとまて? 先日って…?
「ブルムントさん、これ… いつ撮影されたって?」
「つい一週間ほど前の話だ。君にもわかるだろう? このドラグナーを…」
ああ、覚えがある。コイツには随分と頭を悩ませた、すべての元凶だったからな。しかし…。
「…オフツィーア・ベクツェ…」
なんてこった。ブルムントのおっちゃんの言う通りなら、マーダーは生存していたという事になる。
「いや、そんなはずはない。ヤツは俺がキッチリと倒したはずだ。死体見分もした。奴の
ドラグナーも完全に破壊した!」
「では、それは幻影とでも言うのかね?」
「だって、そうとしかいえませんよ? ヤツは、ヤツは…!?」
「…その写真の隅を見てみるといい、少年。…貴君の探している少女とやらが、そこにいる。わかるかね? 彼奴は生きて、この少女を連れ回しているのだ」
「それは何故?」
「…わからぬ。ただひとつ言えるのは、現状、厄介な彼奴を呼び寄せかねないということになる。それは儂の望むところではない」
「ここに、やって来ると…?」
「君は思わなかったかね? 彼奴が君が言うほどの強さなら、何故ああもアッサリと倒せたのかと」
「それは…」
「それが、儂が貴君達に味方できない理由、と言えば納得したかね?」
「でも、たとえそうだとしても、この俺がまた叩きのめして…」
「倒せると断言できるかね? 我が方にはフルッツファグ・リッターを二隻保有している。また、ここを防衛することに適合したドラグナーを配備している。それでいてもなお、儂には彼奴に勝てると言えぬ。追い返すこともままならぬだろう。それ程までに彼奴はしたたかなのだよ」
「…わかりました。補給をいただければ、即時俺達はこの城を出ることにします」
「そうしてくれ。オースティン砦の通行許可は出しておく。それが儂にできる、君たちへ唯一してやれる事だ」
◇ ◇ ◇ ◇
クーリッヒ=ウー=ヴァンの物語を知るものは幸せである。心穏やかせあろうから。だからこそ、伝えよう。悠久の時を経て伝えられてきた英雄たちの物語を…。
ナレーションが流れ画面一面にタイトル・ロールが現れる。やがて浅黒い肌の男が現れると、厳かに言葉を紡ぐのだった。
「皆さん、こんばんは。クーリッヒ=ウー=ヴァンの世界へようこそ。私が当番組のナビゲーターを努めます、ブレンドフィア=メンションです。ご機嫌はいかがですか?
さて。オースティン砦を陥落させたライヴ達一行ですが、ここから何故か、城塞都市のムーアではなくダス・ヴェスタに向かっています。彼の地に一体何があったのでしょう?
史記”ゲシュヒテ”にはこのように書いてあります。
『…を追うべく、……、ライヴ達はこれを手掛かりにラウレスランドへ向かった』
この破損の多い箇所について、様々な議論がされているようです…」
では、この空白の部分にはどのような記述があったのだろうか? それについて、アンスタフト=ヒストリカ教授はこのように答えている。
「実は、アムンジェスト=マーダーは生きていたという逸話が各地に残っています。それはナフバシュタートにとどまらず、世界各地に、なのです。これは事実なのでしょうか? …私は数ある生存の伝説の中の幾つかは真実であったと考えています。何故なら、今私がいるここ、ナフバシュタートのラウレスランドから出土した土偶のひとつから推測されるためです。この土偶は …おそらくではありますが… かのマーダーの乗騎をかたどったと思われます。見えますか、ここ… この腰の模様には”踊る人形”と思われるエムブレムが描かれています。それだけの影響力がマーダーという人物にはあったのでしょう。例え、伝承が伝わっただけであっても、です。何らかの由来がこの土地にあったのではないかと考えています…」
では、クーリッヒ=ウー=ヴァン研究の双璧をなす、この方の説も伺ってみよう。ミンダーハイト=ギリアートン教授だ。
「実は私も、アムンジェスト=マーダー生存説に非常に興味を持っている一人なのです。この地からは数多くの土偶が発見されてまして、その中にマーダーの乗騎”オフツィーア・ベクツェ”と思われる物が出土しているのです。後世のイタズラとも言われていますが、ここから出土しているものが最も古く、精巧なのです。それも、腰に巻かれている徽章の文様までハッキリと残されており、その中のひとつに”踊る人形”と思われるデザインの土偶も発見されているのです。それが本物であるかどうかはともかくとして、この地にまで影響が及んでいるいち将校の伝説。なんとも興味深いではありませんか!」
◇ ◇ ◇ ◇
「通行許可のみ、ですか…」
随行してきたエッセンが、駆け寄りながら話しかけてきた。
「ええ。正確には『我関せず。彼の者達のフライングだ』と言ったところでしょうね。ですから、再びここを通る時には戦闘も覚悟しておかないといけないかもしれません。でもここから先へ進めるという点においては、吉報かもしれませんよ」
「ですが、補給が…」
「そこはヌッツさんに上手く働きかけてもらいましょう。そこは『蛇の道は蛇』ってもんです。あの人にお願いするというのも一つの手ではあると思いますよ」
「そんなに上手くいきますかねぇ…。まだ連絡手段すら確立されてないんですよ?」
◇ ◇ ◇ ◇
「まいどあり…」
曇り空の下、アジ・ダハーカのそばには見慣れたロースムント商会の機体が駐機していた。そして、その船の主… ヌッツがブリッジで俺達の帰りを待ち受けていたのである。
「ね?」
「……」
エッセンは頭を抱えていた。それもそうだろう。彼はまだ、このヌッツという商人の正体をまだ知らない。正体… いや、違うな。本性というのが正しいかもしれない。とにかく、金の匂いがするところには、必ずと言っていいほど嗅ぎつけてやってくるのがこの男の本性だ。しかも今では芝居などの興行にも手を出している。本当に抜け目がない、だがそういう意味では信用できる人材なのかもしれない。
「で? そろそろあたしの出番かなと思いましてね」
「流石ですね、ヌッツさん。お願いしたいことがあります」
「補給線をなんとかしろってんなら、なんとかお手伝いはできますがね? …ただ…」
「割高になる。…そう言いたいのでは?」
「その通り。この州でかき集めるとしても、それなりに資金が必要になっていましてね」
「どれ位見積もってるんです?」
「3割増し…」
「それは無茶だ、1割五分ならなんとか!」
エッセンが口を挟んできた。まぁ、予定調和だろう。
「とはいえ、あなた方にとってここは敵地ですよ? それを扱う我々にとっても、危険が付きまといます。あたしだって自社の従業員の身柄は守ってやりたいですしねぇ…」
「じゃ、コレはなんでしょう?」
俺は街で拾ってきた一枚のビラをそっと広げてみせた。
「なになに、
『命知らずを大募集! 戦場に出ずして、高給が期待できるいい仕事』
…コレは一体何でしょう?」
「…さぁ、知りませんな。どこかのバカが出した、酔狂な募集広告じゃないんですか?」
「確かに。広告主は代理店名義になっています。でもね、ココ…。この社章はフリンスターフに付いているものと同じですよね、明らかに。コレは一体何の冗談でしょう?」
「…さぁてね、あたしもこのところ、すっかり耄碌してしまいましてね」
「2割です。それ以上は罷りません。いいですね」
「そりゃ酷い、それじゃあたしの取り分が…」
「…ん?」
「あ…」
「つまり、そういう事です」
「…ああ、もう! 仕方ないですね。負けましたよ、あたしゃ」
「いいじゃないですか。1割じゃないんですから」
「その条件では、あたしは商売できませんよッ!」
「では、それで決まりということで」
大きなため息をつきながら、ヌッツはこの場から退場した。ポカンとした表情のエッセンだけが、たった一人その場に取り残されていた。
『-警報、警報! 所属不明3騎が当艦に向かってくる模様。その距離、3Giz(約4.8km)! こちらからの呼びかけに応じず-』
俺はすぐそばにある伝声管の蓋を開けた。
「シェスター隊を斥候に出せ。勿論、フル装備でだ。後はいつも通り。わかるね? 急げ! 俺もすぐそっちに行く!」
『-了解-』
間を置かずに、艦内放送が流れてきた。
『-シェスター隊全力出撃準備、目標に攻撃の意図のある無しを確認すべし! 攻撃あらば、可能な限り交戦を避けおびき寄せよ。全艦第一種攻撃体勢に付け! …繰り返す…-』
艦内の細い通路を進み、階段を駆け上る。やがてブリッジにたどり着くと、既にシェスター隊は出撃していた。
「艦内放送であった通りだ。くれぐれも交戦を避け、必要あればこちらに誘導すること。いいな?」
『-わかってるって。大丈夫だよ、ライヴ君!-』
「ああ、しっかり頼むよ」
『-間もなく接敵… …2騎はノーマルのファハン。で、指揮騎が… カイアヌム!-』
「フィーバーか!」
『-…みたいだね-』
「ヤバい、すぐに帰ってこい!」
『-誘い込みは?-』
「必要ない。ヤツなら放っておいておいてもコッチに来る!」
『-ファハンくらいは様子見してもいいんじゃない?-』
「やめろ! すぐに戻ってこい!」
『-…あれ、すっごーい! 鮮やかに避けちゃった。これで帰投する! ライヴ君、ファハンも相当な手練よ-』
「現在の敵の位置は?」
俺はレーダー技師に問いかけた。
「約1.5Giz(2.4km)」
「えらく遅いな…。敵さんは歩いてるのか?」
『-コッチは雨だよ! ザーザー降り!-』
「ああ、そういう事な」
という事は、地面が滑ってマトモには戦えないことを意味している。それをわかった上で
やって来てるっていうのか?
「敵はガタスキーみたいな何かを装着しては…」
『-いないね!-』
…普通であれば、まずこのような手段は取らないはずだ。…どうする?
「シェスター隊を射軸から離れるよう指示!」
「シェスター隊、主砲撃ちます。射線から離れてください」
『-シェスター隊、了解!-』
「主砲、撃ち方用意!」
『-主砲、撃ち方用意!-』
「目標、1.5Giz先のドラグナー」
『-1.5Giz先のドラグナー、確認! 準備よーし!-』
「全門開け!」
『-撃てーッ!-』
「レーダー!」
「三騎ともに健在!…スピード、上がりました!」
「ガタスキー装備で出る! ライヴ隊、アギル隊、回せ!」
『-既に準備はできていますわ。あとは主様の到着を待つだけ…-』
『-こっちもだ。アギル隊、いつでも出られるぜ!-』
「上等! 俺もすぐに行く! エッセン副長、後はお願いします」
「了解! お気をつけて」
◇ ◇ ◇ ◇
「先に出たシェスター隊と合流。アギル隊の援護を受けつつ、空と陸から叩く! いいな?」
俺は身体にセンサーを取り付けながら指示を出していった。
『『『-了解!-』』』
『-ライヴさん、メンテはきっちり終わらせてるからね。気をつけて-』
「メイーダさん、感謝!」
俺は静かに大きく深呼吸した。そして、俺の意識がレクルートと完全に同期する!
「ライヴ=オフウェイ、レクルート、出る!」
ベッドに横たわったままで、その品格ある貴族のおっちゃんは厳かに言った。
「何故です? あのフィーバー=ハンディンは追い出したんですよ?」
俺も食い下がって引こうとするつもりはない。
「だからだよ、少年。だからこそこのオースティン砦が余計な注目を受けているのがわからないのかね?」
「それは…」
俺は二の句が告げなかった。確かにこのブルムント=ヴィジッターという砦の主の言うことにも一理ある。
「我々はただでさえ微妙な立場にあるのだ。これを見るといい」
「これは…」
「先日撮影された写真だ。そこに映っているのが何か、わかるかね?」
ち、ちょっとまて? 先日って…?
「ブルムントさん、これ… いつ撮影されたって?」
「つい一週間ほど前の話だ。君にもわかるだろう? このドラグナーを…」
ああ、覚えがある。コイツには随分と頭を悩ませた、すべての元凶だったからな。しかし…。
「…オフツィーア・ベクツェ…」
なんてこった。ブルムントのおっちゃんの言う通りなら、マーダーは生存していたという事になる。
「いや、そんなはずはない。ヤツは俺がキッチリと倒したはずだ。死体見分もした。奴の
ドラグナーも完全に破壊した!」
「では、それは幻影とでも言うのかね?」
「だって、そうとしかいえませんよ? ヤツは、ヤツは…!?」
「…その写真の隅を見てみるといい、少年。…貴君の探している少女とやらが、そこにいる。わかるかね? 彼奴は生きて、この少女を連れ回しているのだ」
「それは何故?」
「…わからぬ。ただひとつ言えるのは、現状、厄介な彼奴を呼び寄せかねないということになる。それは儂の望むところではない」
「ここに、やって来ると…?」
「君は思わなかったかね? 彼奴が君が言うほどの強さなら、何故ああもアッサリと倒せたのかと」
「それは…」
「それが、儂が貴君達に味方できない理由、と言えば納得したかね?」
「でも、たとえそうだとしても、この俺がまた叩きのめして…」
「倒せると断言できるかね? 我が方にはフルッツファグ・リッターを二隻保有している。また、ここを防衛することに適合したドラグナーを配備している。それでいてもなお、儂には彼奴に勝てると言えぬ。追い返すこともままならぬだろう。それ程までに彼奴はしたたかなのだよ」
「…わかりました。補給をいただければ、即時俺達はこの城を出ることにします」
「そうしてくれ。オースティン砦の通行許可は出しておく。それが儂にできる、君たちへ唯一してやれる事だ」
◇ ◇ ◇ ◇
クーリッヒ=ウー=ヴァンの物語を知るものは幸せである。心穏やかせあろうから。だからこそ、伝えよう。悠久の時を経て伝えられてきた英雄たちの物語を…。
ナレーションが流れ画面一面にタイトル・ロールが現れる。やがて浅黒い肌の男が現れると、厳かに言葉を紡ぐのだった。
「皆さん、こんばんは。クーリッヒ=ウー=ヴァンの世界へようこそ。私が当番組のナビゲーターを努めます、ブレンドフィア=メンションです。ご機嫌はいかがですか?
さて。オースティン砦を陥落させたライヴ達一行ですが、ここから何故か、城塞都市のムーアではなくダス・ヴェスタに向かっています。彼の地に一体何があったのでしょう?
史記”ゲシュヒテ”にはこのように書いてあります。
『…を追うべく、……、ライヴ達はこれを手掛かりにラウレスランドへ向かった』
この破損の多い箇所について、様々な議論がされているようです…」
では、この空白の部分にはどのような記述があったのだろうか? それについて、アンスタフト=ヒストリカ教授はこのように答えている。
「実は、アムンジェスト=マーダーは生きていたという逸話が各地に残っています。それはナフバシュタートにとどまらず、世界各地に、なのです。これは事実なのでしょうか? …私は数ある生存の伝説の中の幾つかは真実であったと考えています。何故なら、今私がいるここ、ナフバシュタートのラウレスランドから出土した土偶のひとつから推測されるためです。この土偶は …おそらくではありますが… かのマーダーの乗騎をかたどったと思われます。見えますか、ここ… この腰の模様には”踊る人形”と思われるエムブレムが描かれています。それだけの影響力がマーダーという人物にはあったのでしょう。例え、伝承が伝わっただけであっても、です。何らかの由来がこの土地にあったのではないかと考えています…」
では、クーリッヒ=ウー=ヴァン研究の双璧をなす、この方の説も伺ってみよう。ミンダーハイト=ギリアートン教授だ。
「実は私も、アムンジェスト=マーダー生存説に非常に興味を持っている一人なのです。この地からは数多くの土偶が発見されてまして、その中にマーダーの乗騎”オフツィーア・ベクツェ”と思われる物が出土しているのです。後世のイタズラとも言われていますが、ここから出土しているものが最も古く、精巧なのです。それも、腰に巻かれている徽章の文様までハッキリと残されており、その中のひとつに”踊る人形”と思われるデザインの土偶も発見されているのです。それが本物であるかどうかはともかくとして、この地にまで影響が及んでいるいち将校の伝説。なんとも興味深いではありませんか!」
◇ ◇ ◇ ◇
「通行許可のみ、ですか…」
随行してきたエッセンが、駆け寄りながら話しかけてきた。
「ええ。正確には『我関せず。彼の者達のフライングだ』と言ったところでしょうね。ですから、再びここを通る時には戦闘も覚悟しておかないといけないかもしれません。でもここから先へ進めるという点においては、吉報かもしれませんよ」
「ですが、補給が…」
「そこはヌッツさんに上手く働きかけてもらいましょう。そこは『蛇の道は蛇』ってもんです。あの人にお願いするというのも一つの手ではあると思いますよ」
「そんなに上手くいきますかねぇ…。まだ連絡手段すら確立されてないんですよ?」
◇ ◇ ◇ ◇
「まいどあり…」
曇り空の下、アジ・ダハーカのそばには見慣れたロースムント商会の機体が駐機していた。そして、その船の主… ヌッツがブリッジで俺達の帰りを待ち受けていたのである。
「ね?」
「……」
エッセンは頭を抱えていた。それもそうだろう。彼はまだ、このヌッツという商人の正体をまだ知らない。正体… いや、違うな。本性というのが正しいかもしれない。とにかく、金の匂いがするところには、必ずと言っていいほど嗅ぎつけてやってくるのがこの男の本性だ。しかも今では芝居などの興行にも手を出している。本当に抜け目がない、だがそういう意味では信用できる人材なのかもしれない。
「で? そろそろあたしの出番かなと思いましてね」
「流石ですね、ヌッツさん。お願いしたいことがあります」
「補給線をなんとかしろってんなら、なんとかお手伝いはできますがね? …ただ…」
「割高になる。…そう言いたいのでは?」
「その通り。この州でかき集めるとしても、それなりに資金が必要になっていましてね」
「どれ位見積もってるんです?」
「3割増し…」
「それは無茶だ、1割五分ならなんとか!」
エッセンが口を挟んできた。まぁ、予定調和だろう。
「とはいえ、あなた方にとってここは敵地ですよ? それを扱う我々にとっても、危険が付きまといます。あたしだって自社の従業員の身柄は守ってやりたいですしねぇ…」
「じゃ、コレはなんでしょう?」
俺は街で拾ってきた一枚のビラをそっと広げてみせた。
「なになに、
『命知らずを大募集! 戦場に出ずして、高給が期待できるいい仕事』
…コレは一体何でしょう?」
「…さぁ、知りませんな。どこかのバカが出した、酔狂な募集広告じゃないんですか?」
「確かに。広告主は代理店名義になっています。でもね、ココ…。この社章はフリンスターフに付いているものと同じですよね、明らかに。コレは一体何の冗談でしょう?」
「…さぁてね、あたしもこのところ、すっかり耄碌してしまいましてね」
「2割です。それ以上は罷りません。いいですね」
「そりゃ酷い、それじゃあたしの取り分が…」
「…ん?」
「あ…」
「つまり、そういう事です」
「…ああ、もう! 仕方ないですね。負けましたよ、あたしゃ」
「いいじゃないですか。1割じゃないんですから」
「その条件では、あたしは商売できませんよッ!」
「では、それで決まりということで」
大きなため息をつきながら、ヌッツはこの場から退場した。ポカンとした表情のエッセンだけが、たった一人その場に取り残されていた。
『-警報、警報! 所属不明3騎が当艦に向かってくる模様。その距離、3Giz(約4.8km)! こちらからの呼びかけに応じず-』
俺はすぐそばにある伝声管の蓋を開けた。
「シェスター隊を斥候に出せ。勿論、フル装備でだ。後はいつも通り。わかるね? 急げ! 俺もすぐそっちに行く!」
『-了解-』
間を置かずに、艦内放送が流れてきた。
『-シェスター隊全力出撃準備、目標に攻撃の意図のある無しを確認すべし! 攻撃あらば、可能な限り交戦を避けおびき寄せよ。全艦第一種攻撃体勢に付け! …繰り返す…-』
艦内の細い通路を進み、階段を駆け上る。やがてブリッジにたどり着くと、既にシェスター隊は出撃していた。
「艦内放送であった通りだ。くれぐれも交戦を避け、必要あればこちらに誘導すること。いいな?」
『-わかってるって。大丈夫だよ、ライヴ君!-』
「ああ、しっかり頼むよ」
『-間もなく接敵… …2騎はノーマルのファハン。で、指揮騎が… カイアヌム!-』
「フィーバーか!」
『-…みたいだね-』
「ヤバい、すぐに帰ってこい!」
『-誘い込みは?-』
「必要ない。ヤツなら放っておいておいてもコッチに来る!」
『-ファハンくらいは様子見してもいいんじゃない?-』
「やめろ! すぐに戻ってこい!」
『-…あれ、すっごーい! 鮮やかに避けちゃった。これで帰投する! ライヴ君、ファハンも相当な手練よ-』
「現在の敵の位置は?」
俺はレーダー技師に問いかけた。
「約1.5Giz(2.4km)」
「えらく遅いな…。敵さんは歩いてるのか?」
『-コッチは雨だよ! ザーザー降り!-』
「ああ、そういう事な」
という事は、地面が滑ってマトモには戦えないことを意味している。それをわかった上で
やって来てるっていうのか?
「敵はガタスキーみたいな何かを装着しては…」
『-いないね!-』
…普通であれば、まずこのような手段は取らないはずだ。…どうする?
「シェスター隊を射軸から離れるよう指示!」
「シェスター隊、主砲撃ちます。射線から離れてください」
『-シェスター隊、了解!-』
「主砲、撃ち方用意!」
『-主砲、撃ち方用意!-』
「目標、1.5Giz先のドラグナー」
『-1.5Giz先のドラグナー、確認! 準備よーし!-』
「全門開け!」
『-撃てーッ!-』
「レーダー!」
「三騎ともに健在!…スピード、上がりました!」
「ガタスキー装備で出る! ライヴ隊、アギル隊、回せ!」
『-既に準備はできていますわ。あとは主様の到着を待つだけ…-』
『-こっちもだ。アギル隊、いつでも出られるぜ!-』
「上等! 俺もすぐに行く! エッセン副長、後はお願いします」
「了解! お気をつけて」
◇ ◇ ◇ ◇
「先に出たシェスター隊と合流。アギル隊の援護を受けつつ、空と陸から叩く! いいな?」
俺は身体にセンサーを取り付けながら指示を出していった。
『『『-了解!-』』』
『-ライヴさん、メンテはきっちり終わらせてるからね。気をつけて-』
「メイーダさん、感謝!」
俺は静かに大きく深呼吸した。そして、俺の意識がレクルートと完全に同期する!
「ライヴ=オフウェイ、レクルート、出る!」
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