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第一章
マーダーの影-02
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『-…なんだよ、ありゃ…-』
先頭を走っていたエイサーが呟いた。それも無理はない。フィーバー達は泥沼の中を、ローラーダッシュで全力走行しているのである。ガタスキーでエッチラオッチラやってる俺達とでは、機動的にも雲泥の差が生じていた。
突然、ガタスキーがなにか堅いものと接触した。そこに乗り上げるとツルツルと滑って全く制御が効かなくなる…。
「…そうか、氷か…!」
そういや連中の足元を見ると、削れてできた轍が痛々しく残っている。
「ピックだ! ライヴ隊はガタスキーから降りて足のピックを使え!」
『-甘いわ…-』
先頭のエイサー騎が派手に転倒した! そう、俺達は氷の上での挙動に慣れていないのだ。当然のように、俺もまたドラグナーで氷の上を動くなんて初体験だった。俺もまた、ピックを上手く使えずに転倒してしまった。
「クソッ!」
俺は地面にパイルバンカーを撃ち込んだ。そのまま足のピックも突き立てて、ようやく氷上で止まる。
「ライヴ隊全騎、パイルバンカーを使え! とにかく止まることが先決だ。シェスター隊、頼む!」
『-了解!-』
先頭を滑るエイサー騎の眼前にスピアが突き立った! そのスピアを掴み、エイサー騎は辛うじて敵によって串刺しにならずにすんだ。静騎、エーズ騎、タレント騎は後方でマゴマゴしている。
「エイサー、下がれ!一旦体勢をもとに戻せ!」
『-エイサー、了解!-』
入れ替わりに、俺は地面にピックを突き立てながら前進した。ここから見える敵さんの騎体番号は…SS-09と11。そして、カイアヌムだ。俺は足のピックを頼りに、一歩、一歩小刻みに進んだ。そしてゆっくりと大剣を抜き、正眼に構えた。
「ヘヘ…ッ、今日はちょっと手加減は保証できないんで、そこんトコよろしくな…」
『-まともに動けないのでは、戦いにもなるまい-』
『-甘く見られたもんだな-』
敵の声が聞こえる。勿論、コッチの声も相手には丸聞こえなのだが。俺は重心を丹田に据え、大きく深呼吸をした。
『-御免!-』
SS-11が上段から突進してきた! そのまま大きく剣を振り下ろされる。次の瞬間、俺は刀身の"区"でその剣を受け流し、胴を薙ぐ! 一瞬の出来事だった。敵ファハンSS-11は哀れにも腰で真っ二つとなった。
『-な、なん… だと?…-』
「…擦り上げ胴… と言ってだな…、分かんなきゃまぁいいや…」
『-主様! なんと頼もしい…!-』
『-俺… だって…!-』
「エイサー! 迂闊だぞ!」
先程危険を脱したばかりのエイサー騎が両足のピックを十分に効かせ、立ち上がった。そしてSS-09に中段から横に薙いで仕掛ける。だが、その剣は下から弾かれ袈裟懸けに斬られようとしていた。刹那、上空からスピアがSS-09を串刺しにする。シェスター隊のコリービ=フリーゲンだった。
「コリービ、いい仕事だ!」
俺は安堵の思いで感謝を述べた。
『-なに、上からはガラ空きだったんですよ!-』
コリービ騎は上空からエイサー騎をピックアップすると、後方へと移動してくれた。では、残りのフィーバー騎の始末といきましょうか?
俺はピックを立てたまま、軽くダッシュローラーを回す。…ダメだ。ツルツルと滑って、全く役に立たない。ならば…。
ピックを軽く外して、やや引っかかり気味に地面に突き立てる。そして、摺足。…うん、これならいい感じで進める。若干滑りやすくはあるが、ワックスがよく効いた舞台での演舞はよくあることだ。俺は大地にしっかりと足をつけ、スス…と重心を置いた丹田から進むように間合いを詰めていく。フィーバー騎”カイアヌム”はダックピストル状のハンディ・カノンを一発、地面に打ち込んだ。ぬかるみ始めていた地面が、再び凍りついていく。
『-…さぁて…-』
口を開いたのはフィーバーだった。
『-思い切り楽しもうじゃないか…-』
「魅力的な誘い文句だねぇ…」
『-抜かせ!-』
「もう一度言うぜ、ライヴ=オフウェイだ」
『-第13騎士団:3番隊隊長、フィーバー=ハンディン…-』
言うが早いか、カイアヌムの左回し蹴りが飛んできた。俺は半身前進して左手の甲で軽く上に弾くと、腰の大剣を抜きざまに横に薙いだ。フィーバーはそれを半身を回転させてかわすと、今度は右の後ろまわし蹴りを噛ましてきた。ダッシュローラーが回転していた。スパイクが付いていた。高速回転するスパイクが俺に襲い掛かってくる。俺は剣を握っていた右手の甲で上へ流し、体を捻って右から胴を薙いだ。フィーバーはそれを半身でかわし、信地旋回を繰り返して間合いを取った。
「そういうことかよ…。それで氷なんだ…」
『-勝てばよかろう、なのだろう?-』
「確かに、そう言った記憶はあるけどな!」
俺は足のピックを入れ、地面を蹴った。そしてピックを正位置に戻すと、足元をわざと滑らせて一気に間合いを詰め大剣を振り抜いた。氷の上でも自由の効くスパイク付きのカイアヌムは俺のターンをアッサリとかわす。俺はそれでも構わず。同じ動作を繰り返しては大剣を振り抜いた。
『-馬鹿の一つ覚えでもあるまいに…!-』
「それもそうだ」
俺はじわじわとブースターをふかしつつ、やはり同じように間合いを詰めては大振りする。
『-手も無く足掻き出したか?-』
「足掻いてみて、初めて見える道もあるってね!」
大振りする! …それがヒットし始めた。
『-…だから、どうした…?-』
カイアヌムの挙動が鈍り始めていた。
「どうだい? 思い通りに体を動かせないってのは?」
『-なん… …だと…!?-』
そうだった。カイアヌムの足元のスパイクは虚しく粘土質の土を掻き、ズブズブと沈んでいく。
「んで、こういう事さ!」
俺はカイアヌムのダック・ハンディ・カノンを斬り潰した。間合いが近ければ、よりスタックしていないほうが有利になる。
『-貴様、どうして挙動が変化しない…?-』
「ああ、変化はしてるよ。ただし、お前よかマシって程度だけどな」
俺はフルブーストで空中に飛び上がった。フィーバーもまた、飛び上がろうとした。しかし…!?
『-足元が…!?-』
「そのワンテンポが命取りってね!」
上空からシェスター隊によるスピアの雨が振ってきた。それはフィーバー騎の挙動を狭めるように大地へと突き立った。俺は真っ向からカイアヌムの兜を割る! その大剣はコクピットへと大きく吸い込まれていった。
「…悪ぃ… お前は強すぎた。手加減できないほどにな」
コクピット内がフィーバーの身体から吹き出した血に染まる。俺はできるだけ目を背けないように、目の前の事実を受け止めようと試みた。そうは言っても意識してからというもの、そうそう慣れるものではない。寸止めに失敗した分は、せめてとどめを刺してやる義務が、俺にはあった。
『-この…、小僧が… かはッ!!-』
「…すまねぇ…」
火花がカイアヌムの全身から飛び散った。俺は大剣を一気に引き抜くと、哀れにもカイアヌムはその騎体をふたつに引き裂かれドウ… と倒れ込んだ。
同じ頃、SS-09と静たちが交戦中だった。いずれも足回りに気を取られて難儀している。俺は助け舟を出した。
「SS-09に告ぐ。アンタの大将は今討ち取った。大人しく投降せよ。さもなくばその生命、俺が奪いに行くが…?」
『-…捕虜としての身分は保証してくれるんだろうな-』
「当然だ。アンタの仲間のSS-11も無事なはずだよ。貴君ら二人には聞きたいことがある。さ、降参してくれ。それがお互いのための、たったひとつの冴えたやり方だ」
『-…分かった。貴君のすすめに従い、投降する…-』
◇ ◇ ◇ ◇
「SSナンバーって事は、アイネ=ハインガーヴさん、エイン=フィリーファさん両名は高級士官ですよね?」
「高級士官かどうかは知らない。我が第13騎士団は実力が物を言う」
かつて静たちも経験した尋問室内にて。20代後半の金髪の青年アイネが答えた。
「つまりは、俺達のような平民上がりでも実力次第で高給取りになれるんだ」
30代前半の浅黒い肌の青年エインが、付け加えるように言った。
「では、確信について伺います。アムンジェスト=マーダーの所在について、ですが…」
アイネとエイン両名は目線を合わせた。
「…言えるわけがない」
アイネが静かに口を開いた。その表情は固く、凍りついている。
「…つまり、生きている、と?」
「それは…!」
俺の言葉に二人が同じ反応を見せた。そして、再び沈黙。
「…ラウレスランド?」
「…知らない」
そう言ったエインは俯いたままで、回答を頑なに拒んだ。
「…ムーア?」
「……」
「ダス・ヴェスタ?」
二人の肩が僅かに震えた。
「…知らないと言っている」
「ようやく口を開いてくれましたね、アイネさん」
「アイネに罪はない、俺が…!?」
「俺が、何なんです?…エインさん」
「なんでも… ない」
「俺はですね、お二人に罪を着せようとは思いません。むしろ、あのバケモノから保護したいとも思っています」
「一体、どうやって?」
エインはその表情を変えた。必死の形相だった。
「…質問を変えましょう。ダス・ヴェスタには何があるんですか?」
「…知らない、…のか?」
「馬鹿な、グランデ・ダバージスを落とした者がこの場所の重要性を知らないはずが…」
「グランデ・ダバージス…?」
アイネの言葉を受けて、俺は考えを巡らせた。先の戦闘ではクフール=アルターマンがいて、えらく難儀して…。
…そうだ、彼の地はドラグナーを発掘していた場所ではなかったか?
「…ドラグナーの発掘抗…」
「…そうだ。グランデ・ダバージスはこの山地のちょうど反対側にある」
「アイネ…」
エインはアイネの言葉を引き継いだ。
「ダス・ヴェスタはナフバシュタート防衛の要。オースティンもムーアも、ワサフォートもラーサスもデールタも」
「?」
「…このナフバシュタートの要衝となる砦の名前だ」
咄嗟にアイネが注釈を入れてくる。
「…そう。これらの要衝は全て、ここダス・ヴェスタを守るためにあると言ってもいい」
…そういうことか。ようやく腑に落ちた。
俺はてっきり、単純に、ウィクサー首長国からの脅威を跳ね返すだけのためだとばかり思っていた。それにしてはあまりにも多すぎる砦の数。それも、てっきり俺は州都オリエンアリエッシュを守るためだけだと思っていた。
だが。ドラグナーの発掘抗を守るためだと言うのなら、これら要衝の配置にも納得がいく。
しばらくの沈黙の後、俺はようやく口を開くことができた。
「…つまり、ダス・ヴェスタにいる、と?」
「……先程の件、守ってもらえるのだろうな?」
「件?」
「我々を保護するという意味だ!」
「…どうなんだ? 我々を守ってくれるのかくれないのか!?」
「…守りますよ」
「「…!?」」
「守ってみせますよ、あなた方を」
俺の言葉を受けて、エインとアイネは顔を見合わせた。
「はい。あなた方の騎体を裏切るような真似は決してしません」
俺は立ち上がると、そのまま部屋を後にした。後には呆然とした表情の捕虜たちの姿だけが残った。
先頭を走っていたエイサーが呟いた。それも無理はない。フィーバー達は泥沼の中を、ローラーダッシュで全力走行しているのである。ガタスキーでエッチラオッチラやってる俺達とでは、機動的にも雲泥の差が生じていた。
突然、ガタスキーがなにか堅いものと接触した。そこに乗り上げるとツルツルと滑って全く制御が効かなくなる…。
「…そうか、氷か…!」
そういや連中の足元を見ると、削れてできた轍が痛々しく残っている。
「ピックだ! ライヴ隊はガタスキーから降りて足のピックを使え!」
『-甘いわ…-』
先頭のエイサー騎が派手に転倒した! そう、俺達は氷の上での挙動に慣れていないのだ。当然のように、俺もまたドラグナーで氷の上を動くなんて初体験だった。俺もまた、ピックを上手く使えずに転倒してしまった。
「クソッ!」
俺は地面にパイルバンカーを撃ち込んだ。そのまま足のピックも突き立てて、ようやく氷上で止まる。
「ライヴ隊全騎、パイルバンカーを使え! とにかく止まることが先決だ。シェスター隊、頼む!」
『-了解!-』
先頭を滑るエイサー騎の眼前にスピアが突き立った! そのスピアを掴み、エイサー騎は辛うじて敵によって串刺しにならずにすんだ。静騎、エーズ騎、タレント騎は後方でマゴマゴしている。
「エイサー、下がれ!一旦体勢をもとに戻せ!」
『-エイサー、了解!-』
入れ替わりに、俺は地面にピックを突き立てながら前進した。ここから見える敵さんの騎体番号は…SS-09と11。そして、カイアヌムだ。俺は足のピックを頼りに、一歩、一歩小刻みに進んだ。そしてゆっくりと大剣を抜き、正眼に構えた。
「ヘヘ…ッ、今日はちょっと手加減は保証できないんで、そこんトコよろしくな…」
『-まともに動けないのでは、戦いにもなるまい-』
『-甘く見られたもんだな-』
敵の声が聞こえる。勿論、コッチの声も相手には丸聞こえなのだが。俺は重心を丹田に据え、大きく深呼吸をした。
『-御免!-』
SS-11が上段から突進してきた! そのまま大きく剣を振り下ろされる。次の瞬間、俺は刀身の"区"でその剣を受け流し、胴を薙ぐ! 一瞬の出来事だった。敵ファハンSS-11は哀れにも腰で真っ二つとなった。
『-な、なん… だと?…-』
「…擦り上げ胴… と言ってだな…、分かんなきゃまぁいいや…」
『-主様! なんと頼もしい…!-』
『-俺… だって…!-』
「エイサー! 迂闊だぞ!」
先程危険を脱したばかりのエイサー騎が両足のピックを十分に効かせ、立ち上がった。そしてSS-09に中段から横に薙いで仕掛ける。だが、その剣は下から弾かれ袈裟懸けに斬られようとしていた。刹那、上空からスピアがSS-09を串刺しにする。シェスター隊のコリービ=フリーゲンだった。
「コリービ、いい仕事だ!」
俺は安堵の思いで感謝を述べた。
『-なに、上からはガラ空きだったんですよ!-』
コリービ騎は上空からエイサー騎をピックアップすると、後方へと移動してくれた。では、残りのフィーバー騎の始末といきましょうか?
俺はピックを立てたまま、軽くダッシュローラーを回す。…ダメだ。ツルツルと滑って、全く役に立たない。ならば…。
ピックを軽く外して、やや引っかかり気味に地面に突き立てる。そして、摺足。…うん、これならいい感じで進める。若干滑りやすくはあるが、ワックスがよく効いた舞台での演舞はよくあることだ。俺は大地にしっかりと足をつけ、スス…と重心を置いた丹田から進むように間合いを詰めていく。フィーバー騎”カイアヌム”はダックピストル状のハンディ・カノンを一発、地面に打ち込んだ。ぬかるみ始めていた地面が、再び凍りついていく。
『-…さぁて…-』
口を開いたのはフィーバーだった。
『-思い切り楽しもうじゃないか…-』
「魅力的な誘い文句だねぇ…」
『-抜かせ!-』
「もう一度言うぜ、ライヴ=オフウェイだ」
『-第13騎士団:3番隊隊長、フィーバー=ハンディン…-』
言うが早いか、カイアヌムの左回し蹴りが飛んできた。俺は半身前進して左手の甲で軽く上に弾くと、腰の大剣を抜きざまに横に薙いだ。フィーバーはそれを半身を回転させてかわすと、今度は右の後ろまわし蹴りを噛ましてきた。ダッシュローラーが回転していた。スパイクが付いていた。高速回転するスパイクが俺に襲い掛かってくる。俺は剣を握っていた右手の甲で上へ流し、体を捻って右から胴を薙いだ。フィーバーはそれを半身でかわし、信地旋回を繰り返して間合いを取った。
「そういうことかよ…。それで氷なんだ…」
『-勝てばよかろう、なのだろう?-』
「確かに、そう言った記憶はあるけどな!」
俺は足のピックを入れ、地面を蹴った。そしてピックを正位置に戻すと、足元をわざと滑らせて一気に間合いを詰め大剣を振り抜いた。氷の上でも自由の効くスパイク付きのカイアヌムは俺のターンをアッサリとかわす。俺はそれでも構わず。同じ動作を繰り返しては大剣を振り抜いた。
『-馬鹿の一つ覚えでもあるまいに…!-』
「それもそうだ」
俺はじわじわとブースターをふかしつつ、やはり同じように間合いを詰めては大振りする。
『-手も無く足掻き出したか?-』
「足掻いてみて、初めて見える道もあるってね!」
大振りする! …それがヒットし始めた。
『-…だから、どうした…?-』
カイアヌムの挙動が鈍り始めていた。
「どうだい? 思い通りに体を動かせないってのは?」
『-なん… …だと…!?-』
そうだった。カイアヌムの足元のスパイクは虚しく粘土質の土を掻き、ズブズブと沈んでいく。
「んで、こういう事さ!」
俺はカイアヌムのダック・ハンディ・カノンを斬り潰した。間合いが近ければ、よりスタックしていないほうが有利になる。
『-貴様、どうして挙動が変化しない…?-』
「ああ、変化はしてるよ。ただし、お前よかマシって程度だけどな」
俺はフルブーストで空中に飛び上がった。フィーバーもまた、飛び上がろうとした。しかし…!?
『-足元が…!?-』
「そのワンテンポが命取りってね!」
上空からシェスター隊によるスピアの雨が振ってきた。それはフィーバー騎の挙動を狭めるように大地へと突き立った。俺は真っ向からカイアヌムの兜を割る! その大剣はコクピットへと大きく吸い込まれていった。
「…悪ぃ… お前は強すぎた。手加減できないほどにな」
コクピット内がフィーバーの身体から吹き出した血に染まる。俺はできるだけ目を背けないように、目の前の事実を受け止めようと試みた。そうは言っても意識してからというもの、そうそう慣れるものではない。寸止めに失敗した分は、せめてとどめを刺してやる義務が、俺にはあった。
『-この…、小僧が… かはッ!!-』
「…すまねぇ…」
火花がカイアヌムの全身から飛び散った。俺は大剣を一気に引き抜くと、哀れにもカイアヌムはその騎体をふたつに引き裂かれドウ… と倒れ込んだ。
同じ頃、SS-09と静たちが交戦中だった。いずれも足回りに気を取られて難儀している。俺は助け舟を出した。
「SS-09に告ぐ。アンタの大将は今討ち取った。大人しく投降せよ。さもなくばその生命、俺が奪いに行くが…?」
『-…捕虜としての身分は保証してくれるんだろうな-』
「当然だ。アンタの仲間のSS-11も無事なはずだよ。貴君ら二人には聞きたいことがある。さ、降参してくれ。それがお互いのための、たったひとつの冴えたやり方だ」
『-…分かった。貴君のすすめに従い、投降する…-』
◇ ◇ ◇ ◇
「SSナンバーって事は、アイネ=ハインガーヴさん、エイン=フィリーファさん両名は高級士官ですよね?」
「高級士官かどうかは知らない。我が第13騎士団は実力が物を言う」
かつて静たちも経験した尋問室内にて。20代後半の金髪の青年アイネが答えた。
「つまりは、俺達のような平民上がりでも実力次第で高給取りになれるんだ」
30代前半の浅黒い肌の青年エインが、付け加えるように言った。
「では、確信について伺います。アムンジェスト=マーダーの所在について、ですが…」
アイネとエイン両名は目線を合わせた。
「…言えるわけがない」
アイネが静かに口を開いた。その表情は固く、凍りついている。
「…つまり、生きている、と?」
「それは…!」
俺の言葉に二人が同じ反応を見せた。そして、再び沈黙。
「…ラウレスランド?」
「…知らない」
そう言ったエインは俯いたままで、回答を頑なに拒んだ。
「…ムーア?」
「……」
「ダス・ヴェスタ?」
二人の肩が僅かに震えた。
「…知らないと言っている」
「ようやく口を開いてくれましたね、アイネさん」
「アイネに罪はない、俺が…!?」
「俺が、何なんです?…エインさん」
「なんでも… ない」
「俺はですね、お二人に罪を着せようとは思いません。むしろ、あのバケモノから保護したいとも思っています」
「一体、どうやって?」
エインはその表情を変えた。必死の形相だった。
「…質問を変えましょう。ダス・ヴェスタには何があるんですか?」
「…知らない、…のか?」
「馬鹿な、グランデ・ダバージスを落とした者がこの場所の重要性を知らないはずが…」
「グランデ・ダバージス…?」
アイネの言葉を受けて、俺は考えを巡らせた。先の戦闘ではクフール=アルターマンがいて、えらく難儀して…。
…そうだ、彼の地はドラグナーを発掘していた場所ではなかったか?
「…ドラグナーの発掘抗…」
「…そうだ。グランデ・ダバージスはこの山地のちょうど反対側にある」
「アイネ…」
エインはアイネの言葉を引き継いだ。
「ダス・ヴェスタはナフバシュタート防衛の要。オースティンもムーアも、ワサフォートもラーサスもデールタも」
「?」
「…このナフバシュタートの要衝となる砦の名前だ」
咄嗟にアイネが注釈を入れてくる。
「…そう。これらの要衝は全て、ここダス・ヴェスタを守るためにあると言ってもいい」
…そういうことか。ようやく腑に落ちた。
俺はてっきり、単純に、ウィクサー首長国からの脅威を跳ね返すだけのためだとばかり思っていた。それにしてはあまりにも多すぎる砦の数。それも、てっきり俺は州都オリエンアリエッシュを守るためだけだと思っていた。
だが。ドラグナーの発掘抗を守るためだと言うのなら、これら要衝の配置にも納得がいく。
しばらくの沈黙の後、俺はようやく口を開くことができた。
「…つまり、ダス・ヴェスタにいる、と?」
「……先程の件、守ってもらえるのだろうな?」
「件?」
「我々を保護するという意味だ!」
「…どうなんだ? 我々を守ってくれるのかくれないのか!?」
「…守りますよ」
「「…!?」」
「守ってみせますよ、あなた方を」
俺の言葉を受けて、エインとアイネは顔を見合わせた。
「はい。あなた方の騎体を裏切るような真似は決してしません」
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