蒼き炎の神鋼機兵(ドラグナー)2nd Season

しかのこうへい

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第一章

マーダーの影-04

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「…という訳です。敵は正面からの突破ができないように塹壕にいる兵士を動かすことでドラグナーを迎え撃つという作戦に出てきています。ですから、俺達はそれを逆手に取ろうと思います」
「と、言うと?」
アジ・ダハーカのブリーフィングルームにて。真っ先に挙手したのは真紅の流星ロータ・メティオ小隊のシュネル=ツェストだった。軽くウェーヴの掛かった赤髪が弾み、そのブラウンがかった瞳は好奇心も旺盛に輝いている。

「皆実際に体験してきたと思うけれど、あの網の目のように張り巡らされた塹壕には手を焼いていると思う。実際にシェスター隊のスカイアウフで突破しようとしても、塹壕からの狙い撃ちだ。とにかく、あの弾幕を黙らせなくては話にならない」
「だから、結果として側面から攻撃するということに落ち着いたのでは?」
俺の言葉を受けて発言したのは、シャッハ=シューター。シューターの一群、アギル隊の一員である。

「でも、その割には前進してませんよね」
嫌味たっぷりに言葉を発したのは、静の部隊にいるエーズ=ロイターだった。あえて言うが、元帝国軍第13騎士団親衛隊の連中… エーズ、エイサー、タレントの三名は皆、俗に言う美少年である。誰の趣味かは知らないが、三人揃うとちょっとしたアイドルグループが結成できそうだ。この三人は全員静を溺愛しており、金魚の糞のようにいつも静の側につきまとっている。故に、静が特別扱いしている『俺』のことを、プライベート上に限り、敵視しているのだ。

「まぁそう言わないで、エーズ。現状、こちらの損害は極めて軽微、人的被害も無いのだ。主様のことを悪く言わないで欲しい」
にこやかな笑顔でエーズを制したのは静だった。亜麻色の長い髪をゆったりと流し、その黒い瞳を細めながら、
「ですわよね」
と、議事進行を促した。瞳の色を除いたとはいえ、リーヴァとこれほどそっくりな顔でも、こうも雰囲気が異なると、やはり別人なんだなと改めて気付かされる。

「ありがとう、静。で、だ。明日から少しやり方を変えようと思います。条件は雨。幸運なことに、今この地方は梅雨に当たる。次の雨が降るまでは側面からちょっかいを書けるという作戦を継続します。で、雨が降った時には…」
ゴクリ…。
誰もが息を呑む音が聞こえた。
「その時の雨の量にもよりますが、正面突破を図ります」

◇     ◇     ◇     ◇

クーリッヒ・ウー・ヴァンの物語を知るものは幸いである。心、豊かであろうから。それ故に、伝えよう。歴戦の勇者達の物語を…。

「皆さん、こんばんは。司会進行を努めます、ブレンドフィア=メンションです。番組コメンテーターのアンスタフト教授もミンダーハイト教授もどちらもが思わず興奮する彼の地、ダス・ヴェスタでの戦いが中盤となってきました。ご機嫌はいかがですか?

さて。ダス・ヴェスタ戦です。この土地に遺されている塹壕の跡には誰もが圧感されるでしょう。このクーリッヒ・ウー・ヴァンの時代… 塹壕を掘らねばならないほどの激戦が行われていたとされますが、本当のところはどうだったのでしょうか?」

歴史家:シーマ=ウーバーガングによって編纂された史書『ゲシュヒテ』には、このように描かれている。

『迂闊にも無断で立ち入ろうものなら、数多あまたの弾丸が行き交い、誰ひとりとしてこの地を横断できなかった。許可を受けた者だけが正規のルートを通ってこの地を訪れることができた』

ここで、疑問が出てくるのだ。この文献にはハッキリと『弾丸』の記述がある。私達の知っている『弾丸』とは、中世になってマスケット銃が発明されて以降という認識が常識であった。だが、今まで誰もがスルーしてきた通り、クーリッヒ・ウー・ヴァンの物語には様々なスーパーウエポンが登場する。ライフルや拳銃の類から、原子・生物・科学兵器とカテゴリー分けも可能なほどに、非常に多岐にわたっています。果たして、これらは事実なのだろうか?

「それが、どうやら事実だったようなのです」

そう話すのは、アンスタフト=ヒストリカ教授だ。

「今回もダス・ヴェスタの3号遺跡から失礼します。この地では、不思議な事に遺体らしい遺体はそれほど発見されてはおりません。このことは、この場所が戦略上の塹壕としてキチンと機能していたということが見て取れます。では、この地から発見された最も古い遺体はどうだったのか? 実は、銃創と思しき傷を受けた遺体が複数、出土しているのです。ですが不思議なことに、それを証拠付ける弾丸そのものが出てこない。実に不思議な事です。これほどのミステリーは匆々ありません。故に、私たちは今も発掘を続けているのです」

「弾丸そのものが特殊なものだったとする説も、実は存在するのです」

そのように語るのは、ミンダーハイト=ギリアートン教授だ。

「文献:『ゲシュヒテ』によると、その弾頭には神鋼石ドラグーン… 伝説の鉱石が用いられていたと書かれています。深い緑に輝くその鉱石は人の精神力を喰い、あたかも魔法のような力を発揮したのだと。現代において、そのような鉱石は、少なくとも私達は知る由もありません。皆さんが御存知の通り、クーリッヒ・ウー・ヴァンの物語が超古代の出来事であったその当時ですら、更に古い時代の遺物であったとされているのです。それらは果たして、何処へ行ってしまったというのでしょう? 一説には、クーリッヒ・ウー・ヴァンの時代の最後を看取った人物… ライヴ=オフウェイ少年が全てを知っているのかもしれません」

◇     ◇     ◇     ◇

「…できてますよ!」
アジ・ダハーカのカーゴにて。メイーダは満面のドヤ顔で俺の姿を見つけると、その足取りも軽く走り寄ってきた。
「ほぉ… これが…」
エッセンはその大型の機械を見上げると、ため息混じりに呟いた。俺はその機会の側に近寄ると、その場にいた全員… 作戦に参加する全員を前に宣言した。
「そうです。これがアジ・ダハーカの原動力を電力に変え、昇圧させるブースターです」

「で、その電力とやらで何ができるんですか?」
「良い質問だ、コリービ。流石最速の男だね。…さて、この世界にも電気というものがあります。自然現象にもある稲妻がまさにそれですね。もし、この稲妻が人間に当たったらどうなるでしょう?」
「真っ黒焦げになりますわね」
「そうだね、静。これは人体が稲妻の大電力に耐えられず燃えてしまうという現象です」
「ライヴ君、まさか…!?」
「まだ話は続いてるよ、シェスター」
俺は笑顔で返すと、シェスターは少しホッとしたような表情を見せた。
「ですが、人が失神する程度の電圧であれば非殺傷兵器として使用可能です」

「という事は…?」
「フラウ、結論を急がないで」
俺が笑顔で声をかけると、少し、嬉しそうに俯いてしまった。
「多分、フラウが考えている通りだよ。で、この梅雨です。雨水はその内容物故に通電性が高い。ですから、塹壕の中の兵士を一気に感電させ、無効化させようというハラです」

「で、敵兵を無効化させた後にこのアジ・ダハーカで塹壕地帯を突破、ドラグナーで陣地を叩く。…そういう事ですね」
と、念を押すようにエッセン。
「そうです。敵ドラグナーは塹壕を挟んで両翼に陣を張っていますから、それを逆手に取ります。その為には、陽動となるドラグナー隊を編成、両翼を引きつけてもらわなくてはなりません」

「「その役目、私が…」」
静とフラウの声が重なった。向き合った両名の間で、なんだか火花が散ってるぞ?
「ホント、朴念仁だねぇ…」
とアギルが苦笑い。
「今必要なのは!」
俺はアギルの言葉を制すると、作戦についての話を進めた。
「両名が志願してもらえるなら、それに越したことはありません。ただし、直接戦闘は避けるように厳命します。いいですね?」
「敵は叩ける内に絶てと、かのマイコ=エルプス=ラノーも言っている」
フラウが珍しく主張している。
「誰だ、それ?」
「艦長、遠い昔の著名な軍師ですよ」
エッセンが俺の耳元で囁いた。

「いいんだ。完全殲滅よりも、できれば味方に引き入れたい。勿論、人選はするけどね」
俺は全員に、改めて宣言した。
「今一度言う。これは敵の完全殲滅を意図したものではない。可能な限り、敵味方を問わず人命優先とする。例え味方にならずとも、その戦いの様子は敵に知れ渡るだろう。こういう場所での善戦が世に知られることで、必要のない戦闘を避けることにもつながるんだ。このチャンスを有効にいかせ。いいな!」
「「「応!」」」

◇     ◇     ◇     ◇

「艦長家業も板についてきたかい?」
アジ・ダハーカの上部甲板にて。カフィを持ったアギルがやって来た。難攻している塹壕が、遥か向こうに見える。
「まだまだだって。皆の命を背負ってるんだ。今でもヒヤヒヤしているよ」
「まぁ、あまり気負うなって。皆の命は各自の責任下で何とかするもんだ」
「その大前提として、善き采配ってのがあるんだけどな」
俺はアギルからカフィを受け取ると、そのカップにそっと口をつけた。
「雨、どれ位降りゃ作戦に使えるんだ?」
「集中的に降れば、言うこと無いんですがね」
「確かに。でも例年に比べて今年はシトシト雨ばっかだぜ」
「チャンス… か」
俺は空を見上げた。分厚い雲で夕日の明かりも通らないほど薄暗かった。

「なぁ、アギル」
「なんだ?」
「以前さ。連中、氷の魔弾を使ってたよな?」
「…そうだな。んで?」
「それ、ウチにもあるよな?」
「いや…、そういうのは、お前のほうが把握しているはずだぜ?」
「それもそうか。なら…」
俺は間近にあった伝声管の蓋を開けた。
「エッセン大尉、フリンスターフ号と連絡を取ってもらえませんか?」

◇     ◇     ◇     ◇

「毎度あり~」
連絡を出した翌日早朝、うやうやしく頭を下げたヌッツに俺はもうひとつ、以前から頼んでいたことがあった。
「例の情報モノ、わかりましたか?」
「ん~、まだなんともいえませんな」
「…そうですか」
「ただ、この州で商いをしてますとイロイロな話も飛び込んできます。その中にはこの様な話も…」
そう言いながら、ヌッツはそっとバンバスの書簡を手渡してくれた。
「…ありがとうございます。これは…?」
「なぁに、いつも由なにしてくださっているアナタへのサービスと思ってください。きっと役に立つだろうことは保証しますよ。で、今度はどのような魔法を見せてくださるんで?」
「それは後のお楽しみということで。きっと楽しい事になりますよ。よかったらご覧になっていきますか?」
「ほほぅ…。一介の商人ですが、そのような大事に参加させていただけるんで?」
「ええ、むしろ観ていただきたいんですよ。そして、世間に広めてもらいたい」

俺はヌッツを第一甲板上へと促した。
「ほぅ…。コレは?」
「護摩壇です。見たことないでしょ?」
「ゴマ…、一体何なんです、こりゃ?」
「俺の世界の、お祈りの道具ですよ。きっと、効果てきめんです!」
「お祈りの道具ねぇ…」
訝しげなヌッツの視線を背に、俺はシェスター隊に発艦の準備を進めてもらっていた。
「うん、わかったよ。ライヴ君の煙が見え始めたら、作戦開始だね!」
「頼むよ、シェスター。しっかりと補佐してくれよ、コリービ。ラウト、何が起きても落ち着いてな。みんな、作戦は君達にかかっている。くれぐれも命を粗末にするんじゃないぜっ!」
「「「了解!」」」

三人はそれぞれの乗騎に乗り込むと、次々と発艦していった。
「さて。敵さんはどんな様子? 大尉」
「はい。何が始まるのか、興味津々といったところでしょうか」
「さぁて…。それじゃ、パーティを始めようか…」
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