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20.一年越しの邂逅そして・・・
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あの知らせから1ヶ月くらい経ったある日、ご主人様は、僕とアガタさんもマレシャル家への訪問に同伴させてくれた。素晴らしい秋晴れの天気だった。
まさか僕もごお嬢様の元へ行けるとは思ってもみなかったので、とても嬉しかった。その日は僕が車を運転し、マレシャル家へ向かった。
僕たちが屋敷の門に着くと、待ち構えていたかのように使用人が門を開け、中へ通してくれた。ふと玄関の方へ目をやると、そこにはお嬢様のお姿があった。妊娠と出産を経て少しお疲れの様子だったが、女性としてさらに成熟された美しさが僕を魅了した。
お嬢様の胸には、白いおくるみに包まれたお子の姿が。
「おお、ミエル!孫の姿を見せておくれ」
ご主人様の言葉を受け、お嬢様はお子を抱き直し、そのお姿がよく見えるようにしてくれた。
「・・・!」
その瞬間、僕は心臓が裏返るような心地になった。お嬢様のお子様の髪色は、僕と同じ黒髪だった。金髪のセルジュとも、栗色のお嬢様とも、似ても似つかない。
しかし、誰も不審がる者はいないようだった。
「おお、黒い髪!私の父と同じだ」
ご主人様の言葉に、僕はほっと胸を撫で下ろした。
「隔世遺伝というやつかな。顔はミエルに似て可愛いじゃないか」
ご主人様はお嬢様からお孫さんを受け取り、嬉しそうに抱いている。ノア様、アルマ様、アガタさんもお孫さんに近寄り、笑顔で見ている。
「久しぶりね、ジュール」
お嬢様は僕のそばにやってきて、言葉をかけてきた。少女のようないたずらっぽい笑顔を浮かべている。
「・・・わかっているわよね、ジュール。あれはあなたの・・・」
囁くような小声。赤ちゃんに夢中になっているご主人様たちには、きっとまったく聞こえていないだろう。
僕はミエル様の言葉で、すべてを理解した。
これから、あの子にどんな未来が待っているのだろう。そして僕は、この美しい母子のために、何ができるだろう。
からりと晴れた秋晴れの空の下、僕はそんな自問自答を繰り返していた。
【完】
まさか僕もごお嬢様の元へ行けるとは思ってもみなかったので、とても嬉しかった。その日は僕が車を運転し、マレシャル家へ向かった。
僕たちが屋敷の門に着くと、待ち構えていたかのように使用人が門を開け、中へ通してくれた。ふと玄関の方へ目をやると、そこにはお嬢様のお姿があった。妊娠と出産を経て少しお疲れの様子だったが、女性としてさらに成熟された美しさが僕を魅了した。
お嬢様の胸には、白いおくるみに包まれたお子の姿が。
「おお、ミエル!孫の姿を見せておくれ」
ご主人様の言葉を受け、お嬢様はお子を抱き直し、そのお姿がよく見えるようにしてくれた。
「・・・!」
その瞬間、僕は心臓が裏返るような心地になった。お嬢様のお子様の髪色は、僕と同じ黒髪だった。金髪のセルジュとも、栗色のお嬢様とも、似ても似つかない。
しかし、誰も不審がる者はいないようだった。
「おお、黒い髪!私の父と同じだ」
ご主人様の言葉に、僕はほっと胸を撫で下ろした。
「隔世遺伝というやつかな。顔はミエルに似て可愛いじゃないか」
ご主人様はお嬢様からお孫さんを受け取り、嬉しそうに抱いている。ノア様、アルマ様、アガタさんもお孫さんに近寄り、笑顔で見ている。
「久しぶりね、ジュール」
お嬢様は僕のそばにやってきて、言葉をかけてきた。少女のようないたずらっぽい笑顔を浮かべている。
「・・・わかっているわよね、ジュール。あれはあなたの・・・」
囁くような小声。赤ちゃんに夢中になっているご主人様たちには、きっとまったく聞こえていないだろう。
僕はミエル様の言葉で、すべてを理解した。
これから、あの子にどんな未来が待っているのだろう。そして僕は、この美しい母子のために、何ができるだろう。
からりと晴れた秋晴れの空の下、僕はそんな自問自答を繰り返していた。
【完】
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