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2人目 井上さん
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「こんにちは」
「どうも、お邪魔します」
「今日はどうされました、井上さん」
井上ひかり、23歳。
修道服に身を包む彼女は、明るく元気な顔をしている。
職業柄苦手である。
こういうタイプの人間は。
「今日は、先生の願いを叶えにきました」
「私の願い、ですか」
「はい。なんでも構いませんよ」
願いを叶える。
無条件に叶える。
天使か悪魔でないとしたら、よっぽど頭がおかしい。
「何でもいいのですか、例えば今貴方を殺したいとか」
「そ、それは困りますね」
死にたくはないようだ。
「失礼ですが、何故願いを叶えるのですか」
「それが私の仕事なので」
「どういったメカニズムで叶うのでしょうか」
「願いは叶うものなので、それを早める力が私にはあるんです」
面白い。
とても興味深い。
「参考までに、これまで何人の人の願いを叶えて来たのですか」
「ええと、100人以上ですかね。私あまり成績が良い方ではないので」
「成績、他にも同じような仕事をしている人が」
「いますよ」
知らなかった。
この世は理不尽だとは思っていたが、ズルをして願いを叶えている人間がいるからだったのか。
前言撤回、この存在はひどく目障りだ。
「これから、井上さんの世界を破壊します」
「ええと、殺すのは辞めてほしいのですが」
「殺しませんよ、私の願いを聞いてくれますか」
「はい、どうぞ」
「もうこれ以上、誰の願いも叶えないでください」
井上ひかりは、戸惑っている。
おおよそ、このような願いは想定していなかったのだろう。
「でも、それだと私仕事が出来ません」
「井上さんの事など知ったことではありません。出来ないんですか。100人の願いを叶えているのに、私の願いは叶えてくれないんですか」
「出来ます」
そう小さく呟くと、彼女は手を合わせ空を仰ぐ。
私の目には何も見えなかったが、きっと世界で何かが変化したのだろう。
「完了しました。もう、私が誰かの願いを叶える事はありません」
「ありがとうございます」
「どうしてこの願いにしたのですか」
「誰かが幸せになることが、不幸になる人間もいるんですよ」
まだ理解し足りない顔をしながら、井上ひかりは部屋を去っていった。
そして、また入って来た。
忙しい人だ。
「先生、あの、これは私の願いなんですけど」
「どうぞ。私は今気分がいいので、大抵の願いなら聞いてあげますよ」
「私をここで働かせてくれませんか?」
井上ひかり、23歳。
明るく元気な女の子。
私が人生でなるべく避けて来たタイプの者に、私が命令できるようになる。
悪くないな。
来訪者の思考を探るのに、別の視点もあった方がいい。
「時給は1200円、残業は一切なし。平日は9時から18時まで。昇給は年に2回、ボーナスは夏と冬だ」
「ということは」
「これからよろしく、井上ひかりさん」
「どうも、お邪魔します」
「今日はどうされました、井上さん」
井上ひかり、23歳。
修道服に身を包む彼女は、明るく元気な顔をしている。
職業柄苦手である。
こういうタイプの人間は。
「今日は、先生の願いを叶えにきました」
「私の願い、ですか」
「はい。なんでも構いませんよ」
願いを叶える。
無条件に叶える。
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「何でもいいのですか、例えば今貴方を殺したいとか」
「そ、それは困りますね」
死にたくはないようだ。
「失礼ですが、何故願いを叶えるのですか」
「それが私の仕事なので」
「どういったメカニズムで叶うのでしょうか」
「願いは叶うものなので、それを早める力が私にはあるんです」
面白い。
とても興味深い。
「参考までに、これまで何人の人の願いを叶えて来たのですか」
「ええと、100人以上ですかね。私あまり成績が良い方ではないので」
「成績、他にも同じような仕事をしている人が」
「いますよ」
知らなかった。
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「ええと、殺すのは辞めてほしいのですが」
「殺しませんよ、私の願いを聞いてくれますか」
「はい、どうぞ」
「もうこれ以上、誰の願いも叶えないでください」
井上ひかりは、戸惑っている。
おおよそ、このような願いは想定していなかったのだろう。
「でも、それだと私仕事が出来ません」
「井上さんの事など知ったことではありません。出来ないんですか。100人の願いを叶えているのに、私の願いは叶えてくれないんですか」
「出来ます」
そう小さく呟くと、彼女は手を合わせ空を仰ぐ。
私の目には何も見えなかったが、きっと世界で何かが変化したのだろう。
「完了しました。もう、私が誰かの願いを叶える事はありません」
「ありがとうございます」
「どうしてこの願いにしたのですか」
「誰かが幸せになることが、不幸になる人間もいるんですよ」
まだ理解し足りない顔をしながら、井上ひかりは部屋を去っていった。
そして、また入って来た。
忙しい人だ。
「先生、あの、これは私の願いなんですけど」
「どうぞ。私は今気分がいいので、大抵の願いなら聞いてあげますよ」
「私をここで働かせてくれませんか?」
井上ひかり、23歳。
明るく元気な女の子。
私が人生でなるべく避けて来たタイプの者に、私が命令できるようになる。
悪くないな。
来訪者の思考を探るのに、別の視点もあった方がいい。
「時給は1200円、残業は一切なし。平日は9時から18時まで。昇給は年に2回、ボーナスは夏と冬だ」
「ということは」
「これからよろしく、井上ひかりさん」
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