殺人オフ

nanao78

文字の大きさ
1 / 1

Off.1 訪問

しおりを挟む

暗い部屋の中、手探りで飲み物を探す。指先に当たった缶はからだった。


「マジかー」


ゲーム内チャットで飲み物を取りに行くと告げ、席を立つ。腰がピキッと悲鳴をあげる。若いのに年老いた身体だ。

一階の冷蔵庫には炭酸水が7本ストックしてある。炭酸は疲労に効くとどこかのテレビで聞いてから、毎日飲んでいる。腰は良くなってはいないが。


「毎日遅くまでゲーム、お疲れ様です」


リビングには見知らぬ男がくつろいでいた。


「誰、あんた」
「幹事です。今日ここに来たのは、あなたをオフ会にご招待しようと、思いまして」


無視して冷蔵庫へと向かう。そこで、違和感に気づく。冷蔵庫の扉に、黒い何かが付着していた。心なしか、腐臭が漂っている。


「開けない方がいいですよ」
「どうして?」
「気分が悪くなるからです」


若干胸が熱くなる。鼓動が早くなり、脳の中で「開けるな」と何かが叫んでいる。汗が一滴、顎まで到達した。

落ち着こう。中はいつも通りだ。右手に力を込めた瞬間、男に腕を止められた。


「申し訳ない。やはり開けないでください。臭いが酷いので」


手を振り払い、距離を取る。百歩譲ってリビングで寛いでるのはよしとしよう。けど初対面で腕を掴まれるのは抵抗がある。というか不快だった。


「何、何なのあんたは」
「先ほども言いましたが、幹事です。名前はありません。必要ないですから」
「そういうことじゃなくて」
「ああ、なるほど。そういうことではないですか。申し訳ございません」


深々と頭を下げる幹事。


「あなたの両親を殺害しました。遺体はその冷蔵庫に入っています。ほら、映画で良くあるじゃないですか。あれ、やってみたかったんですよ」


言ってる意味が分からなかった。いや、理解よりも恐怖が先行し、その場に立ち尽くすしかない。


「ニートさん。オフ会に参加しませんか。これは最終通告です。もう冷蔵庫は一杯なので、断られると困るのですが」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...