妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん

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第6話

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 こうなったら、どんなことをしてもこの女を貶めてやる――そんな悪意に支配されたルージュはヴィオレットを指差して、こう喚き散らした。

「この女はね! 自分が娼館に売られると知った途端、とんでもない嘘を吐いたんですのよ! 信じられないことに、私と父が男女の関係にあると言いましたの! まったく、品性を疑いますわ! そいつは浅ましい考えしかできない最低女なのです!」

 ヴィオレットは絶句した。真実を元にした発言である分、質が悪い。嘘を吐いているのはルージュだったが、これを聞いた令息達はどう思うだろうか――その時、ブラッドが言った。

「それはどうでしょう? あなたこそ嘘吐きなのではありませんか? もしかしたらヴィオレット様が呪いを受けたというのも、嘘ではないかと僕は思っています」
「はあっ……!? 何を根拠に……――」
「あなたの失礼極まりない言動、そしてヴィオレット様の素晴らしき人柄、これらを見れば一目瞭然です。皆さん、そうでしょう?」

 ブラッドが同意を求めると、令息達は直ちに頷いた。
 それを見たルージュは怒りのあまり茹で蛸のように赤くなって震える。
 そしてついに我慢の限界を迎えた――

「何よ……何なのよッ……! どうせお姉様はいずれ死ぬんですのよッ……? 魔女の剣で傷を負った使用人達は重傷者から順に呪われて死んでいったんですものッ……! 小さい傷を負ったお姉様だってその内、死ぬんですからッ……!」
「え――」

 それを聞いたヴィオレットは目の前が真っ暗になった。死ぬ……? 死んでしまう……? 剣の呪いで……? そんな言葉が頭の中を巡り、体中が冷えていった。そんな彼女の肩を抱いていたブラッドがルージュを睨み、問い質す。

「それは本当ですか……!? 伯爵家でそんな騒ぎはなかったはずです……!」
「お父様が隠していたのですわ! それが知れたら、家の評判は下がりますもの! でももうそんなこと、どうでもいいですわ! その女は剣の呪いで死ぬんですの! あっはははは――」

 高笑いを響かせて、ルージュは男子寮を後にした。取り残されたヴィオレットと令息達は茫然とした。今の発言は苦し紛れのものだったのだろうか、いや、それは調べてみないと分からないことだ。令息達は即座に従者に命じて、ルージュの発言の裏を取るよう使いを出させた。

「私は……死ぬのでしょうか……?」

 ヴィオレットのその呟きには絶望が含まれており、痛々しい。
 令息達は彼女に駆け寄ると、こう言って励ました。

「大丈夫だよ、ヴィオレット。まだ本当と決まった訳じゃない」
「そうだよ、悲しまないで。俺達が必ず君のことを助けるよ」
「ああ、安心しろ。本当だとしても、死は回避させる」
「そうだぞ! 気を大きく持て!」

 そんな言葉の中、ブラッドだけがひとり無言で立ち尽くしていた。
 そして翌日――彼は何も言わないまま男子寮から消えてしまった。



。・゚・。。・゚・。。・゚・。。・゚・。・゚・。。・゚・。



 一ヶ月後――
 ルージュの発言は紛れもない事実だった。ヴィオレットの呪いは悪化し、寮母を続けられなくなっていた。そのため治療院へ入り、苦しみに耐える日々を送る。男子寮の令息達は従者に解呪の方法を探らせたが、まるで手掛かりがない。そんな中、ガレッドは王宮から呼び出しを受けて、寮からいなくなってしまった。ヴィオレットはそのことを心配したが、何よりもブラッドの安否が気掛かりだった。どうか無事でいてほしい――そう祈り続けるある日、彼女の元にひとつの書簡が届いた。

「これは……王宮舞踏会の招待状……?」

 なぜこんなものが伯爵家から勘当された自分に届いたのか、ヴィオレットは理解できずにいた。しかし王家からの招待状だ、断れば何が起きるか分からない。彼女は辛い体に鞭打って、舞踏会の準備を始めた。
 その時、扉が開け放たれ、ルージュが入ってきた。

「まあまあ、哀れですわね、お姉様!」
「ル、ルージュ……」

 やつれたヴィオレットを見て、ルージュは嘲笑う。
 そしてつかつかと歩み寄ると、書簡に目をやりがらこう言った。

「その王宮舞踏会、絶対参加して下さいましね?」
「なぜ……? 一体何があるの……?」
「第一王子が不治の病にかかって倒れたのは知っていますわね? そのために王位継承権が王族の血を引くフェシニーク公爵家の息子へ移ったのです。そしてその息子の婚約者とはこの私――舞踏会ではそのお披露目が行われるのですわ!」
「そ、そんな……そんなこと……――」
「うふふ、羨ましいですか? お姉様はもう死ぬばっかりですものね? 最後に私の晴れ姿を目に焼き付けて下さい。それではご機嫌よう」

 そしてルージュは行ってしまった。
 ヴィオレットは物思いに沈みそうになり、首を振った。
 自分はもう死ぬしかない、何を考えても無駄だ――彼女は淡々と準備を続けた。
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