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第8話
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イヴェットは出産までの時間を幸せな気持ちで過ごしていた。
アランは心から信頼できるし、看護人達も優しくて頼りになる。
しかしその看護人エマがなぜか含み笑いをして、こちらを見ていた。
「エマさん、どうしたの……?」
イヴェットは堪らず声をかける。
するとエマは笑ってこう言った。
「実はね、アラン様が事あるごとにイヴェットさんの様子を見に行こうとするから、ついに看護長に怒られたのよ! あの方ったら、あなたのことが心配で心配でしょうがないみたい! もしかしたら気がおありなのかも?」
「まあ……そんなこと……」
その話を聞いて、イヴェットは顔を赤くした。
あんな凄腕治療人で、美形の男性が自分を好きだなんて――いいや、そんなことはないと彼女は首を振る。
アランはひとりの人として、自分に同情しているのだ。
それは恋心などではないはずだ。
「他にも“イヴェット様”って悩まし気に呟いていたとか、カルテをじっと見つめ続けていたとか、いっぱいあるのよ? やっぱり好きなのかしらね?」
「そんなこと……そんなことありませんよ!」
「うふふ、二人の恋の行方が楽しみだわ」
「こ、恋だなんて……!」
イヴェットは照れている自分をごまかすため、窓を開け放った。
外は晴天が続き、乾いた風が入ってきて心地が良い。
中庭では患者と面会人が楽し気に会話をしている。
ふとその中に見慣れた顔があった――
「え……? ジャネット……?」
面会人の中にジャネットがいた。
妹は姉と目が合うと、にっこり微笑んで立ち去った。
あまりの恐ろしさにイヴェットは硬直し、やがて震え始めた。
「あらあら、どうしたの? イヴェットさん?」
エマが声をかけても、イヴェットは蹲ったまま動けない。
やがてジャネットを見かけたと訴えた頃にはもう妹の姿はなかった。
その後、アランは面会人の確認を徹底させることを約束してくれたが、イヴェットの中には恐怖が残り続けたのだった。
アランは心から信頼できるし、看護人達も優しくて頼りになる。
しかしその看護人エマがなぜか含み笑いをして、こちらを見ていた。
「エマさん、どうしたの……?」
イヴェットは堪らず声をかける。
するとエマは笑ってこう言った。
「実はね、アラン様が事あるごとにイヴェットさんの様子を見に行こうとするから、ついに看護長に怒られたのよ! あの方ったら、あなたのことが心配で心配でしょうがないみたい! もしかしたら気がおありなのかも?」
「まあ……そんなこと……」
その話を聞いて、イヴェットは顔を赤くした。
あんな凄腕治療人で、美形の男性が自分を好きだなんて――いいや、そんなことはないと彼女は首を振る。
アランはひとりの人として、自分に同情しているのだ。
それは恋心などではないはずだ。
「他にも“イヴェット様”って悩まし気に呟いていたとか、カルテをじっと見つめ続けていたとか、いっぱいあるのよ? やっぱり好きなのかしらね?」
「そんなこと……そんなことありませんよ!」
「うふふ、二人の恋の行方が楽しみだわ」
「こ、恋だなんて……!」
イヴェットは照れている自分をごまかすため、窓を開け放った。
外は晴天が続き、乾いた風が入ってきて心地が良い。
中庭では患者と面会人が楽し気に会話をしている。
ふとその中に見慣れた顔があった――
「え……? ジャネット……?」
面会人の中にジャネットがいた。
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あまりの恐ろしさにイヴェットは硬直し、やがて震え始めた。
「あらあら、どうしたの? イヴェットさん?」
エマが声をかけても、イヴェットは蹲ったまま動けない。
やがてジャネットを見かけたと訴えた頃にはもう妹の姿はなかった。
その後、アランは面会人の確認を徹底させることを約束してくれたが、イヴェットの中には恐怖が残り続けたのだった。
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