聖人の番である聖女はすでに壊れている~姉を破壊した妹を同じように破壊する~

サイコちゃん

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第8話 偽聖女システィア視点 美貌

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 偽聖女の烙印を押されたシスティアは行く当てもなく彷徨っていた。
 どこへ行っても偽聖女と言われ、石を投げられる。
 もう自分には稼ぐ方法がない。
 このまま朽ち果てるしかないのだろうか――
 システィアはひとつだけ生きていく方法を思い付いた。

「そうだわ……! この美貌を売ればいいのよ……!」

 彼女は着の身着のままで、侯爵家へ向かった。
 ここには女好きで有名な醜い豚のような侯爵がいる。
 そいつにこの身を売れば……愛人になって生きていける。

「侯爵様に会わせて。システィアが来たと言えばいいわ」

 門番の男にそう言うと、彼はシスティアの顔を見てぎょっとする。
 そして屋敷の中に招かれた彼女は酷い屈辱を受けることになる。

「わっはっはっは! その顔で愛人だと! 笑わせる!」
「な、何ですって……私の美貌はこの国一番と言われ……――」
「お前、まさか狂っているのか? おい、さっさとこいつを摘まみ出せ」

 システィアは使用人達に両腕を掴まれ、屋敷の外へ放り出された。
 彼女は屈辱に震えていた――しかし聖魔法が使えない今、復讐の方法はない。

「こうなったら、高級娼婦を目指すわ……! 私なら一番になれる……!」

 そうして彼女は娼館が並ぶ花街へ向かった。
 その中でも最も格式の高い娼館へ自分を売り込みに行く。
 しかし――

「はあっ!? お前みたいな不細工、商売にならないよ!」
「不細工ですって……!? 私のどこがよ……!?」
「アンタ、鏡を見たことがないのかい? ほら!」

 そして渡された鏡を見て、システィアは絶叫した。
 そこにはそばかすだらけで頬骨が異様に高い不細工が映っていたのだ。
 しかも手入れを怠った所為か、髪は油でドロドロ、無駄毛は生え放題である。
 システィアはそれを見て、ようやく気付いた。

 姉から奪った淑女としての美徳、祈りの力と聖魔法、美貌――それらが全部なくなっていることに。

「そんな……あの黒魔術は絶対なのに……! どうして……!」

 忌々しい姉は遠い祖国テュペルにいるはずだ。
 何があったのか確認するには時間がかかる。
 システィアはひとり怒りに震えていた。
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