妹に裏切られた聖女は娼館で競りにかけられてハーレムに迎えられる~あれ? ハーレムの主人って妹が執心してた相手じゃね?~

サイコちゃん

文字の大きさ
2 / 10

第2話

「十五万ゴールド!」
「十六万と五千ゴールド!」
「十六万八千ゴールド!」

 値段はどんどん釣り上がっていく。アナベルは殺気立った男達を見て、わなわなと震えていた。あそこにいるのは聖女反対派の伯爵だ――彼が競りに勝ったら、どんな屈辱を受けるか分からない。あっちで喚いているのはイザベルに求愛して振られた子爵令息だ――彼が競りに勝ったら、きっと暴力を振るわれる。彼女はそんな風に悪い想像をしてはひとり震えるだけだった。

「俺は十八万ゴールドだ! はっはあ!」

 そう叫んだのは鬼畜として有名な侯爵だった。でっぷりと太った肉厚の顔面から恐ろしい眼球が覗いている。彼は女を痛めつけて犯すのが大好きだと噂で聞いたことがある。恐ろしいことに侯爵の相手を務めた女はもう二度と人前に立てない体にされるという――アナベルは目の前が真っ暗になった。

「い、嫌よ……! あの人に買われるのだけは絶対に嫌……――」
「うるさいッ! お前は黙って見ていなさいッ!」
「ああっ!」

 アナベルの背中に大鞭が打ち付けられ、彼女は体を跳ねさせた。すると客達は色めき、立ち上がって歓声を上げた。聖女が痛め付けられている姿を見るのは彼らにとって愉悦でしかない。“もっとやれ!”という最低な野次の中、ただひとり冷静に会場を見詰める美青年がいた。

「……百万ゴールド」

 美青年の声に会場が大きくどよめいた。
 しかし彼はにやりともせずにアナベルを見詰めている。

「ひゃ……百万ゴールドです! 百万ゴールドが出ました!」
「ふざけるなよ! 競りを台無しにする気か!」
「どこのどいつだ! ぶん殴ってやる!」

 美青年に向かって、ひとりの客が立ち上がった。その客は拳を振り上げると、彼に襲いかかっていく。しかし美青年はそれを華麗に躱すと、相手の腹を蹴り飛ばした。蹴りを受けた客は胃の中身をぶちまけて完全に伸びてしまったようだ。美青年はそれを見て、にっこりと微笑んだ。

「大変失礼しました、続きをどうぞ」
「い、いえ……これ以上の値段はないようです……」
「そうですか。それでは百万ゴールド、これで彼女を身請けしたい」
「み、身請けですか……!? それはちょっと……――」
「では、二百万ゴールドでどうです?」
「な、何ですと……!?」

 娼館の主人は女将の耳元で囁き、値段の相談している。強欲の彼はもっと値段を釣り上げられるかどうか、相談しているのだった。アナベルはと言うと、目を見開いたまま謎の美青年を見詰めていた。黒い切れ長の目、真っ白い肌、黒い長髪を真ん中で分け、後ろでひとつに結んでいる。こんな美青年は他に見たことがない――彼は一体何者なのだろうか。

「もう一声……もう一声で身請けさせましょう……」

 娼館の主人が揉み手でそう訴える。
 すると美青年はにやりと口を歪めた。

「では、三百万ゴールド。これ以上は出せません」
「売れました! 聖女は三百万ゴールドで売れました!」

 わあああっと会場が大きく沸き上がった。
 客達は憤然と立ち上がり、娼館の主人と女将へ唾を吐く。
 そんな混乱の中、美青年は素早くステージへ登ると、アナベルを連れ去った。

「さあ、聖女様。波止場に船を待たせてあります。参りましょう」
「船……? もしかして他国へ行くのですか……?」
「その通りです。あなたはある尊きお方のハーレムへ入るのです」
「ハ、ハーレムですって……――?」

 そしてアナベルは小型船に乗せられて、旅立った。
 行き先が隣国のハーレムであることを知らないまま――
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。

藍生蕗
恋愛
 かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。  そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……  偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。 ※ 設定は甘めです ※ 他のサイトにも投稿しています

そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげますよ。私は疲れたので、やめさせてもらいます。

木山楽斗
恋愛
聖女であるシャルリナ・ラーファンは、その激務に嫌気が差していた。 朝早く起きて、日中必死に働いして、夜遅くに眠る。そんな大変な生活に、彼女は耐えられくなっていたのだ。 そんな彼女の元に、フェルムーナ・エルキアードという令嬢が訪ねて来た。彼女は、聖女になりたくて仕方ないらしい。 「そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげると言っているんです」 「なっ……正気ですか?」 「正気ですよ」 最初は懐疑的だったフェルムーナを何とか説得して、シャルリナは無事に聖女をやめることができた。 こうして、自由の身になったシャルリナは、穏やかな生活を謳歌するのだった。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。 ※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。

ゴースト聖女は今日までです〜お父様お義母さま、そして偽聖女の妹様、さようなら。私は魔神の妻になります〜

嘉神かろ
恋愛
 魔神を封じる一族の娘として幸せに暮していたアリシアの生活は、母が死に、継母が妹を産んだことで一変する。  妹は聖女と呼ばれ、もてはやされる一方で、アリシアは周囲に気付かれないよう、妹の影となって魔神の眷属を屠りつづける。  これから先も続くと思われたこの、妹に功績を譲る生活は、魔神の封印を補強する封魔の神儀をきっかけに思いもよらなかった方へ動き出す。

聖女の妹、『灰色女』の私

ルーシャオ
恋愛
オールヴァン公爵家令嬢かつ聖女アリシアを妹に持つ『私』は、魔力を持たない『灰色女(グレイッシュ)』として蔑まれていた。醜聞を避けるため仕方なく出席した妹の就任式から早々に帰宅しようとしたところ、道に座り込む老婆を見つける。その老婆は同じ『灰色女』であり、『私』の運命を変える呪文をつぶやいた。 『私』は次第にマナの流れが見えるようになり、知らなかったことをどんどんと知っていく。そして、聖女へ、オールヴァン公爵家へ、この国へ、差別する人々へ——復讐を決意した。 一方で、なぜか縁談の来なかった『私』と結婚したいという王城騎士団副団長アイメルが現れる。拒否できない結婚だと思っていたが、妙にアイメルは親身になってくれる。一体なぜ?

婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。

三葉 空
恋愛
 ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……

神託を聞けた姉が聖女に選ばれました。私、女神様自体を見ることが出来るんですけど… (21話完結 作成済み)

京月
恋愛
両親がいない私達姉妹。 生きていくために身を粉にして働く妹マリン。 家事を全て妹の私に押し付けて、村の男の子たちと遊ぶ姉シーナ。 ある日、ゼラス教の大司祭様が我が家を訪ねてきて神託が聞けるかと質問してきた。 姉「あ、私聞けた!これから雨が降るって!!」  司祭「雨が降ってきた……!間違いない!彼女こそが聖女だ!!」 妹「…(このふわふわ浮いている女性誰だろう?)」 ※本日を持ちまして完結とさせていただきます。  更新が出来ない日があったり、時間が不定期など様々なご迷惑をおかけいたしましたが、この作品を読んでくださった皆様には感謝しかございません。  ありがとうございました。

聖女の妹によって家を追い出された私が真の聖女でした

天宮有
恋愛
 グーリサ伯爵家から聖女が選ばれることになり、長女の私エステルより妹ザリカの方が優秀だった。  聖女がザリカに決まり、私は家から追い出されてしまう。  その後、追い出された私の元に、他国の王子マグリスがやって来る。  マグリスの話を聞くと私が真の聖女で、これからザリカの力は消えていくようだ。

【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる

みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。 「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。 「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」 「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」 追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。