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第2話
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「何を言っているんだい? それはフルーツタルトだよ?」
そう言ってエドウィンは切り分けられたタルトをアレクシアの前に置く。
すると彼女は皿を両手で持ち上げ、匂いを嗅いでまた首を傾げた。
「フルーツタルトって名前の宝石ですか……? 宝石って良い匂い……」
その発言にエドウィンも妻も困り顔で答える。
「いいや、それは宝石じゃなく、ケーキだよ」
「そうよ、果物が乗ったケーキなのよ?」
そう言うと、ようやくアレクシアは納得したようだった。
両頬を真っ赤に染めながら、そわそわとしている。
「そ、そ、そうなんですか……これがケーキ……。キラキラしてて綺麗だから、宝石なんだと思いました……ごめんなさぃ……」
その発言に夫と妻は顔を見合わせた。もしかして妹のアレクシアは生まれてから一度もケーキを食べたことがない? いや、宝石と区別がつかないということは見たことすらない? 二人の頭の中にそんな考えが浮かび、胸が締め付けられる思いがした。ついに涙を零し始めた妻は立ち上がってアレクシアにタルトを勧める。
「これは甘くて美味しいケーキなのよ……? どうぞ食べてみてね……?」
「はぃ……ありがとうございます……」
そしてアレクシアは指でタルトの先を割って、口に入れた。
次の瞬間、目を丸くしつつパタパタと足を動かした。
「あ、甘いです……! パンより甘い……!」
「そ、そうよ、ケーキはパンより甘いのよ?」
「それにこの真っ赤な塊、食べたことのない味がします……!」
「それは苺って言うのよ? 酸っぱくて美味しいでしょう?」
「はぃ……! 酸っぱいのが美味しいなんて、初めてです……!」
それから妻はアレクシアに夢中になった。
あれこれとお菓子を勧め、反応を見ては涙を浮かべて微笑む。
そんな妹アレクシアを姉テレシアが睨んでいることに誰も気付かなかった。
「まあ、もうお腹一杯になっちゃったの?」
「ごめんなさぃ……」
「いいの、いいのよ? さあ、次は着替えをしましょう?」
そして姉妹は別室へ連れていかれた。そこには豪華なドレスを着せられたトルソーが何個も置かれている。サイズが分からない姉妹のために何種類か用意させたのだった。テレシアはそれを見るなり目の色を変えて騒ぎ立てた。
「きゃあ! 何て素敵なの! これを下さるんですか!?」
「ええ、あなた達のために用意したのよ? 今から着せてあげるわね?」
「やったぁ!」
しかしまたしてもアレクシアは首を傾げて言った。
「この綺麗な飾りものをくれるんですか……? どこに飾ろう……?」
そう言ってエドウィンは切り分けられたタルトをアレクシアの前に置く。
すると彼女は皿を両手で持ち上げ、匂いを嗅いでまた首を傾げた。
「フルーツタルトって名前の宝石ですか……? 宝石って良い匂い……」
その発言にエドウィンも妻も困り顔で答える。
「いいや、それは宝石じゃなく、ケーキだよ」
「そうよ、果物が乗ったケーキなのよ?」
そう言うと、ようやくアレクシアは納得したようだった。
両頬を真っ赤に染めながら、そわそわとしている。
「そ、そ、そうなんですか……これがケーキ……。キラキラしてて綺麗だから、宝石なんだと思いました……ごめんなさぃ……」
その発言に夫と妻は顔を見合わせた。もしかして妹のアレクシアは生まれてから一度もケーキを食べたことがない? いや、宝石と区別がつかないということは見たことすらない? 二人の頭の中にそんな考えが浮かび、胸が締め付けられる思いがした。ついに涙を零し始めた妻は立ち上がってアレクシアにタルトを勧める。
「これは甘くて美味しいケーキなのよ……? どうぞ食べてみてね……?」
「はぃ……ありがとうございます……」
そしてアレクシアは指でタルトの先を割って、口に入れた。
次の瞬間、目を丸くしつつパタパタと足を動かした。
「あ、甘いです……! パンより甘い……!」
「そ、そうよ、ケーキはパンより甘いのよ?」
「それにこの真っ赤な塊、食べたことのない味がします……!」
「それは苺って言うのよ? 酸っぱくて美味しいでしょう?」
「はぃ……! 酸っぱいのが美味しいなんて、初めてです……!」
それから妻はアレクシアに夢中になった。
あれこれとお菓子を勧め、反応を見ては涙を浮かべて微笑む。
そんな妹アレクシアを姉テレシアが睨んでいることに誰も気付かなかった。
「まあ、もうお腹一杯になっちゃったの?」
「ごめんなさぃ……」
「いいの、いいのよ? さあ、次は着替えをしましょう?」
そして姉妹は別室へ連れていかれた。そこには豪華なドレスを着せられたトルソーが何個も置かれている。サイズが分からない姉妹のために何種類か用意させたのだった。テレシアはそれを見るなり目の色を変えて騒ぎ立てた。
「きゃあ! 何て素敵なの! これを下さるんですか!?」
「ええ、あなた達のために用意したのよ? 今から着せてあげるわね?」
「やったぁ!」
しかしまたしてもアレクシアは首を傾げて言った。
「この綺麗な飾りものをくれるんですか……? どこに飾ろう……?」
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