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第4話

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 疑念を深めたエドウィンは一度この二人から、詳しく話を聞こうと思った。姉妹は元々、没落貴族の娘達であり、貧困に喘いでいたところをワレント侯爵に拾われたのである。しかしワレント夫妻はその姉妹に虐待を加え、やがて捕まることになったのだ。姉妹がこの聞き取りで心を傷付けぬよう、優しく聞かねばならない。まずは妹のアレクシアを呼び出して、そっと尋ねる。

「辛いことを思い出させて申し訳ないが、君達は義理の両親に虐められていたの?」
「はぃ……私とテレシ……お姉様は確かに虐待されていました……」
「もし嫌でなければ、その時のことを教えてくれるかな?」
「えっと……ずっと地下室に閉じ込められて、お義父様とお義母様にお仕置きをされていました……。鞭で打たれたり、剃刀で切られたり、火を押し付けられたり、水を浴びせられたり……そんなことを毎日されてて……」
「その虐待は姉のテレシアにも行われたの?」
「それは……――」

 そこでアレクシアは口を噤んだ。
 その後、何を尋ねても答えてくれなくなった。
 エドウィンはアレクシアを下がらせ、今度はテレシアを呼び出した。

「ああ、エドウィン様! 私のことを疑っているんですね!」
「疑っている? どういうことだい?」
「アレクシアだけが虐待されてたって思っているんでしょう! でも私もちゃんと虐待を受けていました! ただし私は美しいので、その美しさを損ねないように体が傷付かない虐待を受けていました!」
「それはどんな虐待か、聞いてもいいかな?」
「水を大量に飲まされたり、寒い部屋や暑い部屋に放置されたり、気を失うほどくすぐられたり、耳元で大きな音を立てられたり……そんな虐待です!」
「なるほど、辛い目にあったんだね」

 エドウィンが同情を示すと、テレシアは彼の膝の上に乗った。
 そして唇を舌で湿らせながら、上目遣いで誘うような仕草をする。

「ね……? だから私に情けを与えて下さい……? エドウィン様……?」
「何を言っているんだい? さあ、膝から降りてくれ!」
「そんなことを言わないで、ベッドへ連れていって下さい……?」
「テレシアッ!」

 その一喝で、テレシアは身を竦めた。そしてそそくさと膝から降りると、部屋を後にした。エドウィンはテレシアの行動に頭を抱え、大いに悩んだ。こんな幼い子供が男に媚びる術を知っているはずがない。だとすれば、彼女は義父から性的虐待を受けていた可能性が高い――それは彼にとって胸が痛くなる事実であると同時に、頭も痛くなる事実だった。

 そして数日後、予想もしなかった事態に陥る。

 妹のアレクシアが二階の窓から落ち、怪我を負ったのだ。幸いなことに落下地点には洗濯物が山積みになった籠が置いてあり、大した怪我ではなかった。さらには彼女を着替えさせた侍女によると、その体には新しい切り傷がいくつもあったという。
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