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第8話
フェジョン公爵家へ帰ると、お父様とお母様が迎えてくれました。
「リリウムちゃん! どうしたの!?」
「リリウム君、学園で問題でも起きたかい!?」
お二人が突然帰ってきたわたくし達を見て、慌てています。するとグラキエス様が学園での出来事を報告してくれました。
「そんな酷い目に遭ったのですか……!?」
「リジューレ伯爵家の性悪娘め……! 絶対に許さんぞ……!」
お母様はわたくしを抱き締め、お父様は怒りに震えます。まだ少しの付き合いですが、お二人共わたくしをとても愛して下さっているのです。
「そもそもリリウム君はあの伯爵家で虐待を受けていたのだろう? その上、学園で性悪娘に暴言を吐かれ、暴力まで振るわれそうになった。これは貴族院に訴えて裁判を行ってもいいくらいの事件だ」
お父様の言葉に、お母様が頷きます。
「その通りよ。私達、戦うわ」
「ああ、絶対に勝利してみせる」
「お父様……お母様……落ち着いて下さい……」
わたくしは困惑し、グラキエス様に視線で助けを求めます。すると彼は小さく頷き、こう言ってくれたのです。
「その件は王家に任せてくれ。それよりも、リリウム様は少し気分転換が必要だ。庭に散策へ出かけても?」
「グラキエス様がそう仰るなら……」
「ええ、王家にお任せ致します……」
そしてわたくしとグラキエス様は公爵家の庭へ出ました。
「まあ、綺麗な庭園ですね!」
「フェジョン公爵夫妻はガーデニングが趣味ですから」
春の庭園には緑が生い茂り、ありとあらゆる花が咲き始めています。わたくしはそんな初々しい光景をぐるりと見渡しました。
「素敵! わたくしも将来は夫婦でお花を育てるのが夢なのです!」
「夫婦で……ですか……?」
「ええ、そうです!」
花咲く庭園はとても見事で、疲れを癒してくれるようでした。しかしグラキエス様は花には目をやらず、こちらを見詰めています。その表情はどこか悲し気で、いつもの彼らしくありません。
「グラキエス様……? どうなさいました……?」
そう問うと、彼は口を開きました。
「リリウム様には心に決めたお相手がいるのですか?」
「それは……」
彼の言葉に触発され、遠い過去を思い出します。わたくしがまだ七歳だった頃、森で迷子になっていた年上の少年を助けた思い出が蘇りました。
「昔、わたくしは森でひとりの少年を助けました。彼の壊れそうな心をこの手で癒したのです。その時、触れた彼の心はどんな心よりも素晴らしかった……」
わたくしは目を閉じ、語ります。
「妖精には人間の心が感情を発する宝珠のように見えます……。あの少年の心は輝く星のように美しい宝珠でした……。表面は凍るほど冷たいのに、その中心は燃えるように熱い……。わたくしはあの少年の心に恋をしてしまったのです……」
こんなことを語ったら、グラキエス様が傷つく。それは分かっていました。しかし学園前で彼に言われた通り、素直な気持ちを伝えるべきだと思ったのです。わたくしは胸を痛ませながら、彼の顔に目を向けました。
深く悲しんでいるかもしれない……。
酷く怒っているかもしれない……。
しかし彼は口を押え、震えていたのです。
「リリウム様……その少年は自分のことを“グレン”と言いませんでしたか……?」
「え!? その通りです! なぜ知っているのです!?」
するとグラキエス様は泣き笑いの表情を浮かべました。
「グレンは俺です……。俺がグレンなんです……」
その告白に、わたくしは大きく息を飲み込みました。
「リリウムちゃん! どうしたの!?」
「リリウム君、学園で問題でも起きたかい!?」
お二人が突然帰ってきたわたくし達を見て、慌てています。するとグラキエス様が学園での出来事を報告してくれました。
「そんな酷い目に遭ったのですか……!?」
「リジューレ伯爵家の性悪娘め……! 絶対に許さんぞ……!」
お母様はわたくしを抱き締め、お父様は怒りに震えます。まだ少しの付き合いですが、お二人共わたくしをとても愛して下さっているのです。
「そもそもリリウム君はあの伯爵家で虐待を受けていたのだろう? その上、学園で性悪娘に暴言を吐かれ、暴力まで振るわれそうになった。これは貴族院に訴えて裁判を行ってもいいくらいの事件だ」
お父様の言葉に、お母様が頷きます。
「その通りよ。私達、戦うわ」
「ああ、絶対に勝利してみせる」
「お父様……お母様……落ち着いて下さい……」
わたくしは困惑し、グラキエス様に視線で助けを求めます。すると彼は小さく頷き、こう言ってくれたのです。
「その件は王家に任せてくれ。それよりも、リリウム様は少し気分転換が必要だ。庭に散策へ出かけても?」
「グラキエス様がそう仰るなら……」
「ええ、王家にお任せ致します……」
そしてわたくしとグラキエス様は公爵家の庭へ出ました。
「まあ、綺麗な庭園ですね!」
「フェジョン公爵夫妻はガーデニングが趣味ですから」
春の庭園には緑が生い茂り、ありとあらゆる花が咲き始めています。わたくしはそんな初々しい光景をぐるりと見渡しました。
「素敵! わたくしも将来は夫婦でお花を育てるのが夢なのです!」
「夫婦で……ですか……?」
「ええ、そうです!」
花咲く庭園はとても見事で、疲れを癒してくれるようでした。しかしグラキエス様は花には目をやらず、こちらを見詰めています。その表情はどこか悲し気で、いつもの彼らしくありません。
「グラキエス様……? どうなさいました……?」
そう問うと、彼は口を開きました。
「リリウム様には心に決めたお相手がいるのですか?」
「それは……」
彼の言葉に触発され、遠い過去を思い出します。わたくしがまだ七歳だった頃、森で迷子になっていた年上の少年を助けた思い出が蘇りました。
「昔、わたくしは森でひとりの少年を助けました。彼の壊れそうな心をこの手で癒したのです。その時、触れた彼の心はどんな心よりも素晴らしかった……」
わたくしは目を閉じ、語ります。
「妖精には人間の心が感情を発する宝珠のように見えます……。あの少年の心は輝く星のように美しい宝珠でした……。表面は凍るほど冷たいのに、その中心は燃えるように熱い……。わたくしはあの少年の心に恋をしてしまったのです……」
こんなことを語ったら、グラキエス様が傷つく。それは分かっていました。しかし学園前で彼に言われた通り、素直な気持ちを伝えるべきだと思ったのです。わたくしは胸を痛ませながら、彼の顔に目を向けました。
深く悲しんでいるかもしれない……。
酷く怒っているかもしれない……。
しかし彼は口を押え、震えていたのです。
「リリウム様……その少年は自分のことを“グレン”と言いませんでしたか……?」
「え!? その通りです! なぜ知っているのです!?」
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その告白に、わたくしは大きく息を飲み込みました。
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