7 / 9
第7話 オーガスト伯爵の屋敷にて
しおりを挟む
「こ、国王陛下……これは……このことは……――」
オーガストは可哀想なほど怯え、震えている。
それもそのはず、王妃と浮気して子供まで作った罪はあまりに重い。
しかしアダムはそんなオーガストの肩を叩くと、こう言った。
「大丈夫、私は君の浮気を責めたりはしない。むしろエルティアナと知り合う機会をくれたことに感謝する」
その言葉にオーガストとエルティアナは絶句した。
まさかこの方は王妃を愛していない?
二人の頭の中にそんな確信めいた考えた浮かんでいた。
「ああ、君達が察している通り、私は王妃メルティアナを愛していない。あの女はあまりに酷い。エルティアナを両親と共に虐待していた。さらには浮気した上に身籠って、その出産のために姉の君と入れ替わったんだ」
「アダム様……いつそれを……――」
「結婚後の調査だよ。メルティアナへの違和感が調査に踏み切る切欠だった」
「そんな……私と妹はそっくりですのに……」
「いいや、私はメルティアナが二重人格か、悪魔憑きかと思うほど違和感を持っていたよ。しかしその場で指摘するには至らなかった。私は勘の良さを頼りに生きてきたが、実際は大したことないのかもしれない」
エルティアナは困惑していた。
全て知られた――しかし彼は怒っていない。
彼女は震える唇を動かし、こう尋ねた。
「私はアダム様を騙していたのですよ……? 憎くないのですか……?」
「憎い? そんな訳あるか。私は君を愛している」
そしてアダムは赤ん坊を抱くエルティアナの手に触れた。
「心美しいエルティアナ、私は君のことが誰よりも好きだ。花と歌を愛し、そしてこの私にも愛情を注いでくれた優しい君。あれは全部嘘だったのかい?」
「いいえ……嘘だなんて……そんなことはありません……」
「では君は本心から私を愛してくれていたのか?」
「はい……私はアダム様を今でも愛しております……」
エルティアナの瞳に涙が宿っている。
アダムはそんな彼女を誰よりも可憐だと思う。
「結婚までの八ヶ月間、私の相手を務めてくれた愛しいエルティアナ。もう一度言うよ、私はあの恐ろしい妹は愛していない。君だけを心から愛している」
「あ、あぁ……――」
アダムの言葉に、エルティアナはついに泣き出した。
そんな様子はオーガストからすれば、悪魔の仮面を脱いだ少女に見えた。
そして彼女が泣き止むのを待って、アダムは口を開く。
彼の口から語られたのはあるひとつの計画。
それは――
「実は……――」
オーガストは可哀想なほど怯え、震えている。
それもそのはず、王妃と浮気して子供まで作った罪はあまりに重い。
しかしアダムはそんなオーガストの肩を叩くと、こう言った。
「大丈夫、私は君の浮気を責めたりはしない。むしろエルティアナと知り合う機会をくれたことに感謝する」
その言葉にオーガストとエルティアナは絶句した。
まさかこの方は王妃を愛していない?
二人の頭の中にそんな確信めいた考えた浮かんでいた。
「ああ、君達が察している通り、私は王妃メルティアナを愛していない。あの女はあまりに酷い。エルティアナを両親と共に虐待していた。さらには浮気した上に身籠って、その出産のために姉の君と入れ替わったんだ」
「アダム様……いつそれを……――」
「結婚後の調査だよ。メルティアナへの違和感が調査に踏み切る切欠だった」
「そんな……私と妹はそっくりですのに……」
「いいや、私はメルティアナが二重人格か、悪魔憑きかと思うほど違和感を持っていたよ。しかしその場で指摘するには至らなかった。私は勘の良さを頼りに生きてきたが、実際は大したことないのかもしれない」
エルティアナは困惑していた。
全て知られた――しかし彼は怒っていない。
彼女は震える唇を動かし、こう尋ねた。
「私はアダム様を騙していたのですよ……? 憎くないのですか……?」
「憎い? そんな訳あるか。私は君を愛している」
そしてアダムは赤ん坊を抱くエルティアナの手に触れた。
「心美しいエルティアナ、私は君のことが誰よりも好きだ。花と歌を愛し、そしてこの私にも愛情を注いでくれた優しい君。あれは全部嘘だったのかい?」
「いいえ……嘘だなんて……そんなことはありません……」
「では君は本心から私を愛してくれていたのか?」
「はい……私はアダム様を今でも愛しております……」
エルティアナの瞳に涙が宿っている。
アダムはそんな彼女を誰よりも可憐だと思う。
「結婚までの八ヶ月間、私の相手を務めてくれた愛しいエルティアナ。もう一度言うよ、私はあの恐ろしい妹は愛していない。君だけを心から愛している」
「あ、あぁ……――」
アダムの言葉に、エルティアナはついに泣き出した。
そんな様子はオーガストからすれば、悪魔の仮面を脱いだ少女に見えた。
そして彼女が泣き止むのを待って、アダムは口を開く。
彼の口から語られたのはあるひとつの計画。
それは――
「実は……――」
615
あなたにおすすめの小説
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
氷の騎士と契約結婚したのですが、愛することはないと言われたので契約通り離縁します!
柚屋志宇
恋愛
「お前を愛することはない」
『氷の騎士』侯爵令息ライナスは、伯爵令嬢セルマに白い結婚を宣言した。
セルマは家同士の政略による契約結婚と割り切ってライナスの妻となり、二年後の離縁の日を待つ。
しかし結婚すると、最初は冷たかったライナスだが次第にセルマに好意的になる。
だがセルマは離縁の日が待ち遠しい。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
正妃として教育された私が「側妃にする」と言われたので。
水垣するめ
恋愛
主人公、ソフィア・ウィリアムズ公爵令嬢は生まれてからずっと正妃として迎え入れられるべく教育されてきた。
王子の補佐が出来るように、遊ぶ暇もなく教育されて自由がなかった。
しかしある日王子は突然平民の女性を連れてきて「彼女を正妃にする!」と宣言した。
ソフィアは「私はどうなるのですか?」と問うと、「お前は側妃だ」と言ってきて……。
今まで費やされた時間や努力のことを訴えるが王子は「お前は自分のことばかりだな!」と逆に怒った。
ソフィアは王子に愛想を尽かし、婚約破棄をすることにする。
焦った王子は何とか引き留めようとするがソフィアは聞く耳を持たずに王子の元を去る。
それから間もなく、ソフィアへの仕打ちを知った周囲からライアンは非難されることとなる。
※小説になろうでも投稿しています。
訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果
柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。
彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。
しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。
「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」
逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。
あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。
しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。
気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……?
虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。
※小説家になろうに重複投稿しています。
「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚
ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。
※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。
居場所を失った令嬢と結婚することになった男の葛藤
しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢ロレーヌは悪女扱いされて婚約破棄された。
父親は怒り、修道院に入れようとする。
そんな彼女を助けてほしいと妻を亡くした28歳の子爵ドリューに声がかかった。
学園も退学させられた、まだ16歳の令嬢との結婚。
ロレーヌとの初夜を少し先に見送ったせいで彼女に触れたくなるドリューのお話です。
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
ただ誰かにとって必要な存在になりたかった
風見ゆうみ
恋愛
19歳になった伯爵令嬢の私、ラノア・ナンルーは同じく伯爵家の当主ビューホ・トライトと結婚した。
その日の夜、ビューホ様はこう言った。
「俺には小さい頃から思い合っている平民のフィナという人がいる。俺とフィナの間に君が入る隙はない。彼女の事は母上も気に入っているんだ。だから君はお飾りの妻だ。特に何もしなくていい。それから、フィナを君の侍女にするから」
家族に疎まれて育った私には、酷い仕打ちを受けるのは当たり前になりすぎていて、どう反応する事が正しいのかわからなかった。
結婚した初日から私は自分が望んでいた様な妻ではなく、お飾りの妻になった。
お飾りの妻でいい。
私を必要としてくれるなら…。
一度はそう思った私だったけれど、とあるきっかけで、公爵令息と知り合う事になり、状況は一変!
こんな人に必要とされても意味がないと感じた私は離縁を決意する。
※「ただ誰かに必要とされたかった」から、タイトルを変更致しました。
※クズが多いです。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※独特の世界観です。
※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる