この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん

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第8話 国王と王妃の閨

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 ある夜、メルティアナはアダムの寝室に呼ばれた。
 その誘いに彼女は喜んだ――そう、明かりさえ点けなければ大丈夫だ。
 すでに一度ベッドを共にしていたが、相手は何も気付いていない。
 アダムは初めてらしいから、それで誤魔化せているのだろう。

 メルティアナはアダムだけではなく、侍女にも下腹部を見せていない。
 いつもひとりで入浴し、下着をつけてから侍女を呼んでいる。
 しかしアダムの子を孕み、やがて出産まで行き着けば、その手間もなくなる。
 妊娠線も、傷も、アダムの子を生んだ時についたと言えばいいからだ。
 出産は実家に帰ってすればいいし、きっとそんな我が儘くらいは聞いてもらえる。
 彼女はそう高を括っていた。

 そしてメルティアナは白粉を厚く塗り、めかし込んで寝室へ向かった。

「メルティアナ、来てくれてありがとう」
「いいえ、アダム様。呼んで下さるなんて、光栄です」

 そう言って抱き合った後、メルティアナの要望通り明かりが消された。
 その時、扉側から空気が流れている気配がしたが、彼女は無視した。
 やがて真っ暗な部屋の中、二人は口付けを交わす。
 そしてアダムから全裸になるように言われ、彼女は服を脱いだ。
 しかし――

「さあ、明かりを点けよ――」

 突然、アダムの声がして、部屋が明るくなった。
 しかもベッドの周囲には数名の侍女達が並んでいる。
 その侍女達は裸のメルティアナをじっと睨んでいた。
 一方、アダムは彼女の下腹部に付いた妊娠線を指差し、尋ねる。

「メルティアナ、これは何だい?」

 その言葉を聞くなり、彼女は真っ青になった。
 妊娠線を見られてしまった――それにこの状況は一体何なのか。
 しかし彼女はすぐに開き直ると、アダムに向かって文句を言い放った。

「何なんです!? 信じられませんわ! いくら国王と言えど……――」
「国王と言えど、何だい?」

 アダムはそう言いながら、手振りで指示を出した。
 侍女達は一斉にメルティアナに群がり、その腕と足を押さえる。

「では君達、彼女の下半身を調べてくれるか?」
「かしこまりました、陛下」

 そしてアダムが顔を背ける中、メルティアナの下半身が調べられた。
 彼女は抵抗しようとしたが、数人に押さえられては無理である。
 やがてひとりの年配侍女が、股を覗いて声を上げた。

「間違いありません! 王妃は数ヶ月以内に子供を産んでいます!」
「そうか。やはり君は私を裏切っていたんだね」
「ひッ……酷いッ……! 私を罪人に仕立て上げる気ねッ……!?」

 メルティアナは哀れっぽく悲鳴じみた声を上げる。
 しかしアダムの心は冷たく凍っている。
 そう、冷徹と言えるまでに――

「メルティアナ、自分自身に別れを告げるんだ」
「え……? アダム様、一体何を言っているの……?」
「君はこれから、姉のエルティアナとして国外追放される――」
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