8 / 9
第8話 国王と王妃の閨
しおりを挟む
ある夜、メルティアナはアダムの寝室に呼ばれた。
その誘いに彼女は喜んだ――そう、明かりさえ点けなければ大丈夫だ。
すでに一度ベッドを共にしていたが、相手は何も気付いていない。
アダムは初めてらしいから、それで誤魔化せているのだろう。
メルティアナはアダムだけではなく、侍女にも下腹部を見せていない。
いつもひとりで入浴し、下着をつけてから侍女を呼んでいる。
しかしアダムの子を孕み、やがて出産まで行き着けば、その手間もなくなる。
妊娠線も、傷も、アダムの子を生んだ時についたと言えばいいからだ。
出産は実家に帰ってすればいいし、きっとそんな我が儘くらいは聞いてもらえる。
彼女はそう高を括っていた。
そしてメルティアナは白粉を厚く塗り、めかし込んで寝室へ向かった。
「メルティアナ、来てくれてありがとう」
「いいえ、アダム様。呼んで下さるなんて、光栄です」
そう言って抱き合った後、メルティアナの要望通り明かりが消された。
その時、扉側から空気が流れている気配がしたが、彼女は無視した。
やがて真っ暗な部屋の中、二人は口付けを交わす。
そしてアダムから全裸になるように言われ、彼女は服を脱いだ。
しかし――
「さあ、明かりを点けよ――」
突然、アダムの声がして、部屋が明るくなった。
しかもベッドの周囲には数名の侍女達が並んでいる。
その侍女達は裸のメルティアナをじっと睨んでいた。
一方、アダムは彼女の下腹部に付いた妊娠線を指差し、尋ねる。
「メルティアナ、これは何だい?」
その言葉を聞くなり、彼女は真っ青になった。
妊娠線を見られてしまった――それにこの状況は一体何なのか。
しかし彼女はすぐに開き直ると、アダムに向かって文句を言い放った。
「何なんです!? 信じられませんわ! いくら国王と言えど……――」
「国王と言えど、何だい?」
アダムはそう言いながら、手振りで指示を出した。
侍女達は一斉にメルティアナに群がり、その腕と足を押さえる。
「では君達、彼女の下半身を調べてくれるか?」
「かしこまりました、陛下」
そしてアダムが顔を背ける中、メルティアナの下半身が調べられた。
彼女は抵抗しようとしたが、数人に押さえられては無理である。
やがてひとりの年配侍女が、股を覗いて声を上げた。
「間違いありません! 王妃は数ヶ月以内に子供を産んでいます!」
「そうか。やはり君は私を裏切っていたんだね」
「ひッ……酷いッ……! 私を罪人に仕立て上げる気ねッ……!?」
メルティアナは哀れっぽく悲鳴じみた声を上げる。
しかしアダムの心は冷たく凍っている。
そう、冷徹と言えるまでに――
「メルティアナ、自分自身に別れを告げるんだ」
「え……? アダム様、一体何を言っているの……?」
「君はこれから、姉のエルティアナとして国外追放される――」
その誘いに彼女は喜んだ――そう、明かりさえ点けなければ大丈夫だ。
すでに一度ベッドを共にしていたが、相手は何も気付いていない。
アダムは初めてらしいから、それで誤魔化せているのだろう。
メルティアナはアダムだけではなく、侍女にも下腹部を見せていない。
いつもひとりで入浴し、下着をつけてから侍女を呼んでいる。
しかしアダムの子を孕み、やがて出産まで行き着けば、その手間もなくなる。
妊娠線も、傷も、アダムの子を生んだ時についたと言えばいいからだ。
出産は実家に帰ってすればいいし、きっとそんな我が儘くらいは聞いてもらえる。
彼女はそう高を括っていた。
そしてメルティアナは白粉を厚く塗り、めかし込んで寝室へ向かった。
「メルティアナ、来てくれてありがとう」
「いいえ、アダム様。呼んで下さるなんて、光栄です」
そう言って抱き合った後、メルティアナの要望通り明かりが消された。
その時、扉側から空気が流れている気配がしたが、彼女は無視した。
やがて真っ暗な部屋の中、二人は口付けを交わす。
そしてアダムから全裸になるように言われ、彼女は服を脱いだ。
しかし――
「さあ、明かりを点けよ――」
突然、アダムの声がして、部屋が明るくなった。
しかもベッドの周囲には数名の侍女達が並んでいる。
その侍女達は裸のメルティアナをじっと睨んでいた。
一方、アダムは彼女の下腹部に付いた妊娠線を指差し、尋ねる。
「メルティアナ、これは何だい?」
その言葉を聞くなり、彼女は真っ青になった。
妊娠線を見られてしまった――それにこの状況は一体何なのか。
しかし彼女はすぐに開き直ると、アダムに向かって文句を言い放った。
「何なんです!? 信じられませんわ! いくら国王と言えど……――」
「国王と言えど、何だい?」
アダムはそう言いながら、手振りで指示を出した。
侍女達は一斉にメルティアナに群がり、その腕と足を押さえる。
「では君達、彼女の下半身を調べてくれるか?」
「かしこまりました、陛下」
そしてアダムが顔を背ける中、メルティアナの下半身が調べられた。
彼女は抵抗しようとしたが、数人に押さえられては無理である。
やがてひとりの年配侍女が、股を覗いて声を上げた。
「間違いありません! 王妃は数ヶ月以内に子供を産んでいます!」
「そうか。やはり君は私を裏切っていたんだね」
「ひッ……酷いッ……! 私を罪人に仕立て上げる気ねッ……!?」
メルティアナは哀れっぽく悲鳴じみた声を上げる。
しかしアダムの心は冷たく凍っている。
そう、冷徹と言えるまでに――
「メルティアナ、自分自身に別れを告げるんだ」
「え……? アダム様、一体何を言っているの……?」
「君はこれから、姉のエルティアナとして国外追放される――」
715
あなたにおすすめの小説
【完結】元婚約者の次の婚約者は私の妹だそうです。ところでご存知ないでしょうが、妹は貴方の妹でもありますよ。
葉桜鹿乃
恋愛
あらぬ罪を着せられ婚約破棄を言い渡されたジュリア・スカーレット伯爵令嬢は、ある秘密を抱えていた。
それは、元婚約者モーガンが次の婚約者に望んだジュリアの妹マリアが、モーガンの実の妹でもある、という秘密だ。
本当ならば墓まで持っていくつもりだったが、ジュリアを婚約者にとモーガンの親友である第一王子フィリップが望んでくれた事で、ジュリアは真実を突きつける事を決める。
※エピローグにてひとまず完結ですが、疑問点があがっていた所や、具体的な姉妹に対する差など、サクサク読んでもらうのに削った所を(現在他作を書いているので不定期で)番外編で更新しますので、暫く連載中のままとさせていただきます。よろしくお願いします。
番外編に手が回らないため、一旦完結と致します。
(2021/02/07 02:00)
小説家になろう・カクヨムでも別名義にて連載を始めました。
恋愛及び全体1位ありがとうございます!
※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)
【完結・全3話】不細工だと捨てられましたが、貴方の代わりに呪いを受けていました。もう代わりは辞めます。呪いの処理はご自身で!
酒本 アズサ
恋愛
「お前のような不細工な婚約者がいるなんて恥ずかしいんだよ。今頃婚約破棄の書状がお前の家に届いているだろうさ」
年頃の男女が集められた王家主催のお茶会でそう言ったのは、幼い頃からの婚約者セザール様。
確かに私は見た目がよくない、血色は悪く、肌も髪もかさついている上、目も落ちくぼんでみっともない。
だけどこれはあの日呪われたセザール様を助けたい一心で、身代わりになる魔導具を使った結果なのに。
当時は私に申し訳なさそうにしながらも感謝していたのに、時と共に忘れてしまわれたのですね。
結局婚約破棄されてしまった私は、抱き続けていた恋心と共に身代わりの魔導具も捨てます。
当然呪いは本来の標的に向かいますからね?
日に日に本来の美しさを取り戻す私とは対照的に、セザール様は……。
恩を忘れた愚かな婚約者には同情しません!
幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに
hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。
二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。
両親から謝ることもできない娘と思われ、妹の邪魔する存在と決めつけられて養子となりましたが、必要のないもの全てを捨てて幸せになれました
珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたユルシュル・バシュラールは、妹の言うことばかりを信じる両親と妹のしていることで、最低最悪な婚約者と解消や破棄ができたと言われる日々を送っていた。
一見良いことのように思えることだが、実際は妹がしていることは褒められることではなかった。
更には自己中な幼なじみやその異母妹や王妃や側妃たちによって、ユルシュルは心労の尽きない日々を送っているというのにそれに気づいてくれる人は周りにいなかったことで、ユルシュルはいつ倒れてもおかしくない状態が続いていたのだが……。
もてあそんでくれたお礼に、貴方に最高の餞別を。婚約者さまと、どうかお幸せに。まぁ、幸せになれるものなら......ね?
当麻月菜
恋愛
次期当主になるべく、領地にて父親から仕事を学んでいた伯爵令息フレデリックは、ちょっとした出来心で領民の娘イルアに手を出した。
ただそれは、結婚するまでの繋ぎという、身体目的の軽い気持ちで。
対して領民の娘イルアは、本気だった。
もちろんイルアは、フレデリックとの間に身分差という越えられない壁があるのはわかっていた。そして、その時が来たら綺麗に幕を下ろそうと決めていた。
けれど、二人の関係の幕引きはあまりに酷いものだった。
誠意の欠片もないフレデリックの態度に、立ち直れないほど心に傷を受けたイルアは、彼に復讐することを誓った。
弄ばれた女が、捨てた男にとって最後で最高の女性でいられるための、本気の復讐劇。
最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
【完結】私の婚約者は妹のおさがりです
葉桜鹿乃
恋愛
「もう要らないわ、お姉様にあげる」
サリバン辺境伯領の領主代行として領地に籠もりがちな私リリーに対し、王都の社交界で華々しく活動……悪く言えば男をとっかえひっかえ……していた妹ローズが、そう言って寄越したのは、それまで送ってきていたドレスでも宝飾品でもなく、私の初恋の方でした。
ローズのせいで広まっていたサリバン辺境伯家の悪評を止めるために、彼は敢えてローズに近付き一切身体を許さず私を待っていてくれていた。
そして彼の初恋も私で、私はクールな彼にいつのまにか溺愛されて……?
妹のおさがりばかりを貰っていた私は、初めて本でも家庭教師でも実権でもないものを、両親にねだる。
「お父様、お母様、私この方と婚約したいです」
リリーの大事なものを守る為に奮闘する侯爵家次男レイノルズと、領地を大事に思うリリー。そしてリリーと自分を比べ、態と奔放に振る舞い続けた妹ローズがハッピーエンドを目指す物語。
小説家になろう様でも別名義にて連載しています。
※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)
そういう時代でございますから
Ruhuna
恋愛
私の婚約者が言ったのです
「これは真実の愛だ」ーーと。
そうでございますか。と返答した私は周りの皆さんに相談したのです。
その結果が、こうなってしまったのは、そうですね。
そういう時代でございますからーー
*誤字脱字すみません
*ゆるふわ設定です
*辻褄合わない部分があるかもしれませんが暇つぶし程度で見ていただけると嬉しいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる