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第9話 王宮庭園にて
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アダムは王宮の庭園でのびのびと両腕を伸ばした。
こうして花々に囲まれ、鳥の声を聞くのは何か月ぶりだろう。
その時、背後から愛しい女性の声がした。
「アダム様、一緒にお茶をしませんか?」
「ああ、メルティアナ、喜んで――」
「うふふ。さあ、参りましょう」
そう言って、エルティアナはにっこり微笑んだ。
姉エルティアナと妹メルティアナ、二人は再び入れ替わった。
しかし今度は姉のエルティアナに利がある形で――
国外追放を言い渡された妹は泣き叫び、暴れ回った。
それは最早発狂と言えるほどの取り乱しようだった。
しかしそんな妹でも、屈強な男達に捕まると、大人しくなった。
彼女はそのまま両親と共に内密に裁かれ、国外追放されたのだった。
長きに渡る姉への虐待、王子を裏切る浮気、王家を欺く姉妹の交換、その後の姉と赤ん坊への仕打ち……全ての悪事が発覚した後も、両親は妹を庇った。
姉のことを前妻が置いていった娘だと主張し、さらには姉の虐待現場を妹が写真として残していたにも関わらず、捏造だと喚き散らしたのだ。
そんな両親と妹をアダムが許すはずなかった。
三人はもう二度とこの国には戻れないだろう。
地位も、財産も……何もかも剥奪の上での追放だった。
一方、妹と浮気したオーガスト伯爵は寛大な措置を受けた。
実の娘を引き取って大切に育てること、そして今回知った全ての事実を口外しないことを条件に、その浮気の罪を許されたのだ。
彼は喜んでその申し出を受け入れ、首が刎ねられなくて済んだと呟いていた。
「どうしました? アダム様?」
「いいや、ちょっと考え事をね」
アダムはそう言って、片目を瞑る。
エルティアナは不思議そうに首を傾げる。
そして彼女はアダムに顔を寄せると、声を潜めて囁いた。
(それにしても、アダム様は優しいお方ですわ。あの妹を新しい浮気相手と共に国外へ逃がして差し上げるなんて。しかも両親まで一緒に……)
(こら、エルティアナ。その話しは王宮でしちゃいけないよ。妹のメルティアナのことはお姉様と呼ぶんだ)
(ごめんなさい、アダム様。分かりましたわ)
エルティアナはそう謝って目を伏せる。
彼女には妹がどうなったのか、真実を告げてない。
むしろ嘘を吐いて、彼女の繊細な心を傷付けぬようにしていた。
オーガスト伯爵の屋敷で、アダムが二人に語った計画はこうである。
“実はメルティアナが新しい浮気相手を作り、その男と添い遂げたいと言っている。だから今度は永久に、妹と入れ替わってくれないか?”
そのため、姉エルティアナの中では妹メルティアナはまた性懲りもなく浮気をし、アダムの手を借りつつ浮気相手と共に国外へ逃げたことになっている。
勿論、妹にべったりの両親も一緒という設定だ。
エルティアナはその嘘を信じ、アダムの手を取ったのだった。
自分の嘘を素直に信じてくれるエルティアナを、アダムは可愛いと感じていた。
そう、彼女は天使――純粋な心を持った少女なのだ。
「ああ、国外にいるお姉様もこうして幸せに暮らしているといいなぁ」
「そうだね。私の可愛いメルティアナ」
アダムは永遠に知ることはない。
エルティアナがオーガストを使って妹をおびき出したら、彼女を拷問して殺すつもりだったという事実を――
―END―
こうして花々に囲まれ、鳥の声を聞くのは何か月ぶりだろう。
その時、背後から愛しい女性の声がした。
「アダム様、一緒にお茶をしませんか?」
「ああ、メルティアナ、喜んで――」
「うふふ。さあ、参りましょう」
そう言って、エルティアナはにっこり微笑んだ。
姉エルティアナと妹メルティアナ、二人は再び入れ替わった。
しかし今度は姉のエルティアナに利がある形で――
国外追放を言い渡された妹は泣き叫び、暴れ回った。
それは最早発狂と言えるほどの取り乱しようだった。
しかしそんな妹でも、屈強な男達に捕まると、大人しくなった。
彼女はそのまま両親と共に内密に裁かれ、国外追放されたのだった。
長きに渡る姉への虐待、王子を裏切る浮気、王家を欺く姉妹の交換、その後の姉と赤ん坊への仕打ち……全ての悪事が発覚した後も、両親は妹を庇った。
姉のことを前妻が置いていった娘だと主張し、さらには姉の虐待現場を妹が写真として残していたにも関わらず、捏造だと喚き散らしたのだ。
そんな両親と妹をアダムが許すはずなかった。
三人はもう二度とこの国には戻れないだろう。
地位も、財産も……何もかも剥奪の上での追放だった。
一方、妹と浮気したオーガスト伯爵は寛大な措置を受けた。
実の娘を引き取って大切に育てること、そして今回知った全ての事実を口外しないことを条件に、その浮気の罪を許されたのだ。
彼は喜んでその申し出を受け入れ、首が刎ねられなくて済んだと呟いていた。
「どうしました? アダム様?」
「いいや、ちょっと考え事をね」
アダムはそう言って、片目を瞑る。
エルティアナは不思議そうに首を傾げる。
そして彼女はアダムに顔を寄せると、声を潜めて囁いた。
(それにしても、アダム様は優しいお方ですわ。あの妹を新しい浮気相手と共に国外へ逃がして差し上げるなんて。しかも両親まで一緒に……)
(こら、エルティアナ。その話しは王宮でしちゃいけないよ。妹のメルティアナのことはお姉様と呼ぶんだ)
(ごめんなさい、アダム様。分かりましたわ)
エルティアナはそう謝って目を伏せる。
彼女には妹がどうなったのか、真実を告げてない。
むしろ嘘を吐いて、彼女の繊細な心を傷付けぬようにしていた。
オーガスト伯爵の屋敷で、アダムが二人に語った計画はこうである。
“実はメルティアナが新しい浮気相手を作り、その男と添い遂げたいと言っている。だから今度は永久に、妹と入れ替わってくれないか?”
そのため、姉エルティアナの中では妹メルティアナはまた性懲りもなく浮気をし、アダムの手を借りつつ浮気相手と共に国外へ逃げたことになっている。
勿論、妹にべったりの両親も一緒という設定だ。
エルティアナはその嘘を信じ、アダムの手を取ったのだった。
自分の嘘を素直に信じてくれるエルティアナを、アダムは可愛いと感じていた。
そう、彼女は天使――純粋な心を持った少女なのだ。
「ああ、国外にいるお姉様もこうして幸せに暮らしているといいなぁ」
「そうだね。私の可愛いメルティアナ」
アダムは永遠に知ることはない。
エルティアナがオーガストを使って妹をおびき出したら、彼女を拷問して殺すつもりだったという事実を――
―END―
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