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本編

19.知る権利

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「コリン! ティモ!!」
「「姉上!!」」

つい立ち上がって駆け寄りそうになるが、横にいるアレクに肩を抑えられてしまう。

手紙でやり取りをしているものの、会うのは4年振り。
9歳と8歳だった子たちがもう13歳と12歳。随分と大きくなって、声も少し変わったみたい。

でもやっぱりまだ『かっこいい』より『かわいい』が似合う。
全身で抱きしめたいのに、ベッドから立たせてもらえない。
代わりにコリンたちが腕にからみついてくれるから、それで満足しておこう。

「二人とも元気そう。随分と背が伸びたわね!」

「姉上も、怪我をしたと聞いたので心配しましたが顔色が良くて安心しました。」
コリンは話し方が随分と大人っぽくなっている。

「姉上、怪我したのは一ヶ月前と聞きました。まだ痛みますか!?」
ティモの口調も丁寧になっている。

「ふふ、大丈夫よ。皆さんが良くしてくださるから、随分と治りが早いの。心配をかけてごめんなさいね?」

2人は私の言葉にニコリと笑って、安心したのかキョロキョロと部屋を見回しはじめた。

「随分と立派なお部屋ですね・・・。姉上の階級は軍曹で、分隊長ですよね?」

「ええ、ここは団長、、ソニーファン師団長のお部屋なの。二人に馬車を手配してくださったのも師団長なのよ?」

「「・・・・・・・」」

2人が目を見合わせて微妙な顔をするのでなぜかと訊ねるがいまいちハッキリ回答がない。

「え・・・・っと、あの、それで姉上、こちらの方はアレックス・フォードン様では?」
ティモがアレクをちらりと見ながら聞いてくる。

「そうよ。こちらはフォードン大隊長。今回の怪我では隊長にもすごくお世話になっているの」

私の言葉を聞いてキラキラと顔を輝かせながら、やはり!!フォードン様の姿絵を持っているのです、持ってくればよかった、サインが欲しかった!!とティモが熱弁をふるっていた。
だが、コリンはさらに複雑そうな顔になってしまう。

「ねぇコリン、どうしたの?何かあるなら言って?」

「・・・いえ、あの・・」

「二人ともレアに似ているな。特にこの猫みたいな目がそっくりだ」
ティモの頭を撫でながらアレクがそういうと、今度はコリンが口を開けたまま固まってしまった。

「コリン?」

「『レア』・・・。あの姉上、フォードン様とはどういう?」

「!」
そうだった。
はっ、そう考えたら、そもそも分隊長の分際で、団長の部屋で団長と大隊長から世話を受けるって変よね!?そりゃ妙な顔するはずだわ!!

「あ、あのねコリン」
「俺と君の姉上は愛し合っている。いわゆる恋仲というやつだ」

「「「!!!」」」

「はは、そうやってすぐ顔を赤くして固まるところもそっくりだ。可愛いなぁ」

「「「!!!!!」」」
さらに固まる私たちを楽しそうにアレクが眺めている。

「っ・・あ、あの!それでは団長様は?僕たちの寮に団長様ご本人から直接ご連絡をいただいたことに驚いていたのですが、その・・・この部屋を見て、姉上は団長様とお付き合いされていると思ったのですが・・・」

「違う!!」「違います!!」

「なんてことを言うの!そんな訳ないでしょう?」

「ですが・・・ではなぜ団長様の私室で、団長様のし・・・寝台に・・」
真っ赤になりながらもコリンはまだ納得できないという顔をしている。

「っ!!こっこれは!」

「医務室がいっぱいであること、レアの部屋では看病を受けるのに狭すぎること、俺の部屋は改装中であること、それから君の姉上の怪我に団長が責任を感じていること。諸々あって、この部屋を使わせてもらっているだけだ。君が心配しているようなことはない。
君たちに団長自ら連絡を取ったのも、その責任感からだ。ですよね、団長?」

アレクが丸め込、、説明をしてくれる・・・ん?改装中??


静かに見守ってくれていた団長がそうだな、と言って、コリンとティモに向き合う。
「フォードン隊長が言った通り、今回リュール軍曹が怪我をしたのは全て私の責任なのだ。君たちの姉上を傷つけてしまって、本当に申し訳なかった。」

「や、やめてください、団長。団長の責任ではありません。私の油断が招いたことですと何度も申し上げているではありませんか・・・」
「そうです、団長様に謝っていただくことなど。姉上が軍人となった時点で我々家族も覚悟をしております。」

「そうか・・だがリュールの名誉にもかかわることだ。おかしな勘繰りはやめなさい。」

「・・・・はい・・・。ですが名誉と言っても・・。姉上が恋多き方だというのは有名ですから今更・・・」

「コリ・・・」「「なんてことを言うんだ!!!」」
団長とアレクが怒声を上げたのでコリンもティモもビクッとしてしまった。
だがアレクは止まらない。

「今の言葉を取り消せ!どういうつもりでそんなことを!!今すぐレアに謝罪しろ!!」

「事実ではありませんか!!上級生達にからかわれて恥ずかしい思いをしているのは僕たちです!女狂いの娘は男狂いだ、と!」

ダンッッ!!! アレクがサイドテーブルを拳で叩く。
「もう一度言ってみろ・・・」

「っ!ぼ、、僕には優しい姉上です。姉上を愛しています。ですが・・・、実際何度も左遷さ」
「誰のためだと思っている!!!!!」「アレクだめっ!」

「お前らのためだろうが!!!!学校を辞めて!!この細腕に剣を持って戦場に立って!!理不尽で不名誉なうわさを流さ」「アレクお願いやめて!」

「うわさを流されて、好奇の目にさらされて・・・それでも必死に」
「アレク、お願い・・・お願いだからやめて」

「だめだ。レア、こいつらは知らなきゃならん。こいつはお前を愛していると言いながら、恥ずかしいと言ったんだぞ。こいつらは知らなきゃならないし、知る権利がある。違うか?」

「それは、でも・・・」

「リュール、フォードンが正しい。君が決断したのは14歳の時だろう?コリンももう13歳、自分で考えられる歳だ。」

「団長・・・」

「知ったうえで嫌うのは自由だ。だが事実を隠されたせいで、愛する姉を憎むようになってしまったら、それこそこいつが可哀相じゃないか」

そうかもしれない。でも、父親に要らないと言われたも同然だなんて、そう簡単に受け入れられることじゃない。



葛藤で何も言えずにいると、コリンの方から声がかかる。

「団長様、フォードン様、、、姉上。一体何の話をしているのですか?姉上のことで僕たちが知るべきことがあるのなら、ちゃんと教えてください。」



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