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第一章 騎士団長と小狼
9.ヴォルフランド
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ヴォルフランドは霧たちこめる深い森に囲まれた中にあった。
グレンたちの住まっていた村から馬車で獣人国の国境を超え、移動をすること数日。
幽玄な森の、霧と緑の幻想的な景色の中を通り抜けてゆくと、いきなり視界が開けて湖に囲まれた城が現れた。
湖はさながら天然の城壁で、城に通じる跳ね橋がかけられている。
城の後ろを見晴るかすと雪を被った険しい山々が見えた。
馬車が進んでゆくのにつれ、人とすれ違う。
いや、正確には人ではない。
グレンは馬車の窓から彼らを見る。
ーー狼の頭。
ワーウルフの国だけあり、もちろんそこにいる彼らもワーウルフであるのを、グレンは不思議な気持ちで見つめた。
まるで物語の中にでも入り込んでしまったようだ。
「違和感ありますか?」
「いや・・・なんか不思議でーー本当に皆、狼なんだ」
ステファンが声をかけてくるのに、グレンはなかば放心状態で応えた。
国境を超えたあたりからもう隠す必要がないと思ったのか狼頭に戻っているが、だんだん見慣れて気にならなくなっていた。
膝にシエルを抱っこしているが、旅の間にステファンを警戒しなくなったシエルは耳だけをぴくぴくさせている。
「もうヴォルフランドの中心ですから。ワーウルフ族ばかりですが、少数ですがグレン殿のような人間も住み着いているんですよ。」
「人間も・・・」
「ヴォルフランドはワーウルフの国ですが、ここに住みたいいう人がいれば受け入れます。婚姻することもあります。現にシエル様の母君もここに移住してきた人間です」
グレンは思わず驚く。
とすると、シエルは人とワーウルフの間に生れたハーフということになる。
そして、人間の国から離れたここに移住した人々の気持ちが何となくわかる気がした。
神秘的な地、そして狼の強さと美しさに彼らは魅せられてしまったに違いない。
馬車はそんな間もすすみ、だんだんと城影が近づいてきくる。
跳ね橋のところに迎えに出たと思われる一団がいるのが見える。
馬車が止まると、ステファンがまず降り、グレンが降り、ちょろりとシエルが続いた。
ワーウルフたちの中、彼らに囲まれるように一人だけ人間の女性がいた。ピンクブロンドの髪の美しい女性だ。
青い透き通るような瞳をしている。シエルと同じブルー。
もしかして、彼女がシエルの母なのだろうか。
「・・・シエル!」
彼女が唇を震わせながらちいさく叫ぶと、小狼はピクッと耳をたてた。
その美しい目から流れる涙を拭いもせず、彼女はシエルの前に走り寄るとしゃがみこんだ。
「シエル、こんなに大きくなって……」
シエルは伸ばされた白い腕を拒まなかった。
耳と体を伏せすこし踏ん張ったが、そのまま抱き上げられるにまかせる。
「あの方がシエル様の母君のレティシア様です」
ステファンがグレンの耳元に囁いた。
だが、グレンはそれを聞くどころではなかった。
母親の胸に抱かれた小狼の体が急に膨らみ変形したと思うと、急に黒い部分が白くなったように見えた。フサフサの体毛がなくなり、尖っていた耳、マズル、しっぽが消失する。
それはまばたきを数回するくらいのあっという間であった。
そして、彼女の腕に抱かれているのはもはや幼いケモ丿ではなかった。
黒髪に鮮やかなブルーの瞳の少年だった。
グレンたちの住まっていた村から馬車で獣人国の国境を超え、移動をすること数日。
幽玄な森の、霧と緑の幻想的な景色の中を通り抜けてゆくと、いきなり視界が開けて湖に囲まれた城が現れた。
湖はさながら天然の城壁で、城に通じる跳ね橋がかけられている。
城の後ろを見晴るかすと雪を被った険しい山々が見えた。
馬車が進んでゆくのにつれ、人とすれ違う。
いや、正確には人ではない。
グレンは馬車の窓から彼らを見る。
ーー狼の頭。
ワーウルフの国だけあり、もちろんそこにいる彼らもワーウルフであるのを、グレンは不思議な気持ちで見つめた。
まるで物語の中にでも入り込んでしまったようだ。
「違和感ありますか?」
「いや・・・なんか不思議でーー本当に皆、狼なんだ」
ステファンが声をかけてくるのに、グレンはなかば放心状態で応えた。
国境を超えたあたりからもう隠す必要がないと思ったのか狼頭に戻っているが、だんだん見慣れて気にならなくなっていた。
膝にシエルを抱っこしているが、旅の間にステファンを警戒しなくなったシエルは耳だけをぴくぴくさせている。
「もうヴォルフランドの中心ですから。ワーウルフ族ばかりですが、少数ですがグレン殿のような人間も住み着いているんですよ。」
「人間も・・・」
「ヴォルフランドはワーウルフの国ですが、ここに住みたいいう人がいれば受け入れます。婚姻することもあります。現にシエル様の母君もここに移住してきた人間です」
グレンは思わず驚く。
とすると、シエルは人とワーウルフの間に生れたハーフということになる。
そして、人間の国から離れたここに移住した人々の気持ちが何となくわかる気がした。
神秘的な地、そして狼の強さと美しさに彼らは魅せられてしまったに違いない。
馬車はそんな間もすすみ、だんだんと城影が近づいてきくる。
跳ね橋のところに迎えに出たと思われる一団がいるのが見える。
馬車が止まると、ステファンがまず降り、グレンが降り、ちょろりとシエルが続いた。
ワーウルフたちの中、彼らに囲まれるように一人だけ人間の女性がいた。ピンクブロンドの髪の美しい女性だ。
青い透き通るような瞳をしている。シエルと同じブルー。
もしかして、彼女がシエルの母なのだろうか。
「・・・シエル!」
彼女が唇を震わせながらちいさく叫ぶと、小狼はピクッと耳をたてた。
その美しい目から流れる涙を拭いもせず、彼女はシエルの前に走り寄るとしゃがみこんだ。
「シエル、こんなに大きくなって……」
シエルは伸ばされた白い腕を拒まなかった。
耳と体を伏せすこし踏ん張ったが、そのまま抱き上げられるにまかせる。
「あの方がシエル様の母君のレティシア様です」
ステファンがグレンの耳元に囁いた。
だが、グレンはそれを聞くどころではなかった。
母親の胸に抱かれた小狼の体が急に膨らみ変形したと思うと、急に黒い部分が白くなったように見えた。フサフサの体毛がなくなり、尖っていた耳、マズル、しっぽが消失する。
それはまばたきを数回するくらいのあっという間であった。
そして、彼女の腕に抱かれているのはもはや幼いケモ丿ではなかった。
黒髪に鮮やかなブルーの瞳の少年だった。
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