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第二章
1.探索の旅路にて
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旅の最中、街にたちよる度にグレンは何かお土産を探すのが癖になっている。
賑やかな市場の通りをシエルが喜びそうなものがないかとぶらついていると、ステファンが少し呆れたようにグレンの袖を引いた。
ワーウルフであるステファンは、今は人の街なので完全に人間に変身しているが、体格が大きいので目立たないようにか心なしか背中を丸めているのだが、その痛ましい努力はあまり実を結んでいるとは言い難かった。
「グレン殿、もうシエル殿下はそれで遊ぶ年じゃないと思いますよ」
グレンの目線の先には木でできた子供向けのおもちゃがあるのだが、彼らが最後に出会った数ヶ月前は、シエルの見た目は10代くらいであったからおもちゃで遊ぶ年齢はとうにすぎているだろう。
ワーウルフは戦士の一族であるせいか子供の期間はとても短くて、約2年ほどで成熟してしまう。
理解はしていても、人間であるグレンにとっては成長の早さに頭がついていかない。
「・・・そうだよな」
ステファンの助言に、グレンは肩を落とし、がりがりと頭をかいた。
息子の探索のため今は廃墟となったクロンダイク近郊とヴォルフランドを数ヶ月おきに行ったり来たりしているが、長距離の騎馬や、ヴォルフランドに滞在中はワーウルフの兵士に混じって鍛錬にくわわったり、手合わせをしたりするようになっているため、グレンは彼本来の精悍さをかなり取り戻していた。
「シエル殿下にとってはグレン殿と会えることが一番のお土産だと思いますよ」
「そうなら嬉しいな」
接していた時間が長い者のほうが気安いだろうとのことで、ステファンが旅の護衛として同行することが多い。
しかも元騎士団長と隊長と、似たような立場であった彼等であるから、一緒にいる時間分距離も近まっていた。
「しかし、もう諦めたほうがよいのだろうか」
今回も空振りで手がけりらしい手がかりもつかめないままだった。自分は自分を納得させたいがためにたくさんの人に無駄足を踏ませているのかもしれない。
思わず弱気につぶやくグレンをステファンは宥めた。
「納得いくまで探されたらよい。王からも最後まで力添えするようにと言われている」
「ありがとう」
「それにカンというものは馬鹿にならないと俺は思う。だから、グレン殿がそれだけ強く思うのは、やはり息子さんが生きてるという証左なのかもしれないと思う」
狼たちは誠実で優しい。
ありがたく思うが、実際はグレンは限界を感じていた。少なくともクロンダイクのあたりでは新しい情報は入手できていない。
他の方面で調べてくれている人々から何か情報が齎されない場合はどこかで気持ちをきちんと切り替えるべきだと、グレンは決意をしていた。
あの田舎の家に戻って、今度こそ犬を飼って、静かに暮らそう。
何年かに一回、シエルの元気な顔が見れたらなおいいのだが……
「グレン殿、食料の補充はしておいた。あとは前に言っていた薬草は…」
思案にくれていたグレンは、ステファンに問われてハッとした。
「それならもう買った」
買ったばかりの薬草が入った包みを見せる。
ヴォルフランド付近には自生していないため、手に入らなくて散々だったことが頭によぎり、固い表情になったグレンにステファンは気にするなというように肩を叩いた。
「とにかく、ヴォルフランドに帰ろう。もうすぐ月が満ちてしまう。その前に帰国しよう」
どちらともなく、空を仰ぎ見る。
昼間なのにうっすらと見える月の形は半分よりすこし大きくなっている。
3ヶ月に一回の満月がだんだん近くにせまっていた。
賑やかな市場の通りをシエルが喜びそうなものがないかとぶらついていると、ステファンが少し呆れたようにグレンの袖を引いた。
ワーウルフであるステファンは、今は人の街なので完全に人間に変身しているが、体格が大きいので目立たないようにか心なしか背中を丸めているのだが、その痛ましい努力はあまり実を結んでいるとは言い難かった。
「グレン殿、もうシエル殿下はそれで遊ぶ年じゃないと思いますよ」
グレンの目線の先には木でできた子供向けのおもちゃがあるのだが、彼らが最後に出会った数ヶ月前は、シエルの見た目は10代くらいであったからおもちゃで遊ぶ年齢はとうにすぎているだろう。
ワーウルフは戦士の一族であるせいか子供の期間はとても短くて、約2年ほどで成熟してしまう。
理解はしていても、人間であるグレンにとっては成長の早さに頭がついていかない。
「・・・そうだよな」
ステファンの助言に、グレンは肩を落とし、がりがりと頭をかいた。
息子の探索のため今は廃墟となったクロンダイク近郊とヴォルフランドを数ヶ月おきに行ったり来たりしているが、長距離の騎馬や、ヴォルフランドに滞在中はワーウルフの兵士に混じって鍛錬にくわわったり、手合わせをしたりするようになっているため、グレンは彼本来の精悍さをかなり取り戻していた。
「シエル殿下にとってはグレン殿と会えることが一番のお土産だと思いますよ」
「そうなら嬉しいな」
接していた時間が長い者のほうが気安いだろうとのことで、ステファンが旅の護衛として同行することが多い。
しかも元騎士団長と隊長と、似たような立場であった彼等であるから、一緒にいる時間分距離も近まっていた。
「しかし、もう諦めたほうがよいのだろうか」
今回も空振りで手がけりらしい手がかりもつかめないままだった。自分は自分を納得させたいがためにたくさんの人に無駄足を踏ませているのかもしれない。
思わず弱気につぶやくグレンをステファンは宥めた。
「納得いくまで探されたらよい。王からも最後まで力添えするようにと言われている」
「ありがとう」
「それにカンというものは馬鹿にならないと俺は思う。だから、グレン殿がそれだけ強く思うのは、やはり息子さんが生きてるという証左なのかもしれないと思う」
狼たちは誠実で優しい。
ありがたく思うが、実際はグレンは限界を感じていた。少なくともクロンダイクのあたりでは新しい情報は入手できていない。
他の方面で調べてくれている人々から何か情報が齎されない場合はどこかで気持ちをきちんと切り替えるべきだと、グレンは決意をしていた。
あの田舎の家に戻って、今度こそ犬を飼って、静かに暮らそう。
何年かに一回、シエルの元気な顔が見れたらなおいいのだが……
「グレン殿、食料の補充はしておいた。あとは前に言っていた薬草は…」
思案にくれていたグレンは、ステファンに問われてハッとした。
「それならもう買った」
買ったばかりの薬草が入った包みを見せる。
ヴォルフランド付近には自生していないため、手に入らなくて散々だったことが頭によぎり、固い表情になったグレンにステファンは気にするなというように肩を叩いた。
「とにかく、ヴォルフランドに帰ろう。もうすぐ月が満ちてしまう。その前に帰国しよう」
どちらともなく、空を仰ぎ見る。
昼間なのにうっすらと見える月の形は半分よりすこし大きくなっている。
3ヶ月に一回の満月がだんだん近くにせまっていた。
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