騎士団長、狼王の花嫁になるーー拾った子犬はワーウルフの王子でした

鳥海あおい

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第二章

2.シエルの成長

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「レン!」

長旅を共に費やした馬を厩に戻し、疲れを充分労ってやってから厩から出たグレンは、不意打ちを食らって転びそうになった。

彼の姿を見るたびにどすんと飛び込んでくる仕草は、小狼の時から変わらない。
だが、今となっては----驚愕を覚えながら、少し会わないうちにまた成長したシエルを見る。
まだ完全に大人ではないのにも関わらず、すでに目線の高さがグレンのそれを超えていた。
黒黒とした髪は成長と共にきらめくよくな黒銀色に変化したので、そうすると小さくて可愛い子犬だったブルーの名残りはというと、その目の鮮やかなブルーの色彩だけである。

片親が人間だからか完全な人型でいる時が多い気がするが、母親の繊細な美麗さと父親のたくまさと精悍さを受け継いだワーウルフの王子は、ほれぼれするような立派な青年になりつつあった。

「シエル。だいぶ大きくなったなあ。元気だったか?」 

「元気じゃない!なかなかレンが帰ってこないから寂しかった」

思わずつぶやくと、シエルは口を尖らせ、甘えるようにグレンの肩にもたれた。
二人の話し始めた様子に、グレンとともにいたステファンは一礼して下がっていった。
その後ろ姿を、シエルはじろりと見た。

「ステファンはずっとレンといっしょにいてずるい。僕が一緒にいければいいのに」

「それは・・・父上と母上が心配してしまう」

ふてくされる様子を見て、思わず苦笑する。
なりは大きいが、まだまだ子供みたいで、慕ってくる可愛くてたまらない。
グレンは思わずその光沢のある髪をくしゃくしゃと撫でた。

「まだまだ子供だな」

「もう子供じゃないよ」

ぎゅっと、抱きつく腕が強くなる。
だが、あまりにも真剣な顔で言うので、ついドキリとしてしまう。
青い目がじっと彼を見つめてきた。

「・・・なんかレン、いい匂いする気がする」

「いやいや、帰ってきたばかりで汚れてるから」

クンクン匂いを嗅いでいるシエルを、グレンはさりげなさを装おって振りほどいた。

「じゃあ、子供じゃなくなったところを見せてもらおうかな。手合わせしようか?最近、かなり剣が強くなったと聞いた」

「うん、レンにはまだ勝てないかもだけどね。でも今日は疲れているみたいだから、明日にでも」

「じゃあ明日修錬場で」

いつもはしつこくまとわりついて部屋までくっついてくるのに、思ったよりあっさりとシエルは離れた。

城内の自分の部屋に戻ると、グレンは背嚢を置き、寝台に身体を横たえた。
ありがたいことに部屋は主不在の間もきちんと清掃されてているので、さらさらした清潔なシーツが気持ちがよい。
泥のように疲れていて、一度横になると起き上がれなくて、こんな時に自分の年齢を感じてしまう。


無事に帰ってれて、シエルの元気な顔を見るとホっとするし、ヴォルフランドでは快適な暮らしを提供されてはいる。
だが、そろそろここから去らるときが来たのだと強く感じていた。

明日、シエルと手合わせしたら、ヴォルフランドを出て家に戻るつもりだと告げようと思いながら、グレンは深い眠りに引き込まれていった。

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