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第1章――3 【 修業の日々/吸血鬼の悦楽 】
第24・5話 朝霧に包まれた景色を
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――朝の気配と共に無理矢理気味に目を醒まして、隣で眠る女性起こさないようにそっととベッドから出て起き上がる。
ぐっと腕と背筋を伸ばして、まだ朦朧としている意識の覚醒を促す。それから寝間着からジャージに着替え、静かに扉を開いて部屋を後にする。
「――行ってきます」
きっと夢の中にいるキミにはこの小さな声音は届かないだろう。分かっていてそれでも何も言わぬまま部屋を出て行くのは気が引けて、僕は眠るリリスにそう言葉を残してから部屋の扉を閉じた。
そして廊下に出てエントランスへと降り、まだミリシャさんの姿はない受付を抜けて宿を出る。
「んんっー! いい空気だぁ」
まだ陽が昇り始めて間もないシエルレントの早朝は白い霧が立ち込めていて、肺に取り込む空気は冷たく清涼感がある。それが丁度いい眠気覚ましになってくれて、意識が一気に覚醒していく。
「よし。今日はとりあえず、中央広場までランニングしよう」
入念にストレッチして、その場で数回ほど軽くジャンプ。短く呼気を吐いてから、僕は気合を入れて地面を蹴った。
「――はっ、はっ、はっ」
早朝の静謐な空気と町の景観を楽しみながら、無理のないペースで設定した目的地までランニング。
「あら、おはようセンリくん。こんな朝早くからランニングなんて珍しい」
「おはようございます。スクセさん」
下り坂を順調に降りていくとビールの朝食係を担っているスクセさんとばったり遭遇した。
僕がリリスと共に行動している場面をよく見る彼女は、一人でランニングしている僕を見て意外そうに目を丸くしていた。
「実は今日からトレーニングを始めようと思って」
「へぇ。それは健康の為かしら?」
「いえ。冒険者になる為にです」
「あらそうだったの! 前に聞いた時はただの旅人って聞いたから、そう、センリくんは冒険者になりたいのね」
「はい。その為に今日からトレーニングを始めたんです。まずは片手剣を満足に触れるくらいには筋力と体力を付けようと思って」
「ふふ。センリくんはとても真面目ね。うちの飲んだくれ冒険者たちにセンリくんの爪垢を煎じて飲ませてやりたいわ」
「……あはは」
さらりとエグいことを言ったスクセさんに思わず苦笑い。それから彼女と少し会話を重ねて、
「それじゃあ、トレーニング頑張って。そうだ。朝食、頑張るセンリくんを応援してちょっとだけサービスしておいてあげるわね」
「わぁ、本当ですか! ありがとうございます!」
「ふふ。愛するリリスさんの為に、頑張ってね」
「……は、はい」
内心を見透かされたようにそう言われて、僕は照れて赤く染まった顔を俯かせて尻すぼんだ声で返事した。
そんな分かりやすい反応を見せた僕をスクセさんは面白おかしそうにくすくすと笑って、「また後でね」と淑やかに手を振りながら歩き出した。
僕は「はいっ」とスクセさんに短く会釈をしてから気を引き締め直すようにまだ朱が残る頬を叩いて再び走り出した。
「(――一日でも早くリリスに追いついて、それで貰った恩をちゃんと返すんだ)」
それが僕がトレーニングする理由にして、最終的な目標。
始まりは歪であれど、リリスといたからこの異世界で不自由なく過ごせている。その恩は尽きるばかりか日を重ねる毎に増している。
少しずつ、少しずつでいい。リリスから貰っている恩を返して、そしていつの日か必ず、彼女と対等の存在になるんだ。
きっとその時が、僕が彼女の真のパートナーとして隣立つ時。
たぶんリリスは僕に恩を売っているなんて微塵も思ってないだろうし、既に僕のことを対等な旅のパートナーとして接してくれているとは思うけど。
「……好きな人に頼られたいって思っちゃうのは、男の性なんだろうなぁ」
そんなちっぽけで、けれどどうしても譲れないプライドが、今の僕を突き動かす原動力になっていた。
今はまだ、頼りない弟みたいな存在だけど。
けれどいつか必ず、彼女にとって頼り甲斐のある存在になってみせる。そう、心に誓って。
「一日でも早く成長して、そしてリリスにいい所見せるんだ!」
新しい誓いと決意と共に、僕は強く、強く大地を蹴った――。
ぐっと腕と背筋を伸ばして、まだ朦朧としている意識の覚醒を促す。それから寝間着からジャージに着替え、静かに扉を開いて部屋を後にする。
「――行ってきます」
きっと夢の中にいるキミにはこの小さな声音は届かないだろう。分かっていてそれでも何も言わぬまま部屋を出て行くのは気が引けて、僕は眠るリリスにそう言葉を残してから部屋の扉を閉じた。
そして廊下に出てエントランスへと降り、まだミリシャさんの姿はない受付を抜けて宿を出る。
「んんっー! いい空気だぁ」
まだ陽が昇り始めて間もないシエルレントの早朝は白い霧が立ち込めていて、肺に取り込む空気は冷たく清涼感がある。それが丁度いい眠気覚ましになってくれて、意識が一気に覚醒していく。
「よし。今日はとりあえず、中央広場までランニングしよう」
入念にストレッチして、その場で数回ほど軽くジャンプ。短く呼気を吐いてから、僕は気合を入れて地面を蹴った。
「――はっ、はっ、はっ」
早朝の静謐な空気と町の景観を楽しみながら、無理のないペースで設定した目的地までランニング。
「あら、おはようセンリくん。こんな朝早くからランニングなんて珍しい」
「おはようございます。スクセさん」
下り坂を順調に降りていくとビールの朝食係を担っているスクセさんとばったり遭遇した。
僕がリリスと共に行動している場面をよく見る彼女は、一人でランニングしている僕を見て意外そうに目を丸くしていた。
「実は今日からトレーニングを始めようと思って」
「へぇ。それは健康の為かしら?」
「いえ。冒険者になる為にです」
「あらそうだったの! 前に聞いた時はただの旅人って聞いたから、そう、センリくんは冒険者になりたいのね」
「はい。その為に今日からトレーニングを始めたんです。まずは片手剣を満足に触れるくらいには筋力と体力を付けようと思って」
「ふふ。センリくんはとても真面目ね。うちの飲んだくれ冒険者たちにセンリくんの爪垢を煎じて飲ませてやりたいわ」
「……あはは」
さらりとエグいことを言ったスクセさんに思わず苦笑い。それから彼女と少し会話を重ねて、
「それじゃあ、トレーニング頑張って。そうだ。朝食、頑張るセンリくんを応援してちょっとだけサービスしておいてあげるわね」
「わぁ、本当ですか! ありがとうございます!」
「ふふ。愛するリリスさんの為に、頑張ってね」
「……は、はい」
内心を見透かされたようにそう言われて、僕は照れて赤く染まった顔を俯かせて尻すぼんだ声で返事した。
そんな分かりやすい反応を見せた僕をスクセさんは面白おかしそうにくすくすと笑って、「また後でね」と淑やかに手を振りながら歩き出した。
僕は「はいっ」とスクセさんに短く会釈をしてから気を引き締め直すようにまだ朱が残る頬を叩いて再び走り出した。
「(――一日でも早くリリスに追いついて、それで貰った恩をちゃんと返すんだ)」
それが僕がトレーニングする理由にして、最終的な目標。
始まりは歪であれど、リリスといたからこの異世界で不自由なく過ごせている。その恩は尽きるばかりか日を重ねる毎に増している。
少しずつ、少しずつでいい。リリスから貰っている恩を返して、そしていつの日か必ず、彼女と対等の存在になるんだ。
きっとその時が、僕が彼女の真のパートナーとして隣立つ時。
たぶんリリスは僕に恩を売っているなんて微塵も思ってないだろうし、既に僕のことを対等な旅のパートナーとして接してくれているとは思うけど。
「……好きな人に頼られたいって思っちゃうのは、男の性なんだろうなぁ」
そんなちっぽけで、けれどどうしても譲れないプライドが、今の僕を突き動かす原動力になっていた。
今はまだ、頼りない弟みたいな存在だけど。
けれどいつか必ず、彼女にとって頼り甲斐のある存在になってみせる。そう、心に誓って。
「一日でも早く成長して、そしてリリスにいい所見せるんだ!」
新しい誓いと決意と共に、僕は強く、強く大地を蹴った――。
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