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第1章――6 【 ニュースタイル/吸血鬼と双剣 】
第52話 戦闘後の一幕
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「失礼しま……センリ! 目が覚めたのね!」
「マーガレット! それにアイゼンさんも!」
こんこん、と扉をノックする音が聞こえて、それから室内に入って来たのはマーガレットとアイゼンさんだった。
マーガレットは眠りから覚めた僕を確認するや否や、小走りで駆け寄ってきて、そしてぎゅっと抱きしめてきた。
「本当によかった! 貴方が起きてくれて!」
「い、いだいいだい⁉ まだ傷治ってないから! あんまり強く抱きしめないで!」
「ご、ごめんなさい! つい嬉しさのあまり強く抱きしめちゃった」
マーガレットは慌てて僕から離れると、その目尻にはほろりと小さな雫が浮かんでいた。どうやら、僕はリリスだけじゃなくて色々な人たちに心配を掛けてしまっていたみたいだ。
「なんだよ。復活早々二人の女とイチャイチャするとはな。心配して損した気分だぜ」
「あはは。お久しぶりです。アイゼンさん」
「おう」
僕とマーガレットのやり取りを見届けてからアイゼンさんも会話に加わった。
「思ったより元気そうだな」
「はい。とはいっても、まだ動く度に激痛が走るんですけどね」
「相当重症だったからな。こうして生きてるのが奇跡なくらいだ。その話はもう?」
「はい。リリスから概ね聞きました」
「そっか。じゃあ、俺たちはめんどくせー説明をしなくて済んだわけだ。……あ、これ見舞いの品な」
「ありがとうございます」
アイゼンさんは手に持った見舞い品を病室に設けられた棚に置いたあと、マーガレットと共に簡易椅子に腰を掛けた。
「アイゼンさんなんですよね。僕をこの病院まで運んでくれたの」
「あぁ。つっても俺はリリス嬢の命令に従っただけだけどな。怪物との戦闘はぜーんぶリリス嬢に丸投げさせちまった」
「あそこにアンタが居ても邪魔なだけだったからね。できる事なんてせいぜい避難民の誘導か人車が関の山よ」
「うぐっ。お、俺だって? あそこにいたら怪物と戦ってたし? なんならそのまま倒しちゃってたかもしれないし?」
「へぇ。その割にはアレを見た時ビビってたように見えてたけど?」
「び、ビビッてねえし!」
「こらこら二人とも。病人挟んで喧嘩しない」
「あははっ……あてて」
なんだか懐かしい感じの雰囲気に堪らず笑いが込み上がってくる。ただ笑うと骨が軋んで痛みが襲ってくるのが厄介だった。
「おっとと。平気か?」
「はい。ゆっくりと動けばそこまで痛みはないんですけど、起き上がろうとしたり今みたく笑ったりするとどうしても」
「……あんまり長居は良くなさそうだな」
「すいません。せっかくお見舞いに来てくれたのに」
「気にすんな。お前の元気そうな顔をまた見れただけでも来た甲斐があるってもんだからな」
アイゼンさんと損な会話をしていると、
「ごめんなさい!」
「マーガレット?」
唐突に頭を下げたマーガレットに、僕は訳が分からず混乱する。
「どうしたの急に。謝ったりして?」
「……だって、センリがそんな傷を負ったのは、私のせいだから……」
「マーガレットのせいじゃないよ。これは僕が……」
「違うわよ!」
自分で選んで決めたこと。そう言おうとして、しかし言葉はマーガレットの今にも泣きだしそうな声に遮られた。
「あの時私が、センリが駆けつけてくれた時すぐに逃げていれば、ううん。それよりももっと早く、戦う覚悟ができていれば、貴方をこんなに目に遭わせていなかったかもしれない」
「……マーガレット」
それはきっと、彼女自身の悔悟なのだろう。己の無力を嘆き、それを誰かに糾弾されたがっているように見えた。けれど、それは大間違いだ。
「マーガレットが負い目を感じる必要なんてないんだよ。それに、むしろ感謝しなきゃいけない」
「……ぇ?」
それまで涙を堪えようとして俯いていた顔が、僕の言葉を聞いて驚いたように上がった。
大きく目を見開いたまま、潤んだ瞳で見つめるマーガレットに、僕は微笑みを浮かべながら言った。
「僕が倒れた時、マーガレット、僕のことを庇おうとしてくれたよね?」
「……う、うん」
「きっとあの時、マーガレットが僕のことを庇ってくれなかったら、リリスが駆けつけてくれる前に本当にやられてた」
それだけじゃない。
「それに、これは僕の気のせいかもしれないんだけどさ。僕が怪物の剣で斬られる直前、なんか魔法みたいなものを掛けられた気がしたんだよね」
僕が確かめるようにそう訊ねると、マーガレットはぎこちなく肯定した。
「うん。確かにあの時、センリの防具に防御力が上がる魔法を掛けた。でも、結局無意味だったけど」
やっぱりそうだ。僕の感覚は間違ってなかった。
「意味なくなんかないよ。きっと、あの時マーガレットが僕にその魔法を掛けてくれたから、僕はギリギリ生きられたんだと思う。その魔法がなかったら、もっと致命傷を負って、それこそリリスが駆けつけてくれる前に死んでたはずだよ」
剣を断つほどの斬撃を食らった割に傷口がそれなりに浅く済んだのは、間違いなくマーガレットのおかげだ。
死ぬ気はなかったけど、死ぬつもりはあった。それでもこうして生き延びられたのは、
「ありがとう。マーガレット。僕のことを守ってくれて」
「……あぁもうっ、あなたって……ほんっとうに……ぐすっ……お人好し、なんだからぁ……こっちがどれだけひぐっ……心配したて……ずっと怖かったんだからあ!」
「不安にさせちゃってごめん。でももう大丈夫。僕はちゃんと、ここにいるから」
「ふわーん!」
「あーあ。遂に爆発しちまった」
告げた感謝にマーガレットが遂に堪え切れなくなって、大粒な涙を溢し出した。必死に拭おうにも次々と溢れるそれは、彼女の心労とずっと胸裏に抱えていた不安を現わしているように見えて。
「……とりあえず、ここにいる全員。ご苦労さん、ってことだな」
「あはは。ですね」
しばらく病室に鳴き声が木霊して、僕たちはそれを微笑ましそうに聞いていた。
「マーガレット! それにアイゼンさんも!」
こんこん、と扉をノックする音が聞こえて、それから室内に入って来たのはマーガレットとアイゼンさんだった。
マーガレットは眠りから覚めた僕を確認するや否や、小走りで駆け寄ってきて、そしてぎゅっと抱きしめてきた。
「本当によかった! 貴方が起きてくれて!」
「い、いだいいだい⁉ まだ傷治ってないから! あんまり強く抱きしめないで!」
「ご、ごめんなさい! つい嬉しさのあまり強く抱きしめちゃった」
マーガレットは慌てて僕から離れると、その目尻にはほろりと小さな雫が浮かんでいた。どうやら、僕はリリスだけじゃなくて色々な人たちに心配を掛けてしまっていたみたいだ。
「なんだよ。復活早々二人の女とイチャイチャするとはな。心配して損した気分だぜ」
「あはは。お久しぶりです。アイゼンさん」
「おう」
僕とマーガレットのやり取りを見届けてからアイゼンさんも会話に加わった。
「思ったより元気そうだな」
「はい。とはいっても、まだ動く度に激痛が走るんですけどね」
「相当重症だったからな。こうして生きてるのが奇跡なくらいだ。その話はもう?」
「はい。リリスから概ね聞きました」
「そっか。じゃあ、俺たちはめんどくせー説明をしなくて済んだわけだ。……あ、これ見舞いの品な」
「ありがとうございます」
アイゼンさんは手に持った見舞い品を病室に設けられた棚に置いたあと、マーガレットと共に簡易椅子に腰を掛けた。
「アイゼンさんなんですよね。僕をこの病院まで運んでくれたの」
「あぁ。つっても俺はリリス嬢の命令に従っただけだけどな。怪物との戦闘はぜーんぶリリス嬢に丸投げさせちまった」
「あそこにアンタが居ても邪魔なだけだったからね。できる事なんてせいぜい避難民の誘導か人車が関の山よ」
「うぐっ。お、俺だって? あそこにいたら怪物と戦ってたし? なんならそのまま倒しちゃってたかもしれないし?」
「へぇ。その割にはアレを見た時ビビってたように見えてたけど?」
「び、ビビッてねえし!」
「こらこら二人とも。病人挟んで喧嘩しない」
「あははっ……あてて」
なんだか懐かしい感じの雰囲気に堪らず笑いが込み上がってくる。ただ笑うと骨が軋んで痛みが襲ってくるのが厄介だった。
「おっとと。平気か?」
「はい。ゆっくりと動けばそこまで痛みはないんですけど、起き上がろうとしたり今みたく笑ったりするとどうしても」
「……あんまり長居は良くなさそうだな」
「すいません。せっかくお見舞いに来てくれたのに」
「気にすんな。お前の元気そうな顔をまた見れただけでも来た甲斐があるってもんだからな」
アイゼンさんと損な会話をしていると、
「ごめんなさい!」
「マーガレット?」
唐突に頭を下げたマーガレットに、僕は訳が分からず混乱する。
「どうしたの急に。謝ったりして?」
「……だって、センリがそんな傷を負ったのは、私のせいだから……」
「マーガレットのせいじゃないよ。これは僕が……」
「違うわよ!」
自分で選んで決めたこと。そう言おうとして、しかし言葉はマーガレットの今にも泣きだしそうな声に遮られた。
「あの時私が、センリが駆けつけてくれた時すぐに逃げていれば、ううん。それよりももっと早く、戦う覚悟ができていれば、貴方をこんなに目に遭わせていなかったかもしれない」
「……マーガレット」
それはきっと、彼女自身の悔悟なのだろう。己の無力を嘆き、それを誰かに糾弾されたがっているように見えた。けれど、それは大間違いだ。
「マーガレットが負い目を感じる必要なんてないんだよ。それに、むしろ感謝しなきゃいけない」
「……ぇ?」
それまで涙を堪えようとして俯いていた顔が、僕の言葉を聞いて驚いたように上がった。
大きく目を見開いたまま、潤んだ瞳で見つめるマーガレットに、僕は微笑みを浮かべながら言った。
「僕が倒れた時、マーガレット、僕のことを庇おうとしてくれたよね?」
「……う、うん」
「きっとあの時、マーガレットが僕のことを庇ってくれなかったら、リリスが駆けつけてくれる前に本当にやられてた」
それだけじゃない。
「それに、これは僕の気のせいかもしれないんだけどさ。僕が怪物の剣で斬られる直前、なんか魔法みたいなものを掛けられた気がしたんだよね」
僕が確かめるようにそう訊ねると、マーガレットはぎこちなく肯定した。
「うん。確かにあの時、センリの防具に防御力が上がる魔法を掛けた。でも、結局無意味だったけど」
やっぱりそうだ。僕の感覚は間違ってなかった。
「意味なくなんかないよ。きっと、あの時マーガレットが僕にその魔法を掛けてくれたから、僕はギリギリ生きられたんだと思う。その魔法がなかったら、もっと致命傷を負って、それこそリリスが駆けつけてくれる前に死んでたはずだよ」
剣を断つほどの斬撃を食らった割に傷口がそれなりに浅く済んだのは、間違いなくマーガレットのおかげだ。
死ぬ気はなかったけど、死ぬつもりはあった。それでもこうして生き延びられたのは、
「ありがとう。マーガレット。僕のことを守ってくれて」
「……あぁもうっ、あなたって……ほんっとうに……ぐすっ……お人好し、なんだからぁ……こっちがどれだけひぐっ……心配したて……ずっと怖かったんだからあ!」
「不安にさせちゃってごめん。でももう大丈夫。僕はちゃんと、ここにいるから」
「ふわーん!」
「あーあ。遂に爆発しちまった」
告げた感謝にマーガレットが遂に堪え切れなくなって、大粒な涙を溢し出した。必死に拭おうにも次々と溢れるそれは、彼女の心労とずっと胸裏に抱えていた不安を現わしているように見えて。
「……とりあえず、ここにいる全員。ご苦労さん、ってことだな」
「あはは。ですね」
しばらく病室に鳴き声が木霊して、僕たちはそれを微笑ましそうに聞いていた。
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