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第1章――6 【 ニュースタイル/吸血鬼と双剣 】
第56話 悪夢の中の幕間
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すぐ隣で聞こえる寝息に安心感を覚えながら、暗闇に沈んでいた意識はゆっくりと浮上を始めていく。
「――ん。……あさ」
微かに感じる朝の兆しに誘われるように瞼を開けば、僕の視界に最初に映ったのは赤髪の女性の心地よさそうな寝顔だった。
「ふふ」
何度見ても飽きない光景は自然と口許を綻んだ。その寝顔を見る度に自分は生きて戻って来たのだと思わされる。
もう少し彼女の寝顔を見てから朝のランニングに行こう、そう思案していると、不意に僕の頭に腕が伸びてきて。
「……うぅん」
「わ」
寒いのか、人肌を求めるように僕へと腕を伸ばしたリリスに捕まってしまった。
まぁ完全に無意識だろうし、解こうと思えばすぐに振りほどける、とそう思っていたんだけど、ぐっと頭を退いてもリリスの腕が動くことはなかった。
……もしかして。
「もうすこし、いっしょにねましょ」
「やっぱ起きてる」
目は瞑ったまま口だけを動かしたそう言ったリリスに、僕は微苦笑をこぼす。
「でもランニングに行かないと」
「うぅん」
行っちゃダメ、と引き留めるようにリリスが更に僕を抱きしめてくる。顔がリリスの熟れた二つの果実に埋もれるほどに圧迫されて、これじゃあ離れようにも離れらない。
必死に抗おうにも、女性特有の柔らかさと温もりの前では、たちまち抵抗力は削がれていってしまい。
「……たまには、いいか」
「ふへへー」
お互い昨夜は久々の行為ということもあって想像以上に盛り上がってしまった。そしてどうやらその熱の余韻は眠ってもまだ残っているみたいで。
「(やっぱリリスの温もりが一番安心するな)」
吸血鬼の甘い誘惑に誘われるまま、僕は二度目の睡眠を堪能した。
*****
「うおっ。……こりゃまた、グロい」
「だな」
早朝。住民からの通報を受け急いで駆けつけた俺たち衛兵は、血塗れの裏路地を見て戦慄を隠さずにはいられなかった。
噴水広場での一件以降、こちらの労力を悉く無駄骨にするように音沙汰を失くした例の魔物だが、どうやらまた活動を再開させたらしい。
俺たちは催した吐き気をどうにか抑えながら奥へと進んでいくと、路地裏で倒れている男性と女性を確認した。
そのどちらも魂は既に此処にはなく、あるのは亡骸となった身体だけ。
男性の方は壁にもたれかかるように、女性の方は投げ捨てられたように地面に倒れてそのままぴくりとも動いていない。
「男女の痴情の縺れ、な訳はないか」
「戯言を吐く暇があるなら手を動かせ。傷を見れば、そんなこと明白だろう」
連日徹夜続きでろくに眠っていない同僚からのキツイ一喝を受けて、俺は「へいへい」と適当に相槌を打つ。
「……にしても、酷いな」
「あぁ。この傷からして、犯人は例の魔物で間違いない」
今シエルレントを脅かす連続殺人鬼。その正体は現在の所『魔物』と断定されている。ギルド側から人間の可能性も考慮すべし、と追加の報告も受けたが、俺たち衛兵は『魔物』と断定して行動している。
「悪趣味な模倣犯、って可能性も今回はあるんじゃないか?」
「そんな俺たちの仕事が増えるような真似は止めて欲しいな」
「フッ。同感だ」
それに、この町でもう誰かが死ぬのは勘弁して欲しいものだ。
そんな願いも裏腹に、魔物はまだこの町に潜んでいて、またいつ誰を襲うのかも分からない。
「とりあえず、俺たちは今できる最善を尽くすしかねぇよな」
「それが分かってるなら早く手を動かせ。お前がぐだぐだしてたら終わる仕事も終わらん」
この二ヵ月ですっかり短気になってしまった同僚に、俺はため息を吐きながら「へいへい」と適当に返事したのだった。
「(この事件が解決したら、コイツに酒でも奢ってやるかな)」
いつ終わるかも分からないこの悪夢に、けれど誰かが終わらせてくれるかもしれないとう、儚い希望を抱きながら、今日も俺たちは死者を弔った。
「――ん。……あさ」
微かに感じる朝の兆しに誘われるように瞼を開けば、僕の視界に最初に映ったのは赤髪の女性の心地よさそうな寝顔だった。
「ふふ」
何度見ても飽きない光景は自然と口許を綻んだ。その寝顔を見る度に自分は生きて戻って来たのだと思わされる。
もう少し彼女の寝顔を見てから朝のランニングに行こう、そう思案していると、不意に僕の頭に腕が伸びてきて。
「……うぅん」
「わ」
寒いのか、人肌を求めるように僕へと腕を伸ばしたリリスに捕まってしまった。
まぁ完全に無意識だろうし、解こうと思えばすぐに振りほどける、とそう思っていたんだけど、ぐっと頭を退いてもリリスの腕が動くことはなかった。
……もしかして。
「もうすこし、いっしょにねましょ」
「やっぱ起きてる」
目は瞑ったまま口だけを動かしたそう言ったリリスに、僕は微苦笑をこぼす。
「でもランニングに行かないと」
「うぅん」
行っちゃダメ、と引き留めるようにリリスが更に僕を抱きしめてくる。顔がリリスの熟れた二つの果実に埋もれるほどに圧迫されて、これじゃあ離れようにも離れらない。
必死に抗おうにも、女性特有の柔らかさと温もりの前では、たちまち抵抗力は削がれていってしまい。
「……たまには、いいか」
「ふへへー」
お互い昨夜は久々の行為ということもあって想像以上に盛り上がってしまった。そしてどうやらその熱の余韻は眠ってもまだ残っているみたいで。
「(やっぱリリスの温もりが一番安心するな)」
吸血鬼の甘い誘惑に誘われるまま、僕は二度目の睡眠を堪能した。
*****
「うおっ。……こりゃまた、グロい」
「だな」
早朝。住民からの通報を受け急いで駆けつけた俺たち衛兵は、血塗れの裏路地を見て戦慄を隠さずにはいられなかった。
噴水広場での一件以降、こちらの労力を悉く無駄骨にするように音沙汰を失くした例の魔物だが、どうやらまた活動を再開させたらしい。
俺たちは催した吐き気をどうにか抑えながら奥へと進んでいくと、路地裏で倒れている男性と女性を確認した。
そのどちらも魂は既に此処にはなく、あるのは亡骸となった身体だけ。
男性の方は壁にもたれかかるように、女性の方は投げ捨てられたように地面に倒れてそのままぴくりとも動いていない。
「男女の痴情の縺れ、な訳はないか」
「戯言を吐く暇があるなら手を動かせ。傷を見れば、そんなこと明白だろう」
連日徹夜続きでろくに眠っていない同僚からのキツイ一喝を受けて、俺は「へいへい」と適当に相槌を打つ。
「……にしても、酷いな」
「あぁ。この傷からして、犯人は例の魔物で間違いない」
今シエルレントを脅かす連続殺人鬼。その正体は現在の所『魔物』と断定されている。ギルド側から人間の可能性も考慮すべし、と追加の報告も受けたが、俺たち衛兵は『魔物』と断定して行動している。
「悪趣味な模倣犯、って可能性も今回はあるんじゃないか?」
「そんな俺たちの仕事が増えるような真似は止めて欲しいな」
「フッ。同感だ」
それに、この町でもう誰かが死ぬのは勘弁して欲しいものだ。
そんな願いも裏腹に、魔物はまだこの町に潜んでいて、またいつ誰を襲うのかも分からない。
「とりあえず、俺たちは今できる最善を尽くすしかねぇよな」
「それが分かってるなら早く手を動かせ。お前がぐだぐだしてたら終わる仕事も終わらん」
この二ヵ月ですっかり短気になってしまった同僚に、俺はため息を吐きながら「へいへい」と適当に返事したのだった。
「(この事件が解決したら、コイツに酒でも奢ってやるかな)」
いつ終わるかも分からないこの悪夢に、けれど誰かが終わらせてくれるかもしれないとう、儚い希望を抱きながら、今日も俺たちは死者を弔った。
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