憧れの異世界で極楽至上のハーレムを

ゆのや@1作品書籍化!!(予定)

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第1章――7 【 センリVS魔剣/吸血鬼と共に 】

第63話 ニュースタイル/覚醒

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捌け捌け捌け捌け捌け捌け捌け捌け捌け捌け捌け捌け捌け捌け捌け捌け捌け捌け捌け――攻撃全部捌け!

「ヴオオオオオオ!」
「――ッッ!」

 前回の怪物――ベルクトとの戦いで、アカツキ・センリは自身に新たな可能性を見つけた。

 先の戦いでセンリはベルクトの鬼神と呼ぶに相応しい攻撃を十分近くいなし続けた。その一撃でも食らえば致命傷という攻撃をいなし続けたセンリの集中力と動体視力は極限状態へと至り、それが彼を強制的に次のレベルまで引き上げた。

 それはまるで蕾が開花し大輪を咲かせるように。この世界に転移してからひたすらに積み上げた戦闘と修練が、『死』という強烈な感情のトリガーによって彼の才能を開花させた。

 あるいは人はそれを――『覚醒』と呼ぶのだろう。

 覚醒以前から他者より突出していた直感と危機感知も同様に更に発達し、センリは以前よりも相手の行動が視えるようになった。

 そんな彼が入院中に新たに選んだ武器が、中剣と短剣の二本構えで戦う――〝双剣〟だった。

 いなす、捌く、の能力技術が飛躍的に向上したセンリにとって、双剣はまさに自分にハマっていた武器だった。

 センリの以前の攻撃スタイルは、相手の攻撃をいなしてから反撃するカウンター方式。双剣はそんな彼の戦闘スタイルを更に磨きをかけた。

 剣が短く、軽量化してしまったせいで一撃の攻撃力は落ちたが、元々攻撃力が低いセンリにとっては特に影響はなく、それよりも構える剣が一本増えたことで連撃性が上がったことで総合的な攻撃力は上昇したと言えよう。

 さらに戦闘での小回りが利くようになり俊敏性も向上した。

 双剣のデメリットであるリーチの短さも、センリ自身の能力によって補うことができる。しかし、センリ自身の最大の弱点である体力のなさには拍車が掛かってしまったが。

「(少しでも余裕ができたら息継ぎ! ちょっとでもいい! 肺に酸素を取り込め!)」

 呼吸は哺乳類でも海中を長く泳ぎ続けられるクジラを意識しているが、雨のように降り注ぐ剣撃の中ではそれすらも難しい。

 まるでずっと海中の中にいるみたいだと苦笑いしながら、センリは迫り来る剣撃を双つの剣で捌き続ける。

 ジャリリリ! と激しく散る火花を散らしながら流れていく剣線が、この武器を選んで正解だったと彼に自信を持たせる何より証だ。

 そして、彼が剣の雨を必死に捌き続ける光景を遠くから眺めていたリリスたちはというと、

「……んだよ。あの動き」
「あら。こんな近くに来ていいの? 巻き込まれても助けないわよ」
「すぐ離脱するわ! 加勢しに来たけど、俺が邪魔になるってことだけは、嫌でも理解させられる」
「落ち込んでるようだけど安心しなさい。あれは、私にも手が出せないから」

 センリとベルクトの、文字通り割って入る隙がない苛烈な攻防は、リリスの実力を以てしても「圧巻」と言わせしめるものだった。最もリリスの場合は、別の理由もあるのだが。

「私が下手に手を出してセンリの機嫌を損ねたくない。だから戦いに参加するのはもうちょっと後」
「もしかしたらこのままセンリ一人でやっちまう、なんてことは」
「いくら急成長しようと、流石にアレ一人はあの子にはまだ無理よ」

 センリのことはこの中ではリリスが最もよく理解している。センリの成長速度には確かに目を瞠るものがあるが、しかしまだ欠点も多分にあることを、リリスはよく知っている。

 一つは体力のなさ。そしてもう一つは、

「ギルドを出る前に身体強化エンハンスを掛けてあげるっていったのに、あの子「それじゃあリリスが魔法を使えなくなるから必要ない。自分で掛ける」って言ったの。べつに同時に扱える魔法が限られるだけなのに」
「ん? センリって身体強化の魔法使えたのか?」
「あの子がまだそんな上位魔法使えるわけないでしょう。それでも教えて欲しいって強請ねだるから教えたの」
「で、結局使えるようになったのかよ?」
「付け焼き刃程度にはね。あの子はまだ魔法を完璧に扱えるだけの魔力とコントロールを持ってないから、右手だけに身体強化が掛けられてる状態でしかも5分の時間制限付き」
「5分⁉ ってあと何分も残ってないじゃんか!」
「バカか。切れたらまた掛け直せばいいだけでしょ」
「そ、そうか。そうだよな。なんだよヒヤヒヤさせやがって」
「まぁあの子はもう一度身体強化エンハンスを掛けられるだけの魔力持ってないんだけどね」
「じゃあダメじゃねえか⁉」

 それをセンリ自身も理解した上で戦ってる。そして隣で一人騒いでいるアイゼンは何か勘違いしている。

 リリスはセンリの身体強化エンハンスの効果時間を説明しただけで、実際にはまだ発動していない。つまり、今戦っているのは身体強化もなにも掛かっていない素の状態だ。

「……そういえばアイツの持ってる魔剣。回収係がちゃんと回収したんじゃないの? その手筈のはずだったでしょう」
「作戦は全部順調だった。全員がそう思ってた。けど、魔剣を回収した班から連絡があったんだよ。回収した魔剣がこっちに飛んでった、って」
「……じゃあ結局、作戦は失敗したということね」

 あの日、センリの要求をギルドマスターが呑んでから立てられた作戦はこうだ。

 センリをおとりにしてベルクトを噴水広場まで誘導。彼が魔剣を手に持った状況とそうでない状況を二パターンを想定して作戦は立てられた。後者であった今回は魔剣を回収する班が速やかに彼の部屋から魔剣を押収。そのまま封印されるはずだった。だが魔剣は意思を持っており、宿主の身体も既に乗っ取っていた。つまりヤツがこっちに飛んできたのは、宿主と意識を共有していてその感情に呼応したからか。

 いずれにせよ、自分から宿主の危機を感知して数百メートルも離れた所から飛んでくるなんて魔剣、リリスは百年以上生きて一度も見た事はなかった。

「リリス嬢。一つ、訊きたいことがある」
「なに?」
「あの男の意識はもう、ないのか?」
「限りなくないと思うわ。あの男の魂はもう完全に魔剣と同化している。貴方も冒険者なら、なんで魔剣を人間が使ってはいけないかくらいの享受は受けてるんでしょう」
「……あぁ」

 魔剣は本来、意思を持つ武器ではない。しかし、

「魔剣は使用者に力を与えるが、しかしその代償に欲望を増大化させる。その増大化した欲望を魔剣が吸い取り、徐々に魔剣そのものが意識を宿す。やがて、魔剣を手にした者の意識と身体を奪う」
「あれがそのいい例ね」

 まさに人の成れ果てた姿こそが今のベルクトだ。魔族はその姿を滑稽と口を揃えて嘲笑するが、人間はその姿を見て怪物や化け物と呼ぶ。

 人間にも、魔族にも、ましてや魔物にすらなれない、ひたすらに堕ちた醜い操り人形マリオネット。それが、魔剣がもたらす人間の最期。

「いくら復讐の為とはいえ、やはり愚かね」

 けれど、アカツキ・センリは、そんな人間にも手を差し伸べようとしている。

 一度殺されかけて、そしてまた殺し合っているというのに、それでもアカツキ・センリは最後まで彼が戻ってくるという希望に縋って剣を握っている。

 彼だけがこの戦いの中で唯一、魔剣に魅せられた者をそのまやかしから解こうと必死に藻掻いて戦っている。

 リリスには到底理解できない行動信念。けれど、それが今のセンリの身体を動かしているということは理解できるから。

「アイゼン。他の者達に伝言してきなさい」
「まーた伝言。今回はなんだ」
「――全員、あの子にけなさい」
「…………」

 この戦いに無粋な横やりは不要。周囲を見ればわざわざアイゼンに伝言を回す必要もないとも思ったが、町を無茶苦茶にした相手を前に誰がいつ行動を起こすかは分からない。だからこそ、リリスはアイゼンに伝言を頼んだ。

 それを託されたアイゼンは、フッ、と小さく笑うと、

「ギルドマスターに伝えておく。一度アンタらに託したんだから余計な真似はすんなって」
「くすっ。よく分かってるじゃない。これが終わったらビール一杯奢ってあげる」
「そいつは楽しみだ。場所はもちろん」
「「ビールで」」

 リリスとアイゼンは悪童のような笑みを交換した後、それぞれが為すべき最善に向けて動き出した。

 アイゼンはリリスからの伝言をギルドマスターへと渡す為に後方に下がり、リリスは正面に向き直り、静かに剣を握る。

「さて、そろそろ、私が前に出なくちゃいけない時間かしらね」

 どうしても一人で頑張ろうとしてしまう世話の焼けるパートナーが最後まで戦い抜けられるように、リリスは人知れず感覚という牙を研ぎ澄ましていく。

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