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第1章――7 【 センリVS魔剣/吸血鬼と共に 】
第64話 センリVS魔人
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一瞬でも判断を見誤れば、次の瞬間には命が狩られる。極限の命の取り合い。故に、思考を凝らし、感覚を研ぎ澄まし、瞳孔を開かせ敵の一挙手一投足を追う。
攻撃の予測と繰り出されるパターンを読んで分析して、そして反撃を決めろ。
「――ハァッッ!」
「ヴォブっ⁉」
入った!
身体と剣を全て使って振り下ろされた魔剣の一撃をいなし、わずかに生まれた隙にもう一本の剣を突き刺す。一撃の火力よりも連撃性に特化した双剣で僕がこの魔物以上に硬い外殻にダメージを与えるのは火力が不足していた。だから攻撃を斬撃ではなく突による一点集中攻撃へと切り替えたんだけど、どうやら正解だったらしい。
硬度な外殻を剣先っが貫き、黒紫色の血がじくじくと滲むように傷口から洩れ出した。その痛みにベルクトさん――魔人態は呻き声を上げながらも怯むことはなく、眼前の敵を斬り殺さんと剣を振りかざした。
「あっぶな!」
シュパッ! と空を切るような音とともに剣を振り下ろされる瞬間、これは片手で捌くのは不可能と判断した僕は突き刺した剣をすかさず抜くとそのまま芝生の上へ倒れ込んだ。紙一重の所で一閃を躱し、僕は一旦距離を取るべく芝生を転がってから再び態勢を整えた。
「はぁ、はぁ、はぁ。前より戦えるようになったけど、やっぱ双剣、体力の消耗が激しい」
ただでさえ長剣よりも距離を縮めなければいけない上に攻撃を捌くのに集中力を維持し続けなければならない。そして長剣よりも軽いとはいえ、やはり二本の剣を右左でそれぞれ一本ずつ持ち続けなければならないので腕もぷるぷるしてきた。
「身体強化を使うか……いやまだダメ」
時間制限付きで発動は一発限り。しかも効果範囲が右腕だけという、お世辞にも便利とは言えない僕の身体強化魔法。それでもリリスに頼らず自分の魔法だけで戦うと決めたのは、ただの男としてのプライドと意地――自分の力でベルクトさんを魔剣の呪いから引き剥がして見せるという、そんな決意で自分を奮い立たせるための詭弁。
もしまだ、そこに貴方の魂があるなら、今の僕をちゃんと見て欲しいから。
「――フッ!」
「ヴォオオオオオオオ!」
そこにまだいるなら、今の僕の持てる全身全霊を、視てよ! ベルクトさん!
「見切った!」
「ヴォア⁉」
漫画やアニメみたいなアクロバティックな回避はできない。でも不格好でも攻撃をいなして懐に入れるならなんでもいい。
当たれば胴体を貫かれる魔剣の突きを中腰姿勢+身体の重心をわずかに傾けるだけの最小限の動きだけで躱して、追い打ちが来る前よりも早く右手の中剣で魔人の右腕を弾く。本当は切り落とすつもりだったんだけど、あまりの硬さにそうなってしまった。
けれど右手を弾かれた反動で魔人の身体が大きく傾いた。その崩れた態勢が整う前に、僕は渾身の連撃を叩き込む。
「うおおおおおお!」
「グフッ! ガフッ⁉ ブルゥアッッ⁉」
息が切れても攻撃を叩き込め!
腕が千切れようとも攻撃の手を緩めるな。膝が崩れようとも食らいつけ。
一撃一撃は致命傷に届かなくとも、わずかなダメージも蓄積すればやがて全身を蝕む毒のように動きを鈍らせ、やがて絶命させられる。
コイツが倒れるまで、ベルクトさんの意識を叩き起こすまで、何度も、何度でも、
「魔剣なんかに負けるな! ベルクトさん――っ!」
「……っ! ……せ、んり……」
「っ! ベルクトさん!」
一瞬確かに。魔人ではなくベルクトさんの声が聞こえた気がした。咄嗟に攻撃の手が緩み――その直後。
「ヴルゥゥゥゥゥゥア!」
「――っ!」
油断した。
一瞬の気の緩みを魔人は狙っていたかのように、握る魔剣を横一線に振りかざした。
避けられない。左の短剣で防御しても貫通されて胴体を真っ二つに斬られる――死ぬ。
そう悟った刹那。
「私のセンリを殺すな」
「ヴッッ⁉」
魔剣が僕の胴体を切断するよりも早く、ブーツの踵が僕の後ろから伸びて魔人の顔面を抉るように蹴った。
そのあまりの勢いに魔人の身体が芝生に踏み留まれきれずに大きく後方へ吹っ飛ぶ。
手遅れだと思った死から僕を回避させたのは、ずっと僕の戦いを見守ってくれていた赤髪の女性で。
「油断大敵。一瞬攻撃の手を緩めたでしょう?」
「あてっ。ううっ。なんで分かったの」
「魔族の視力を舐めないことね」
赤髪の女性、リリスは僕に振り向いてすぐに額にデコピンを入れてきた。そしてリリスの指摘に、僕は図星を突かれてバツが悪そうに視線を泳がせる。
リリスはそんな僕に呆れた風に肩を竦めたあと、
「それで? 結構長いこと一人で戦わせてあげたけど、気は済んだかしら?」
「……さっき、一瞬だけ、ベルクトさんの意識が戻ったような気がした」
「それで反射的に手を緩めたのね」
「うん」
僕の言葉にリリスは困ったと嘆息を吐く。
「どうやら最後まで、彼の意識を起こすのを諦めるつもりはないみたいね」
「諦められないよ。ベルクトさんはまだ、リリスとちゃんと話し合ってないんだから」
「はぁ。本当に頑固なんだからこの子は」
ベルクトさんの意識を魔剣と分断することを諦めていない僕の意思を聞いたリリスは、実に呆れた風にため息を落とすと、左腰に収めた剣を抜いて言った。
「とはいえ貴方ももう体力の限界でしょう。ここからは私も参加する」
「悔しいけど、僕の全力でもあれを倒せない。あれを倒せるのは、リリスだけだ」
「分かっているならよろしい。殺さない程度に加減はしてあげるから、貴方は彼の意識をもう一度起こすことだけを考えなさい」
「――っ! ありがとう」
「お礼はあとでたっぷりしてもらうからね」
「あはは。分かった」
「言質取ったわよ」
拳の代わりに互いの剣を軽くぶつけ合って、カツン、と音を鳴らす。それから、僕とリリスはニッと笑いあった。
この戦いが僕たちと貴方の、最後の戦いだ。
攻撃の予測と繰り出されるパターンを読んで分析して、そして反撃を決めろ。
「――ハァッッ!」
「ヴォブっ⁉」
入った!
身体と剣を全て使って振り下ろされた魔剣の一撃をいなし、わずかに生まれた隙にもう一本の剣を突き刺す。一撃の火力よりも連撃性に特化した双剣で僕がこの魔物以上に硬い外殻にダメージを与えるのは火力が不足していた。だから攻撃を斬撃ではなく突による一点集中攻撃へと切り替えたんだけど、どうやら正解だったらしい。
硬度な外殻を剣先っが貫き、黒紫色の血がじくじくと滲むように傷口から洩れ出した。その痛みにベルクトさん――魔人態は呻き声を上げながらも怯むことはなく、眼前の敵を斬り殺さんと剣を振りかざした。
「あっぶな!」
シュパッ! と空を切るような音とともに剣を振り下ろされる瞬間、これは片手で捌くのは不可能と判断した僕は突き刺した剣をすかさず抜くとそのまま芝生の上へ倒れ込んだ。紙一重の所で一閃を躱し、僕は一旦距離を取るべく芝生を転がってから再び態勢を整えた。
「はぁ、はぁ、はぁ。前より戦えるようになったけど、やっぱ双剣、体力の消耗が激しい」
ただでさえ長剣よりも距離を縮めなければいけない上に攻撃を捌くのに集中力を維持し続けなければならない。そして長剣よりも軽いとはいえ、やはり二本の剣を右左でそれぞれ一本ずつ持ち続けなければならないので腕もぷるぷるしてきた。
「身体強化を使うか……いやまだダメ」
時間制限付きで発動は一発限り。しかも効果範囲が右腕だけという、お世辞にも便利とは言えない僕の身体強化魔法。それでもリリスに頼らず自分の魔法だけで戦うと決めたのは、ただの男としてのプライドと意地――自分の力でベルクトさんを魔剣の呪いから引き剥がして見せるという、そんな決意で自分を奮い立たせるための詭弁。
もしまだ、そこに貴方の魂があるなら、今の僕をちゃんと見て欲しいから。
「――フッ!」
「ヴォオオオオオオオ!」
そこにまだいるなら、今の僕の持てる全身全霊を、視てよ! ベルクトさん!
「見切った!」
「ヴォア⁉」
漫画やアニメみたいなアクロバティックな回避はできない。でも不格好でも攻撃をいなして懐に入れるならなんでもいい。
当たれば胴体を貫かれる魔剣の突きを中腰姿勢+身体の重心をわずかに傾けるだけの最小限の動きだけで躱して、追い打ちが来る前よりも早く右手の中剣で魔人の右腕を弾く。本当は切り落とすつもりだったんだけど、あまりの硬さにそうなってしまった。
けれど右手を弾かれた反動で魔人の身体が大きく傾いた。その崩れた態勢が整う前に、僕は渾身の連撃を叩き込む。
「うおおおおおお!」
「グフッ! ガフッ⁉ ブルゥアッッ⁉」
息が切れても攻撃を叩き込め!
腕が千切れようとも攻撃の手を緩めるな。膝が崩れようとも食らいつけ。
一撃一撃は致命傷に届かなくとも、わずかなダメージも蓄積すればやがて全身を蝕む毒のように動きを鈍らせ、やがて絶命させられる。
コイツが倒れるまで、ベルクトさんの意識を叩き起こすまで、何度も、何度でも、
「魔剣なんかに負けるな! ベルクトさん――っ!」
「……っ! ……せ、んり……」
「っ! ベルクトさん!」
一瞬確かに。魔人ではなくベルクトさんの声が聞こえた気がした。咄嗟に攻撃の手が緩み――その直後。
「ヴルゥゥゥゥゥゥア!」
「――っ!」
油断した。
一瞬の気の緩みを魔人は狙っていたかのように、握る魔剣を横一線に振りかざした。
避けられない。左の短剣で防御しても貫通されて胴体を真っ二つに斬られる――死ぬ。
そう悟った刹那。
「私のセンリを殺すな」
「ヴッッ⁉」
魔剣が僕の胴体を切断するよりも早く、ブーツの踵が僕の後ろから伸びて魔人の顔面を抉るように蹴った。
そのあまりの勢いに魔人の身体が芝生に踏み留まれきれずに大きく後方へ吹っ飛ぶ。
手遅れだと思った死から僕を回避させたのは、ずっと僕の戦いを見守ってくれていた赤髪の女性で。
「油断大敵。一瞬攻撃の手を緩めたでしょう?」
「あてっ。ううっ。なんで分かったの」
「魔族の視力を舐めないことね」
赤髪の女性、リリスは僕に振り向いてすぐに額にデコピンを入れてきた。そしてリリスの指摘に、僕は図星を突かれてバツが悪そうに視線を泳がせる。
リリスはそんな僕に呆れた風に肩を竦めたあと、
「それで? 結構長いこと一人で戦わせてあげたけど、気は済んだかしら?」
「……さっき、一瞬だけ、ベルクトさんの意識が戻ったような気がした」
「それで反射的に手を緩めたのね」
「うん」
僕の言葉にリリスは困ったと嘆息を吐く。
「どうやら最後まで、彼の意識を起こすのを諦めるつもりはないみたいね」
「諦められないよ。ベルクトさんはまだ、リリスとちゃんと話し合ってないんだから」
「はぁ。本当に頑固なんだからこの子は」
ベルクトさんの意識を魔剣と分断することを諦めていない僕の意思を聞いたリリスは、実に呆れた風にため息を落とすと、左腰に収めた剣を抜いて言った。
「とはいえ貴方ももう体力の限界でしょう。ここからは私も参加する」
「悔しいけど、僕の全力でもあれを倒せない。あれを倒せるのは、リリスだけだ」
「分かっているならよろしい。殺さない程度に加減はしてあげるから、貴方は彼の意識をもう一度起こすことだけを考えなさい」
「――っ! ありがとう」
「お礼はあとでたっぷりしてもらうからね」
「あはは。分かった」
「言質取ったわよ」
拳の代わりに互いの剣を軽くぶつけ合って、カツン、と音を鳴らす。それから、僕とリリスはニッと笑いあった。
この戦いが僕たちと貴方の、最後の戦いだ。
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