××男と異常女共

シイタ

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幽霊女と駄菓子屋ばあちゃん

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 数年が経った。

 私は自分が死んでいることを知り、自分が『幽霊』であることを知った。
 それを知った時の戸惑いは、特になし。だって、それを知る間に色々なことがあったから。逆に自分が幽霊だと知って、その色々なことに納得した。

 鏡に写らなかったこと、先生に無視されたこと、大声で叫んでも気付いてもらえなかったこと、裸足で歩いても足が汚れないこと、暑さや寒さを感じないこと、暗い場所でも昼間のように周りが見えること、お腹が減らないこと、眠らなくても平気なこと、痛みを感じないこと、……なーどなど。

 これらの不思議なこと全てに、初めは驚きや疑問を持った。けど、幽霊だからこれらの普通ではないことも普通なのだと、私は心から納得することができた。

 また、周りから感じていた違和感の正体も知った。

 空っぽの家、知る顔が誰もいない学校、見覚えのない建物、なくなっている公園の遊具、いつのまにか変わっていた隣人……。

 どうやら私は、私が生きていた頃から何年か経った後に幽霊となって目を覚ましたらしい。
 だから、私の記憶にある風景と周りの風景が合わなかったのだ。時間がずれているから、その分のずれが生じていたのだ。
 まあ、今となってはその違和感も違和感だと感じなくない。慣れてしまえば、大した問題ではなかった。

 そして、認めたくないことも認めることにした。認めたくはなかったけど、認めるしかない。

 お母さんは、もうこの家には帰ってこないんだ。
 
 悲しくはなかった。心のどこかで、分かってしまっていたから。時間が、経ちすぎてしまっていたから。
 いつのまにか、私はお母さんが家に帰ってこないことに慣れていた。お母さんが家に帰ってこないのが、普通になっていた。一人でいることが、悲しくなくなっていた。


「……慣れって怖いなぁ」

 窓の外を見ながら、私は家で一人呟いた。
 私が幽霊になってから、どれくらいの時間が経ったのだろう。もう数えるのも途中で止めてしまい、代わる代わるの季節を見て、数年経ったとしか言えなくなってしまっていた。
 でも、何年経ったかなんて覚えていなくても支障はない。だって、幽霊は歳をとらないから数える必要がない。
 身体の成長がないから、私はずっと子供のまま。大人になれなくなった私は、特に気にすることなく、幽霊として楽しい日々を過ごしている。生きていた頃の一日とは全く違う、幽霊の一日を。
 
 幽霊になった今、私はやらなければいけないことがなくなった。学校に行かなくていいし、勉強もしなくていい、一日中自由な時間を過ごしていい。
 家でゴロゴロしていても、一人で外を出歩いても、夜中に寝ないで起きていても。誰にも怒られないから、自由気ままになんでもできる。
 そんななんでもできる幽霊になった私は、ある遊びにハマっていた。子供の頃に誰もがやったことがあるようなこと。大人になってもたまぁにやってしまうこと。魔が差して、ついつい出来心でやっちゃうこと。それは、『いたずら』だ。
 いたずらを仕掛けて、相手を驚かせたり、動揺させたり、不思議と思わせたり、その反応を見るのが面白かった。でも、毎日いたずらに明け暮れているわけではない。たまに閃いたように思いついて、それを試してしまう程度である。
 
 いたずらにハマったきっかけは、私の部屋に女の人が住みに来てからだ。もともと私がいる部屋は空き部屋になっていたので、人が住みに来るのも不思議じゃない。もうこの部屋は私とお母さんのものではない、部屋に来たこの女の人のものなのだ。
 私は自分の空っぽだった部屋が、その女の人の持ち物で埋まっていくのを新鮮な気持ちで眺めていた。知らない女の人の生活を、愉快な気持ちで見物していた。
 そして、いたずらを仕掛けたくなっちゃった。

 女の人がよく使うものを隠してみた。隠したものを女の人が必死に探す姿を、窓際でくすくす笑いながら見ていた。探しものを見つけた時に「あったぁ」と喜ぶ女の人を見て、拍手をしながら喜んだ。

 私でも動かせる家具を移動させてみた。女の人は部屋に帰ってくると、いつもと違う部屋に不思議がって首を傾げていた。私はそれを真正面から見て、ニヤニヤと笑ってた。

 女の人が眠っている時に、お人形を隣に置いて見た。目を覚ました女の人は、隣にあったお人形に驚いて飛び上がっていた。私はその反応にお腹を抱えて笑ってしまった。

 そうして味を占めてしまった私のいたずらは、どんどんエスカレートしていき、最後には――

 ――女の人が部屋から出ていった。

 私は、やり過ぎてしまったのだ。
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