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幽霊女と駄菓子屋ばあちゃん
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◯ゲーセン店員と駄菓子屋婆さん◯ Sight : キリヤ
週終わりまであとちょっと、休日初めの土曜日。用事もバイトも何もなく、することがないために俺は今日をどう過ごすかを考えた。
家で一人、ゆっくりとゴロゴロするか。外に出て、ぬらりくらりと散歩でもするか。考えた末に俺が決めた今日の過ごし方は、久々にあの場所に行くことにした。
そこは百貨店や飲食店、専門店が多く集まる繁華街。俺が行くのは一つの専門店で、月に二、三回程度で足を運ぶ場所だ。
自動ドアが開き、一歩中に入れば、けたたましい喧騒が襲ってきて、耳が痛くなる。中を見渡せば、過剰な光で様々なものがピカついていて、目がおかしくなりそうだ。
そんな不快な感覚が一気に襲ってくる場所なのに、そこは人が多く、特に学生や子供が目に入る。そのほとんどの者が、たくさんある四角い箱の前で夢中になって手を動かしたり、その箱の中にあるものを眺めていたりしていた。
その四角い箱は、どれも真ん中から上部が透明なプラスチックでできており、中には人形やお菓子など様々なものが入っている。
「おにいさん、私あれ欲しい!」
俺の隣で、ユウノが一つの箱を指差して叫び、走って行く。その箱の中には、丸く青色でクッションにもなりそうなぐらいの大きい人形が、いくつか乱雑に置かれている。それは、ファンタジー系のゲームなどでよく出でてくる、雑魚キャラのスライムだ。
「こんなんのどこがいいんだ?」
「丸くて可愛いじゃん」
「そうかぁ?」
「そうだよ。ね、やらせて!」
ユウノがその箱、もとい、クレーンゲーム機の前に立つ。
そのクレーンゲーム機は他のものより一回り大きいが、一回の料金は他の台と同じで一〇〇円。操作は簡単なもので、右、上、掴む、の三ボタンを順番に押していくものだ。
こんなもの、お金を積むか、よほどの運がなければ、取れないようになっているもんだ。やるだけ無駄、金の無駄。
だが、ユウノの目を見る限り、俺が何を言っても諦めてはくれないだろう。俺は仕方なしといった感じに、「一回だけな」と言ってお金を入れた。
俺はクレーンゲームの前に立ち、ボタンがある近くに手を置く。こうすれば、端から見て俺が操作しているように見える。そうしなければ、誰も操作していないクレーンゲーム機が勝手に動き出し、端から見て驚くべき光景になるだろう。
ユウノがボタンを押していき、アームが動き出す。アームはスライムを鷲掴みできるぐらいに大きさで、よっぽど下手でない限り簡単に掴むことはできそうだ、……掴むことは。
ユウノが動かしたアームは、一体のスライムのちょうど真上に降下する。そして、ジャストフィットするように一体のスライムを見事に掴んだ。
アームがスライムを持ち上げようとする。誰が見ても、このままいけばスライムをゲットできるように見える。
ユウノはスライムをしっかりと掴んだ瞬間を見て、「やった!」と嬉しそうに声を出した。
――しかし、現実は酷いものだ。
しっかりと掴んだと思ったアームから、するりとスライムが抜け落ちた。
ポトリ、と元あった場所から少しずれて落ちたスライムを、口を開けて見るユウノ。
あぁ、次の言葉が予想できる。
俺はその予想した言葉に対して、返す言葉を用意しておいた。
「もう一回!」
「ダメだ」
「もう一回だけ!」
「ダメだ」
「最後だから」
「ダメだ」
「本当に最後!」
「ダメだ」
「泣きの一回!」
「……泣いてないだろ」
「泣いたらやらしてくれるの?」
「ダメだ」
「……ぶぅー」
ユウノは口を膨らませて、不満を漏らす。
「だったら、おにいさんがやってみて。それでダメだったら諦めるから」
「……」
もう少し駄々をこねると思っていたのだが、少し予想外の展開である。だが、俺が一回やるだけで諦めてくれるのなら、御の字だ。
俺は無言でお金を入れて、アームを動かし始める。数あるスライムの中から、あえて俺はユウノが取りこぼしたものを選び、アームを落とした。
アームは先ほどと同じで、しっかりとスライムを掴む。ここまではいい、ここまでは誰だって行き着く光景だ。ただ、この後にどうなるかが分からない。さっきと同じで落ちるか、さっきと変わって持ち上がるか。結果は分からないが、落ちる確率の方が高く、持ち上がる確率の方が低い。
誰もが望むのが、確率の低い方だろう。そうでなければ、これをやる意味がない。確率の高い方を選んでるやつは、金をドブに入れてもなんとも思わない人間だ。
しかし、俺はどちらも選ばず、望まず、予想もつけない。ただただ、目の前の結果を待つだけだ。
さぁて、どうなるか……。
週終わりまであとちょっと、休日初めの土曜日。用事もバイトも何もなく、することがないために俺は今日をどう過ごすかを考えた。
家で一人、ゆっくりとゴロゴロするか。外に出て、ぬらりくらりと散歩でもするか。考えた末に俺が決めた今日の過ごし方は、久々にあの場所に行くことにした。
そこは百貨店や飲食店、専門店が多く集まる繁華街。俺が行くのは一つの専門店で、月に二、三回程度で足を運ぶ場所だ。
自動ドアが開き、一歩中に入れば、けたたましい喧騒が襲ってきて、耳が痛くなる。中を見渡せば、過剰な光で様々なものがピカついていて、目がおかしくなりそうだ。
そんな不快な感覚が一気に襲ってくる場所なのに、そこは人が多く、特に学生や子供が目に入る。そのほとんどの者が、たくさんある四角い箱の前で夢中になって手を動かしたり、その箱の中にあるものを眺めていたりしていた。
その四角い箱は、どれも真ん中から上部が透明なプラスチックでできており、中には人形やお菓子など様々なものが入っている。
「おにいさん、私あれ欲しい!」
俺の隣で、ユウノが一つの箱を指差して叫び、走って行く。その箱の中には、丸く青色でクッションにもなりそうなぐらいの大きい人形が、いくつか乱雑に置かれている。それは、ファンタジー系のゲームなどでよく出でてくる、雑魚キャラのスライムだ。
「こんなんのどこがいいんだ?」
「丸くて可愛いじゃん」
「そうかぁ?」
「そうだよ。ね、やらせて!」
ユウノがその箱、もとい、クレーンゲーム機の前に立つ。
そのクレーンゲーム機は他のものより一回り大きいが、一回の料金は他の台と同じで一〇〇円。操作は簡単なもので、右、上、掴む、の三ボタンを順番に押していくものだ。
こんなもの、お金を積むか、よほどの運がなければ、取れないようになっているもんだ。やるだけ無駄、金の無駄。
だが、ユウノの目を見る限り、俺が何を言っても諦めてはくれないだろう。俺は仕方なしといった感じに、「一回だけな」と言ってお金を入れた。
俺はクレーンゲームの前に立ち、ボタンがある近くに手を置く。こうすれば、端から見て俺が操作しているように見える。そうしなければ、誰も操作していないクレーンゲーム機が勝手に動き出し、端から見て驚くべき光景になるだろう。
ユウノがボタンを押していき、アームが動き出す。アームはスライムを鷲掴みできるぐらいに大きさで、よっぽど下手でない限り簡単に掴むことはできそうだ、……掴むことは。
ユウノが動かしたアームは、一体のスライムのちょうど真上に降下する。そして、ジャストフィットするように一体のスライムを見事に掴んだ。
アームがスライムを持ち上げようとする。誰が見ても、このままいけばスライムをゲットできるように見える。
ユウノはスライムをしっかりと掴んだ瞬間を見て、「やった!」と嬉しそうに声を出した。
――しかし、現実は酷いものだ。
しっかりと掴んだと思ったアームから、するりとスライムが抜け落ちた。
ポトリ、と元あった場所から少しずれて落ちたスライムを、口を開けて見るユウノ。
あぁ、次の言葉が予想できる。
俺はその予想した言葉に対して、返す言葉を用意しておいた。
「もう一回!」
「ダメだ」
「もう一回だけ!」
「ダメだ」
「最後だから」
「ダメだ」
「本当に最後!」
「ダメだ」
「泣きの一回!」
「……泣いてないだろ」
「泣いたらやらしてくれるの?」
「ダメだ」
「……ぶぅー」
ユウノは口を膨らませて、不満を漏らす。
「だったら、おにいさんがやってみて。それでダメだったら諦めるから」
「……」
もう少し駄々をこねると思っていたのだが、少し予想外の展開である。だが、俺が一回やるだけで諦めてくれるのなら、御の字だ。
俺は無言でお金を入れて、アームを動かし始める。数あるスライムの中から、あえて俺はユウノが取りこぼしたものを選び、アームを落とした。
アームは先ほどと同じで、しっかりとスライムを掴む。ここまではいい、ここまでは誰だって行き着く光景だ。ただ、この後にどうなるかが分からない。さっきと同じで落ちるか、さっきと変わって持ち上がるか。結果は分からないが、落ちる確率の方が高く、持ち上がる確率の方が低い。
誰もが望むのが、確率の低い方だろう。そうでなければ、これをやる意味がない。確率の高い方を選んでるやつは、金をドブに入れてもなんとも思わない人間だ。
しかし、俺はどちらも選ばず、望まず、予想もつけない。ただただ、目の前の結果を待つだけだ。
さぁて、どうなるか……。
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