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幽霊女と駄菓子屋ばあちゃん
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「いつまでここにいるつもりだ?」
おにいさんは唐突にそう聞いてくるが、私は迷いなく答える。
「マーブルを殺したやつが現れるまで」
「それで、現れる様子はあるのか?」
「……ない」
「だろうな」
私の答えが分かり切っているといった感じに、おにいさんは答えた。
分かっているなら聞かなくてもいいのに、と私は少し不満顔になる。いつもなら、そんなおにいさんの軽口も気にならないのに、今の私は少し虫の居所が悪かった。
「……おにいさんは何しにきたの?」
「三影から遊園地のお誘いがお前に来たから、返事を聞きに来たんだよ。来週の日曜日だけど、どうする?」
「遊園地……」
大きい観覧車に、くるくる回るカップ、ビュンビュン動くジェットコースター……。
行きたい、すごく行きたい。
私は遊園地にある乗り物を想像して、心を惹かれる。――けど、
「行かない」
行くわけには行かない。
「探してる奴が見つかってないからか?」
「うん。マーブルを殺したやつは絶対に見つけたいの。みかげお姉さんには悪いけど……」
こんな事が起きなければ、私は迷うことなくお姉さんと遊園地に行っただろう。
私は誘ってくれたみかげお姉さんに申し訳ないと思いつつ、今度会ったら謝って置こうと決めた。
「……遊園地には、行きたくないのか?」
「行きたいよ。すっごく行きたい。一回だけ行ったことがあるんだけど、その時もすっごく楽しかったもん。お馬さんに乗って、くるくる回るやつが一番好きだったかもしれない」
「メリーゴーランドね。あんな回るだけの乗り物の何がそんなに楽しいかね」
「楽しいよ。おにいさんも乗ってみたら?」
「絶対嫌だ」
「なんで?」
「俺がメリーゴーランドに乗ってる姿を想像してみろ。似合うと思うか?」
私は言う通りに、おにいさんがメリーゴーランドに乗る姿を想像する。お馬さんに乗って、こちらに向かって手を振るおにいさん……。
「ぷっ、……あはははは! 全然、似合わないね。ふふふふふ……」
「だろ」
おにいさんに白馬の王子さまは似合わない。そんな面白い想像ができたところで、久々に心から笑ったことに気付く。おにいさんが私を笑わせるために、そんなことを想像させたのかどうかは分からないけど、さっきよりも心が晴れたのは確かだった。
私が未だに笑っていると、「笑いすぎ」とおにいさんに頭を軽く叩かれる。
「それより、そんだけ好きな遊園地に行かないって、そんな早く決めてもいいのか? 来週までに、見つけちまえば行けるかもしれないんだぜ?」
「それはそうだけど……」
「来週までに見つけられる自信がないと」
「……うん」
「そんなんで、見つけることができるのかよ?」
「……ぶぅー、だったらおにいさんは見つけることができるの? 来週までにマーブルを殺したやつを!」
「できる。というかもう見つけてる」
「え?」
おにいさんの言葉に、私は間抜けな声を出してしまう。
ポカンとする私に、何やらスマホを取り出してそれをこちらに見せてくるおにいさん。そこに映し出された画像に、私は二度驚かされた。
「これって……」
「あの日の公園で起こってたことだ」
そのスマホに映し出されていたのは、ガラの悪い人達が倒れているマーブルに向かって蹴りを入れてる場面だった。
「てことは、こいつらがマーブルを……っ。でもどうやって?」
「知り合いに何か知らないかって聞いてみたら、案の定知ってただけだ」
「それって誰なの?」
「お前も知ってるやつだよ。それで、お前の探してるやつは見つかったけど、……どうすんだ?」
「どうするって?」
「お前はこいつらを見つけて、どうしたかったんだ?」
私はおにいさんに聞かれて気付く。マーブルを殺したやつを見つけた後に、そいつをどうするかについて考えていなかったらことに。
スマホに移るガラの悪い人達を見て、私は考える。私はこいつらをどうしたいんだろう、と。
「殺したいのか?」とおにいさんが問うてくるが、私は首を振って否定する。
私は別に相手を殺したいわけじゃない。そんなことをしたいわけじゃない。ただ……。
「……殺したいわけじゃないけど、こいつらをマーブルと同じ目に遭わせたい。マーブルが受けた苦しみを、あいつらにも受けさせてやりたい」
「……それでいいんだな」
「うん。でも、こいつらがどこにいるか分かってるの? おにいさん」
「抜かりなし、ちゃんと分かってる。とりあえず、こいつらのお礼参りは明日な」
「分かった!」
「それじゃあ、今日は帰るぞ。部屋で青くて丸っこいモンスターが待ってるからな」
「うん!!」
歩き出したおにいさんの後ろを追いかけて、私はとなりに並んで歩き帰路についた。
一週間ぶりに帰ってきた部屋は、とっても久しい感じがする。こんなに部屋を空けたのは初めてのことであった。
「ただいま」と言って久々の部屋に入り、私がいの一番にしたこと。それは、この部屋の新しい住人と言える、転がってるスライムに抱きつくことだった。
そして思う――
やっぱり、部屋が一番だ。
おにいさんは唐突にそう聞いてくるが、私は迷いなく答える。
「マーブルを殺したやつが現れるまで」
「それで、現れる様子はあるのか?」
「……ない」
「だろうな」
私の答えが分かり切っているといった感じに、おにいさんは答えた。
分かっているなら聞かなくてもいいのに、と私は少し不満顔になる。いつもなら、そんなおにいさんの軽口も気にならないのに、今の私は少し虫の居所が悪かった。
「……おにいさんは何しにきたの?」
「三影から遊園地のお誘いがお前に来たから、返事を聞きに来たんだよ。来週の日曜日だけど、どうする?」
「遊園地……」
大きい観覧車に、くるくる回るカップ、ビュンビュン動くジェットコースター……。
行きたい、すごく行きたい。
私は遊園地にある乗り物を想像して、心を惹かれる。――けど、
「行かない」
行くわけには行かない。
「探してる奴が見つかってないからか?」
「うん。マーブルを殺したやつは絶対に見つけたいの。みかげお姉さんには悪いけど……」
こんな事が起きなければ、私は迷うことなくお姉さんと遊園地に行っただろう。
私は誘ってくれたみかげお姉さんに申し訳ないと思いつつ、今度会ったら謝って置こうと決めた。
「……遊園地には、行きたくないのか?」
「行きたいよ。すっごく行きたい。一回だけ行ったことがあるんだけど、その時もすっごく楽しかったもん。お馬さんに乗って、くるくる回るやつが一番好きだったかもしれない」
「メリーゴーランドね。あんな回るだけの乗り物の何がそんなに楽しいかね」
「楽しいよ。おにいさんも乗ってみたら?」
「絶対嫌だ」
「なんで?」
「俺がメリーゴーランドに乗ってる姿を想像してみろ。似合うと思うか?」
私は言う通りに、おにいさんがメリーゴーランドに乗る姿を想像する。お馬さんに乗って、こちらに向かって手を振るおにいさん……。
「ぷっ、……あはははは! 全然、似合わないね。ふふふふふ……」
「だろ」
おにいさんに白馬の王子さまは似合わない。そんな面白い想像ができたところで、久々に心から笑ったことに気付く。おにいさんが私を笑わせるために、そんなことを想像させたのかどうかは分からないけど、さっきよりも心が晴れたのは確かだった。
私が未だに笑っていると、「笑いすぎ」とおにいさんに頭を軽く叩かれる。
「それより、そんだけ好きな遊園地に行かないって、そんな早く決めてもいいのか? 来週までに、見つけちまえば行けるかもしれないんだぜ?」
「それはそうだけど……」
「来週までに見つけられる自信がないと」
「……うん」
「そんなんで、見つけることができるのかよ?」
「……ぶぅー、だったらおにいさんは見つけることができるの? 来週までにマーブルを殺したやつを!」
「できる。というかもう見つけてる」
「え?」
おにいさんの言葉に、私は間抜けな声を出してしまう。
ポカンとする私に、何やらスマホを取り出してそれをこちらに見せてくるおにいさん。そこに映し出された画像に、私は二度驚かされた。
「これって……」
「あの日の公園で起こってたことだ」
そのスマホに映し出されていたのは、ガラの悪い人達が倒れているマーブルに向かって蹴りを入れてる場面だった。
「てことは、こいつらがマーブルを……っ。でもどうやって?」
「知り合いに何か知らないかって聞いてみたら、案の定知ってただけだ」
「それって誰なの?」
「お前も知ってるやつだよ。それで、お前の探してるやつは見つかったけど、……どうすんだ?」
「どうするって?」
「お前はこいつらを見つけて、どうしたかったんだ?」
私はおにいさんに聞かれて気付く。マーブルを殺したやつを見つけた後に、そいつをどうするかについて考えていなかったらことに。
スマホに移るガラの悪い人達を見て、私は考える。私はこいつらをどうしたいんだろう、と。
「殺したいのか?」とおにいさんが問うてくるが、私は首を振って否定する。
私は別に相手を殺したいわけじゃない。そんなことをしたいわけじゃない。ただ……。
「……殺したいわけじゃないけど、こいつらをマーブルと同じ目に遭わせたい。マーブルが受けた苦しみを、あいつらにも受けさせてやりたい」
「……それでいいんだな」
「うん。でも、こいつらがどこにいるか分かってるの? おにいさん」
「抜かりなし、ちゃんと分かってる。とりあえず、こいつらのお礼参りは明日な」
「分かった!」
「それじゃあ、今日は帰るぞ。部屋で青くて丸っこいモンスターが待ってるからな」
「うん!!」
歩き出したおにいさんの後ろを追いかけて、私はとなりに並んで歩き帰路についた。
一週間ぶりに帰ってきた部屋は、とっても久しい感じがする。こんなに部屋を空けたのは初めてのことであった。
「ただいま」と言って久々の部屋に入り、私がいの一番にしたこと。それは、この部屋の新しい住人と言える、転がってるスライムに抱きつくことだった。
そして思う――
やっぱり、部屋が一番だ。
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