90 / 111
Ignorance is bliss.
6-1
しおりを挟む
◯理想の果実◯ Sight : ???
この世には、多くの果実がある。
甘い果実、苦い果実、酸っぱい果実、渋い果実、香りのある果実、臭いのある果実、赤い果実、青い果実、黄い果実、緑の果実、 橙の果実、茶の果実、綺麗な果実、汚い果実、とげとげの果実、でこぼこな果実、ヘンテコな果実……。
本当に多く、本当に様々で、本当に魅力のある果実が、この世にはたくさんある。
そんな中で私が好きなのは、少し渋くて甘い果実。
そして、その果実の味は絶妙で最高のものでなくては許せない。
言うならば、『子供は卒業したが、大人にはなりきれていない』。
そんな味を私は求めている。
しかもそれだけではない。
私は味だけではなく、美しさにも重点に置いている。
凹みがなく、傷がなく、形が整っていて、ハリがあり、輝きがあるのものでなければならない。
そんな果実を求めていた。
私は理想と出会うために、育ち始めである多くの果実を観察し、その中から自分の理想になるかもしれないものを予想して、それに目星をつけることにした。
目星をつけた果実は、熱心に、直向きに、精一杯、世話をする。
もちろん、目星をつけていない果実のことも忘れないで。
その世話の度合いは、明らかに違ってしまっていたけど。
私は常々思っていた。
理想に近い果実を育てるために、目星をつけたものをずっと近くで世話していきたいと。
しかし、それはある事情からできなかった。
だから、目星をつけた果実に“印”を付けて置くことにした。
目星をつけた果実が成長した時、一目で分かるように。
あとは果実が理想に近づく時期に、つけた“印”を目印にして摘み取りに行けばいい。
そう思って私は、果実が理想のものになることを願い、その時を待った、待ち焦がれた――。
そうやって、私は今まで自分の理想に近づいた果実を摘み取ってきた。
だけど、どれも理想に近いというだけで、理想と呼べるものではなかった。
でも、今回見つけた果実は今までとは全く違う。
その果実は育ち始めからでも分かるほど、“異常”だった。
この果実なら、私の求める理想の果実になるかもしれない。
そう感じた私は、今まで以上に力を込めてその果実を育てた。
時が来て、その理想になるかもしれない果実は私の元から離れていく。
しかし抜かりはない、その果実にも私はきちんと目印である“印”をつけておいた。
あとはいつもと同じように、果実が私の理想に実るまで待つだけ。
理想の果実になっているように願うだけ。
――月日が経ち、収穫の時期が来た。
……あぁ、やっと、やっと、この時が来た。ずっと、ずっと、待っていた。今までにないくらい、待っていた。それはまるで、恋する乙女が運命の人を待つように。
私はドキドキと高鳴る胸を押さえ、頭の中で育った果実を――想像する、思い描く、もの思う。
あの子はちゃんと育ってくれたかしら。私の理想とする味に育ってくれたかしら。私の理想とする美しさに育ってくれたかしら。私の理想通りに育ってくれたかしら。
はぁぁっ、溜まった興奮と溜まった息を吐いて心を落ち着かせると、私は椅子の背もたれに体を預けた。
暗い部屋の中に唯一照らされている机の上を見ると、その机の上にあるのは一枚の白色の紙と一枚のクリーム色の紙。
私は、それを見て呟く。
「……さぁ、実った果実を摘み取りに行きましょう」
誰に言うわけでもなく発せられた言葉は、暗く静かな部屋に溶けるように消えていく。
私は椅子を回転させて後ろを振り向くと、部屋の中を見渡した。
私以外に誰もいない部屋、私にとって特別な部屋、私のためだけの部屋。
そんな部屋の中にあるものを眺めて、私は――
――口角を釣り上げた。
この世には、多くの果実がある。
甘い果実、苦い果実、酸っぱい果実、渋い果実、香りのある果実、臭いのある果実、赤い果実、青い果実、黄い果実、緑の果実、 橙の果実、茶の果実、綺麗な果実、汚い果実、とげとげの果実、でこぼこな果実、ヘンテコな果実……。
本当に多く、本当に様々で、本当に魅力のある果実が、この世にはたくさんある。
そんな中で私が好きなのは、少し渋くて甘い果実。
そして、その果実の味は絶妙で最高のものでなくては許せない。
言うならば、『子供は卒業したが、大人にはなりきれていない』。
そんな味を私は求めている。
しかもそれだけではない。
私は味だけではなく、美しさにも重点に置いている。
凹みがなく、傷がなく、形が整っていて、ハリがあり、輝きがあるのものでなければならない。
そんな果実を求めていた。
私は理想と出会うために、育ち始めである多くの果実を観察し、その中から自分の理想になるかもしれないものを予想して、それに目星をつけることにした。
目星をつけた果実は、熱心に、直向きに、精一杯、世話をする。
もちろん、目星をつけていない果実のことも忘れないで。
その世話の度合いは、明らかに違ってしまっていたけど。
私は常々思っていた。
理想に近い果実を育てるために、目星をつけたものをずっと近くで世話していきたいと。
しかし、それはある事情からできなかった。
だから、目星をつけた果実に“印”を付けて置くことにした。
目星をつけた果実が成長した時、一目で分かるように。
あとは果実が理想に近づく時期に、つけた“印”を目印にして摘み取りに行けばいい。
そう思って私は、果実が理想のものになることを願い、その時を待った、待ち焦がれた――。
そうやって、私は今まで自分の理想に近づいた果実を摘み取ってきた。
だけど、どれも理想に近いというだけで、理想と呼べるものではなかった。
でも、今回見つけた果実は今までとは全く違う。
その果実は育ち始めからでも分かるほど、“異常”だった。
この果実なら、私の求める理想の果実になるかもしれない。
そう感じた私は、今まで以上に力を込めてその果実を育てた。
時が来て、その理想になるかもしれない果実は私の元から離れていく。
しかし抜かりはない、その果実にも私はきちんと目印である“印”をつけておいた。
あとはいつもと同じように、果実が私の理想に実るまで待つだけ。
理想の果実になっているように願うだけ。
――月日が経ち、収穫の時期が来た。
……あぁ、やっと、やっと、この時が来た。ずっと、ずっと、待っていた。今までにないくらい、待っていた。それはまるで、恋する乙女が運命の人を待つように。
私はドキドキと高鳴る胸を押さえ、頭の中で育った果実を――想像する、思い描く、もの思う。
あの子はちゃんと育ってくれたかしら。私の理想とする味に育ってくれたかしら。私の理想とする美しさに育ってくれたかしら。私の理想通りに育ってくれたかしら。
はぁぁっ、溜まった興奮と溜まった息を吐いて心を落ち着かせると、私は椅子の背もたれに体を預けた。
暗い部屋の中に唯一照らされている机の上を見ると、その机の上にあるのは一枚の白色の紙と一枚のクリーム色の紙。
私は、それを見て呟く。
「……さぁ、実った果実を摘み取りに行きましょう」
誰に言うわけでもなく発せられた言葉は、暗く静かな部屋に溶けるように消えていく。
私は椅子を回転させて後ろを振り向くと、部屋の中を見渡した。
私以外に誰もいない部屋、私にとって特別な部屋、私のためだけの部屋。
そんな部屋の中にあるものを眺めて、私は――
――口角を釣り上げた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる