××男と異常女共

シイタ

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Ignorance is bliss.

6-8

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 見事にキリヤくんとのランチタイムを獲得し、その上自分が作ったお弁当を食べて貰えたという予想以上の結果も得られたことで、私はいま有頂天だ。
 今なら大抵のことならば、何をされたとしても許せるような気がしてしまう。
 気がするだけなので、本当に許せるかは分からないけど。

「なんだか機嫌がいいね、ひみちゃん。なにかいいことでもあったの?」

 すると、同じT字の箒を持った黒髪ツインテールの女の子が話しかけてきた。
 この子の名前は亜澄あすみレナちゃんと言って、同じクラスの友達だ。小柄で人懐っこい性格をしていて、誰とでも気さくなに話しかけるので、男子女子両方に友達が多い子である。
 レナちゃんだったら、もしかしたら『友達一〇〇人作るんだ!』というのも達成できちゃうかもしれない。知らず知らずのうちに達成してる可能性もあるけど。

「うん、ちょっとねぇ」

 私が嬉しそうにそう答えると、レナちゃんは「なになに、何があったの?」と興味ありげに聞いてくる。
 私が「ひみつ~」と答えると、掃除の終わりを告げる曲が放送で流れ出し、私達は掃除用具を片付けて教室に戻った。
 掃除が終われば学校での活動は全て終了し、放課後になる。
 運動部・文芸部などに入部している生徒たちは、各自自分の部の活動場所に向かっていき、どこの部にも所属していない生徒――いわゆる帰宅部――たちは、速やかに荷物を持って家に帰るか、教室に残って談笑したりしている。
 私とレナちゃんはどちらも帰宅部なので、少し人を待ちながら帰りの準備を済ませてしまう。

「ごめん、待たせた」

 レナちゃんとおしゃべりして時間を潰していると、金髪ショートでツリ目の女の子が謝りながらやって来た。
 彼女の名前は、伊吹いぶき千紗ちさ。レナちゃんと同じく私の友達だ。女の子なのに少し男勝りな性格をしていて、あまり人とも関わろうとしないので、レナちゃんと違って友達の少ない子である。
 別に悪い子じゃないから、もう少し周りと関わろうとしたら友達もできると思うんだけど、本人が気にしてないようなので私もレナちゃんも言わないようにしている。前にしつこく言ったら、機嫌悪くなっちゃったし。

「ううん、大丈夫だよ」

「ねぇねぇ、それより今日はどこ行く? いつものとこ? それともカラオケとか行っちゃう?」

 そう言うレナちゃんも千紗ちゃんが遅れてきたことなど全然気にしてないといった感じだ。というより、早く遊びに行きたくてウズウズしているみたい。

「いいんじゃない、カラオケ。私も久々に歌いたいし。ひとみはどう?」

「私も良いと思うよ。千紗ちゃんの帰りの準備が終わったら、さっそく行こっか」

「うん!」

 嬉しそうに返事をするレナちゃんに、「すぐ準備するから」と自分の机に向かって行く千紗ちゃん。
 話しの流れからも分かるように、私たちはこれからよくある女子高生の放課後遊びに興じるのだ。
 さっきも言ったが、私とレナちゃんは部活動には参加していないため、放課後はほとんど予定がない。それは千紗ちゃんも同じである。
 なので、何もない日――つまり暇な日は、よく三人でカフェに行ったり、ファミレス行ったり、お互いの家に行ったりしてお喋りやゲームなどをして遊んだりしている。
 しかし、最近私と千紗ちゃんが忙しくて、三人一緒に遊ぶのは少しご無沙汰になっていた。
 千紗ちゃんはお好み焼き店のバイトをやっているのだが、そこの店主がギックリ腰になってしまいヘルプで大忙し。
 私は少し前にバイトを辞めたので、その時間を使ってキリヤくんのストーキングで大忙し。
 その間、なにも予定がなくバイトもしてないレナちゃんは、他のお友達と遊んでいて寂しい思いはしていなかったはずだけど……。

「はやく、はやく」

「急かすな」

 まるで散歩に行くのを楽しみにしている犬のように飛び跳ねて、千紗ちゃんを急かすレナちゃん。普段からテンションの高い方だが、今日はいつも以上である。
 よっぽど三人で遊びに行くのが楽しみみたい。
 私もカラオケなんて久々だから楽しみだなぁ。
 千紗ちゃんの帰りの準備が終わったので、私たちは教室を出て玄関に向かった。
 途中途中で何人かの生徒や先生に声を掛けられながら玄関に着き、靴を履いたところでレナちゃんが思い出したように私に聞いてくる。

「それで、ひみちゃんが機嫌の良い理由は結局なんなの?」

「ひみつって言ったでしょ。教えないよぉ」

「えー。いいじゃん、いいじゃん」

 不満顔になって抗議するレナちゃん。そんな顔してもダメなものはダメですよぉ。
 すると会話について行けない千紗ちゃんが、「何の話?」と問いかけてくる。

「ひみちゃんがね。朝と違っていかにも期限が良さそうにしてるから、何があったのか問いただしてるんだよ」

「そういうレナちゃんも、今日はいつもより機嫌が良さそうだけど?」

「私はひみちゃんと千紗ちゃんと久々に遊ぶのが楽しみなだけだもーん」

 あっ、やっぱりそうなんだ。レナちゃんは素直だなぁ。
 恥ずかしげもなくそう言うレナちゃんを可愛いなぁと思い、私は「ふふ」と微笑む。

「私もそうだよぉ」

「嘘ぉ、絶対違う!」

 ガーン!
 レナちゃんのその言葉に、私はそんな効果音を付けるのが相応しそうな顔をして、ハンカチで目を覆う。

「…………しくしく……ひどいなぁ、レナちゃん。久々に三人で遊ぶのを楽しみにしてたのは私も同じなのに、信じてくれないなんて。悲しいなぁ、泣いちゃいそう……しくしく。……それじゃあ、私は帰ろっかな。嘘つきの私なんていたら、レナちゃん達がカラオケ楽しめないもんね。……あーあ、本当に楽しみにしてたのに……しくしく」

「え、あっ、えっと……違くて……そういう意味じゃなくて……あの……」

 思い掛けない出来事に戸惑いだすレナちゃん。
 なんとか誤解を解こうと口を動かしているが、困惑しているで所為か、なんて説明すればいいのか判らないでいるようだ。
 悲しいよぉという雰囲気を出してるだけで、泣いてはいないんだけどね。それはレナちゃんからしたら、ハンカチで顔が隠れててよく見えないだろうけど。
 すると、度が過ぎてしまったか逆にレナちゃんが泣きそうな顔になってくる。ちょっと意地悪しすぎたかな。

「ひとみ、それぐらいにしてあげたら。レナも泣きそうな顔しなくていいから、あれはひとみの演技だから」

「……そうなの?」

 千紗ちゃんの言葉に、不安そうな顔で私を見るレナちゃん。その顔は男子が見たら、イチコロで落ちゃうかもしれないぐらい可愛いものである。
 それを意図して使っているわけじゃないのだから、レナちゃんは俗に言う魔性の女だなぁ。勘違いする男子が多そう。ストーカーとかに追い回されなければいいけど。
 自分のことは棚に上げて、私は少しレナちゃんの将来が不安になった。
 
「うん、泣いてなんかいないから大丈夫だよ。ちょっと意地悪しただけだから気にしないで」

 ハンカチ隠していた顔を見せて、けろりとして言う私。
 それを見て私の泣き姿が演技だとちゃんと理解したのか、レナちゃんはホッとした顔になり、そして段々とむくれ顔に変わっていった。
 「レナちゃん?」と声を掛けると、ぷいっと顔を背けてしまう。どうやら拗ねちゃったみたいだ。
 
「ごめんって、レナちゃ~ん」

「ぷーんだ」

「はぁ、もう二人ともいい加減にして。せっかく遊びに行くんだから、変な一悶着起こさないでよ」

「だってひみちゃんが……」

「人の秘密をしつこく聞くレナも悪い! レナだって知られたくない秘密の一つや二つぐらいあるでしょ。ひとみもひとみでレナを揶揄わない! 二人ともちゃんと謝って、この話はもう終わりにして」

「「はーい」」

 千紗ちゃんに怒られて、私とレナちゃんはお互いにきちんと謝り、この話は終了した。
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