××男と異常女共

シイタ

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ストーカー女のストーカー

2-3

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◯良いこと考えた♪◯ Sight : ひとみ


 あー、おわったおわった。やっとおわったー。

 バイトが終わり、駅の椅子に座りながら帰りの電車を待つ私。
 
 はやく帰って、キリヤくんのところに行きたいな。

 私は鞄の中にあるスマホを取り出して、保存している写真を映し出す。
 映し出される写真は、当然キリヤくん。スマホに保存されている写真も、ほとんどがキリヤくん。しっかりとフォルダ分けをして、その時の気分で見たいものを見れるようちゃんと管理している。
 スマホの壁紙ももちろんキリヤくん。スマホを起動させればいち早くキリヤくんの顔を見ることができ、すぐさま心を落ち着かせることが可能……、と言いたいけれど、それをすると周りの友達に私がキリヤくんのことを好きなのがバレてしまうため、そこだけは自重している。

 変な噂とか立ったたら、めんどうだしね。
 
 私がキリヤくんの写真をじっくり眺めながら目の保養をしていると、誰かの視線が私に刺さる。
 見られてる……、のはいつものことだ。
 私は自分が可愛くて人に好かれやすい容姿をしていることを知っている。知ったのは中学生の時だけど、その前から周りの人からよく見られていると気付いていた。
 その目のほとんどが私を好奇の目で見てくる。
 そして、そんな目を向けてくる人を私が見れば、見られた相手は大抵慌てて目を逸らし恥ずかしがるか、そらした後に目が会ったことに歓喜するか、目をそらさず自分をアピールするかのように見続けてくるか、だ。
 そんな相手の反応を見るのを、私はいつのまにか楽しんでいた。それが普通になり、当たり前になり、嫌いではなかった。

 ――でも、キリヤくんだけは違ったんだよね。


 あれは高校に入ってすぐの放課後のこと。
 クラスの人達からプリントを集めることを先生に頼まれた私はそれを職員室に届けた後、友達が待つ教室に戻ろうと、誰もいない廊下を一人歩いていた。
 プリントを渡した時の、先生の反応を思い出しながら。

 ふふっ、プリントを届けるのって面倒だと思ってたけど、あの先生の反応が見れただけで帳消しだな。まさか先生が生徒に欲情するなんて、まるで漫画みたい。あぁ、おもしろい。

 欲情といっても、先生は私に対して多少の気遣いをしてくれただけ。周りの人がその状況を見て聞いても、特におかしいところはないと感じるだろう。
 だけど、私には分かった。だって目の色から白々はくはくと滲み出てたもの。
 私に対しての、欲という欲の願望が。
 
 ま、顔は悪くないけど私にはどうでもいいかな。今のままで十分楽しいし。

 そんなことを考えていると、前方から金髪で自分よりも少し身長が高いぐらいの男子生徒が歩いてきた。
 金髪目立つな、と思っていると男子生徒は私の視線に気付いたのか、こちらに目を合わせてきた。
 
 瞬間、むふ、とこみ上げてくる笑いを堪え、私は相手の反応を無意識に楽しみにした。
 そして、にこりと笑顔を見せておく。
 今までの経験上このような一対一の状況でしかも笑顔まで見せれば、ほとんどの人は慌てて目を逸らすか、驚いた顔をして一瞬足を止めるか、恥ずかしがって早足で去って行くか、下心丸出しの笑顔を返してくるか、そのどれかの反応を見せる。
 今回はどれかなと考えて目を合わせ続けていると、相手が私から目を逸らし、私の横を通り過ぎて行った。

 私の予想通り男子生徒は私から目を逸らした、……と思えたが、実際は違った。
 あの男子生徒は目を逸らしたのではなく、外したのだ。
 逸らすも外すもほとんど同じ意味だが、私にとっては違う。
 いつもの相手なら気恥ずかしそうに、バツが悪そうに、意識して目を逸らすのに、男子生徒はまるでそこらへんの石ころを見た後のように、特に意識もしないで目を外したのだ。
 私は、驚愕していた。男子生徒が私を、まるで地べたに転がる石ころを見た後のような態度を見せたことにではない。のその鋭い目つきの奥にある、瞳にだ。
 今まで私が見てきた人達の瞳には、感情という色があった。赤、青、黄、緑、橙、紫、白、灰、黒、様々だ。しかし、彼の瞳はどの色とも違った。

 私は立ち止まり後ろを振り向くと、先には今しがた自分とすれ違った彼の背中が見える。
 その背中を見ながら、私の頭の中には先ほどすれ違った時に見た、男子生徒の瞳が焼きついていた。
 彼の瞳には自分に対する感情が、全く映し出されていなかった。
 私はそんな感情のない瞳に、とても惹きつけられていた。
 これが、私が八切キリヤくんと初めて出会った出来事だ。


 それから私のアプローチのおかげで、キリヤくんと今の間柄になれたわけだが、それはまた別の話だ。

 ……それにしても、しつこい視線だな。

 私はいくつかの視線を受けながら、一つだけ異様に執拗な視線を送っている人がいることに、気付いていた。
 というか、バイトをしている時からその視線を受けてたから、誰の視線かも分かっている。
 それに、今日が初めてってわけでもない。私がバイトを始めて少しした時からこの視線を受けている。
 多分、いや間違いなくこの視線を向けてくる人は私のストーカーだ。
 私のバイト先の常連さんでもある眼鏡をかけた男の人、あの人だ。いつも一人できてブラックコーヒーを頼み、タブレットで何かを見ているその人は、時たま私のことを見てくる。
 初めは気にすることなく、ちょっと面白半分で目を合わせたりしていたけれど、面倒になってきて最近は意識して目を合わせないようにしたり、注文を取るときは他のバイトの子に頼んだりしていた。
 だけど、まさかバイト帰りをつけられるようになるとは。家の場所はバレないようにいつも撒いてはいるが、そろそろ何とかしなければ後々めんどうなことになりそうだ。
 ストーカーがストーカーに追われるとは、なんとも珍妙な話。漫画みたい。

 どーしよーかなー。
 
 足をぶらぶらさせながら考えていると、自分が乗る電車がやってきた。
 
 ――そうだ良いこと考えた ♪
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