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ストーカー女のストーカー
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◯僕が関心を向けるもの◯ Sight : ストーカー
ドアを開くと、からんからんと設置されていたベルが鳴り響く。同時にコーヒーの深みのある独特の芳香が、スゥーと鼻腔に広がっていく。
「いらっしゃいませ」
店内から女性の声が聞こえてくる。
そちらを見ると、黒いショートエプロンに白いシャツを着飾った茶髪の女の子がいた。
黒と白を基調とした服がこの喫茶店の制服であることは、何度もこのカフェに通っていることからすぐに分かる。
自分がいつも座る場所が空いていることを確認して、その席に座ると、すぐにウェイトレスの人が来た。先程見た子とは違い、黒髪の女の子だ。
「こちら今日のおすすめになります。ご注文がお決まりになりましたら、お呼びくだーー」
「コーヒーのブラックで」
僕は黒髪のウェイトレスが言い終える前に、注文を告げる。そんな僕の態度にウェイトレスは気にするそぶりも見せず、「かしこまりました」と言って去っていった。
僕は鞄からタブレットを取り出すと、ネットアプリを開いて今日のニュースを読み始める。
注文したコーヒーはすぐに来て、黒髪のウェイトレスが「ごゆっくり」と言って、また去っていった。
僕はその湯気の立つコーヒーを飲みつつ、タブレットに映っているある記事に、注目していた。
神残し殺人事件。
最近この町を騒がせているこの事件は、妙なことに殺人事件と言われながらも、死体が見つかっていない。
ならばなぜ、殺人事件と呼ばれているのか。それは、人が死んだと思わせるあるものが現場にあるからだ。そのあるものとは、『血』だ。現場には血の跡や血だまりが残っており、その量は人が死ぬには十分なほど、大量らしい。
だがこれだけでも、殺人事件と呼ぶにはまだ不十分。血だけでは人が死んだとは分からない。死体という確実なものがなければ、人が殺されたとは断定できない。
それを裏付けるあることがこの事件にはある。それが、『神隠し』。『血』の現場が発見された後、必ず行方不明者が現れるのだ。
『血』の現場に行方不明者、この二つの事件に繋がりがあると疑われ始めたのは、三つ目の『血』の現場が発見され、そのあとすぐに三人目の行方不明者が現れてから。
そして五人目の行方不明者が現れたところで、繋がりがつけられた。
決め手は『血』の現場に残された血と、行方不明になった者のDNAが一致したことによる。
その後、今まで現場にあった血と、行方不明者のDNAを確認したところ、それぞれの『血』の現場が発見された時と同じ時期にいなくなった行方不明者のDNAが全て一致した。
これらの事柄により死体のないこの事件は殺人事件と呼ばれ、人が忽然と消えることから『神隠し』、合わせて血を残していくことから『神残し』と呼ばれるようになった。
今日の記事には七つ目の『血』の現場が発見されたと書かれているが、警察は未だに何の手がかりも掴めていない様子だ。
犯人は一体誰なのか? 男なのか女なのか? 単数犯なのか複数犯なのか? 行方不明者はどうなったのか? 何故血だけが残されているのか? 何故こんなことをするのか? そもそも犯人なんて存在するのか?
多くの疑問が出てくるこの物騒な事件は、世間の注目する大的であるが、正直僕にはどうでもいい。
空になったカップを置いて、こっそりとある人に目を向ける。
その人は帰ったお客さんが残していった皿やカップを片付けて、テーブルを布巾で拭いていた。
彼女は僕の視線に気付いているだろうか、いないだろうか。もし気付いているのなら、彼女は僕のことをどう思っているのだろうか、どう感じているのだろうか、どう見ているのだろうか。
そのウェーブのかかった長い茶髪に、くりっとした目、整った可愛らしい容姿は人の目を惹きつけ虜にさせる。
世間が注目するニュースも過去にあった出来事も飲み干したコーヒーの値段にも僕にはどうでもいいことだ。
今、僕が関心を向ける的は彼女だけだ。
ドアを開くと、からんからんと設置されていたベルが鳴り響く。同時にコーヒーの深みのある独特の芳香が、スゥーと鼻腔に広がっていく。
「いらっしゃいませ」
店内から女性の声が聞こえてくる。
そちらを見ると、黒いショートエプロンに白いシャツを着飾った茶髪の女の子がいた。
黒と白を基調とした服がこの喫茶店の制服であることは、何度もこのカフェに通っていることからすぐに分かる。
自分がいつも座る場所が空いていることを確認して、その席に座ると、すぐにウェイトレスの人が来た。先程見た子とは違い、黒髪の女の子だ。
「こちら今日のおすすめになります。ご注文がお決まりになりましたら、お呼びくだーー」
「コーヒーのブラックで」
僕は黒髪のウェイトレスが言い終える前に、注文を告げる。そんな僕の態度にウェイトレスは気にするそぶりも見せず、「かしこまりました」と言って去っていった。
僕は鞄からタブレットを取り出すと、ネットアプリを開いて今日のニュースを読み始める。
注文したコーヒーはすぐに来て、黒髪のウェイトレスが「ごゆっくり」と言って、また去っていった。
僕はその湯気の立つコーヒーを飲みつつ、タブレットに映っているある記事に、注目していた。
神残し殺人事件。
最近この町を騒がせているこの事件は、妙なことに殺人事件と言われながらも、死体が見つかっていない。
ならばなぜ、殺人事件と呼ばれているのか。それは、人が死んだと思わせるあるものが現場にあるからだ。そのあるものとは、『血』だ。現場には血の跡や血だまりが残っており、その量は人が死ぬには十分なほど、大量らしい。
だがこれだけでも、殺人事件と呼ぶにはまだ不十分。血だけでは人が死んだとは分からない。死体という確実なものがなければ、人が殺されたとは断定できない。
それを裏付けるあることがこの事件にはある。それが、『神隠し』。『血』の現場が発見された後、必ず行方不明者が現れるのだ。
『血』の現場に行方不明者、この二つの事件に繋がりがあると疑われ始めたのは、三つ目の『血』の現場が発見され、そのあとすぐに三人目の行方不明者が現れてから。
そして五人目の行方不明者が現れたところで、繋がりがつけられた。
決め手は『血』の現場に残された血と、行方不明になった者のDNAが一致したことによる。
その後、今まで現場にあった血と、行方不明者のDNAを確認したところ、それぞれの『血』の現場が発見された時と同じ時期にいなくなった行方不明者のDNAが全て一致した。
これらの事柄により死体のないこの事件は殺人事件と呼ばれ、人が忽然と消えることから『神隠し』、合わせて血を残していくことから『神残し』と呼ばれるようになった。
今日の記事には七つ目の『血』の現場が発見されたと書かれているが、警察は未だに何の手がかりも掴めていない様子だ。
犯人は一体誰なのか? 男なのか女なのか? 単数犯なのか複数犯なのか? 行方不明者はどうなったのか? 何故血だけが残されているのか? 何故こんなことをするのか? そもそも犯人なんて存在するのか?
多くの疑問が出てくるこの物騒な事件は、世間の注目する大的であるが、正直僕にはどうでもいい。
空になったカップを置いて、こっそりとある人に目を向ける。
その人は帰ったお客さんが残していった皿やカップを片付けて、テーブルを布巾で拭いていた。
彼女は僕の視線に気付いているだろうか、いないだろうか。もし気付いているのなら、彼女は僕のことをどう思っているのだろうか、どう感じているのだろうか、どう見ているのだろうか。
そのウェーブのかかった長い茶髪に、くりっとした目、整った可愛らしい容姿は人の目を惹きつけ虜にさせる。
世間が注目するニュースも過去にあった出来事も飲み干したコーヒーの値段にも僕にはどうでもいいことだ。
今、僕が関心を向ける的は彼女だけだ。
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