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私じゃダメ?
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移動は順調だった。護衛の数が多いから野盗は襲ってこないし、魔物は先行部隊があっさりと返り討ちにしてしまう。
馬車は一度も止まることなく進み、一泊する村に到着した。
窓から外を覗いてみる。
交易の主要街道を挟むようにして宿屋や食事処がずらりと並んでいる。昔、教科書かテレビかで見た宿場町みたいな感じだ。
学校に行けてなかった僕でも分かるぐらい、似たような光景になっている。
行き来も多いようで通行人をよく見かける。宿の近くには馬車が止まっていて、馬小屋まであった。
「すごい人ですね」
「王都と私たちが住んでいる町を繋ぐ、主要街道ですからね。騎士たちが定期的に魔物を間引きしていますし、安全だと商人たちからの評価は高いんですよ」
国のインフラを褒められたのが嬉しかったのだろう。ルアンナさんは自慢げに語ってくれた。
「皆さんも間引きには参加したことあるんですか?」
「もちろんです。私は斥候として魔物の発見と報告をしていましたよ。どう? すごくない?」
褒めて! 褒めて! と目で訴えかけているのはリテートさんだ。
魔物を狩っていたときは自己主張が少なめで話す機会が少なかったけど、結構、グイグイ来る人なんだな。
「すごいです!」
「でしょー! しかもスキルブースターで進化すると『全域感知』になって、魔物や人、動物だけじゃなく精霊や魔力まで感知できるようになるし、範囲もすんごく広くなるんだよね! どう? 私、よくない? おすすめ物件だよ?」
対面に座っていたこともあって、ぐいっと上半身を前に出して顔を近づけてきた。
瞳がキラキラとして美しい。
「私の『俊足』は『縮地』になって、ワープみたいなのができるようになった。スキルの汎用性で言えば私の方が上だよ」
隣にいるエリンさんは腕を絡めて胸を押しつけてきた。今日は鎧を着ていないので、柔らかい感触が存分に楽しめる。
いつもとは違う人たちに言い寄られ、新鮮なドキドキを味わうのと同時に罪悪感も出てきた。
エリンさんが服を脱ぎだしたので、目をつぶってレベッタさんを思い浮かべ謝罪する。
『順番を守るなら気にしないよ!』
ああ、言いそうだ。しかも裏表のない、輝くような笑顔で。
女性ばかりの世界だから男をシェアするなんて当たり前で、気にするとしたら順番ぐらいだ。しかも多くの人は何番目でもいいって考えだから、強いこだわりがあるのはレベッタさんぐらいだった。
だからこそ僕は最初の人は決めている。
目を閉じたまま、迫ってきたエリンさんの肩を押して離した。
「私じゃダメ?」
「順番というものがありますから」
またそれとは別に、僕は精神的な問題を一つ抱えている。
結婚して家族になったはずの父親と母親の関係は最悪だった。
特に父親は日常的にDVをしていたし、僕にもその血が流れている。女性と深い関係になったら豹変してしまうんじゃないだろうか。そういった不安を抱えていて、キスまではいいけど、その先の一線は越えられない。
行為の直前になったら、きっと僕の息子はしぼんでしまうだろう。
この精神的な問題を解決しない限り子供は作れない。彼女たちの希望を叶えられないのは嫌なのでどうにかしたいけど、解決の糸口すら見えていない。
「馬車の中なら誰にも見られないし、ちょっとぐらいダメ?」
「しません」
「いいじゃん~~」
拒否してもエリンさんは、僕を襲おうとしている。
焦りはない。
目を開けてるルアンナさんを見ると、軽く頷いてくれた。視線だけで気持ちが伝わったようだ。
「男性が拒否しているのに迫ることは騎士団内でも禁止されている。エリンがそれ以上、イオディプス君に近づくのであれば、相応の処分を下さなければならない。それでもお前は前に進むのか?」
効果はてきめんだった。ピタリとエリンさんが止まる。
「ルアンナ隊長は、お隣に住んでいるからチャンスありますけど。私やリテートはそうじゃないんです。今を逃したら――いだっ!?」
文句を言ったエリンさんの頭上に、ルアンナさんの拳が落ちた。
「チャンスは平等に与える。順番があるのは理解できるよな?」
「…………本当にもらえるんですか?」
「スカーテ王女から許可は出ている。約束は違えないさ」
えーっと僕の許可は? と言える雰囲気ではなかった。
3人の騎士は集まってコソコソと話している。
「最後は王女が独占するんじゃないんですか?」
「そんなことはしない。特区内にいる女性なら誰でもチャンスを与えるらしい」
「ということはっ!」
「バカ! 声が大きい!」
エリンさんの頭が叩かれたけど、口元は笑っている。
良い感じに話し合いは進んでそうだ。
「チャンスの順番だが、最優先はレベッタパーティだ」
「イオディプス君を拾っただけなのに?」
「彼を見つけて我が国に取り込んだのは功績にならないと?」
「い、いえ。そんなことはありません!」
「わかったならいい。レベッタはアホだが、その純真さにイオディプス君は居心地が良いと思っている。それがナイテア王国を選ぶ理由になり、ブルド大国からの引き抜きを防ぐ唯一の手段ともなる」
「……なるほど。確かにレベッタの功績は大きいですね」
「ああ。だからこそ、今回の会談で同席を許されてないのが気がかりだ。あえて狙って指定したんだろうな」
僕が知らないところで、レベッタさんたちは高い評価を受けていたようだ。
なんだか鼻が高くなる気持ち。
ブルド大国のお土産を沢山買って帰ることにしよう。
馬車は一度も止まることなく進み、一泊する村に到着した。
窓から外を覗いてみる。
交易の主要街道を挟むようにして宿屋や食事処がずらりと並んでいる。昔、教科書かテレビかで見た宿場町みたいな感じだ。
学校に行けてなかった僕でも分かるぐらい、似たような光景になっている。
行き来も多いようで通行人をよく見かける。宿の近くには馬車が止まっていて、馬小屋まであった。
「すごい人ですね」
「王都と私たちが住んでいる町を繋ぐ、主要街道ですからね。騎士たちが定期的に魔物を間引きしていますし、安全だと商人たちからの評価は高いんですよ」
国のインフラを褒められたのが嬉しかったのだろう。ルアンナさんは自慢げに語ってくれた。
「皆さんも間引きには参加したことあるんですか?」
「もちろんです。私は斥候として魔物の発見と報告をしていましたよ。どう? すごくない?」
褒めて! 褒めて! と目で訴えかけているのはリテートさんだ。
魔物を狩っていたときは自己主張が少なめで話す機会が少なかったけど、結構、グイグイ来る人なんだな。
「すごいです!」
「でしょー! しかもスキルブースターで進化すると『全域感知』になって、魔物や人、動物だけじゃなく精霊や魔力まで感知できるようになるし、範囲もすんごく広くなるんだよね! どう? 私、よくない? おすすめ物件だよ?」
対面に座っていたこともあって、ぐいっと上半身を前に出して顔を近づけてきた。
瞳がキラキラとして美しい。
「私の『俊足』は『縮地』になって、ワープみたいなのができるようになった。スキルの汎用性で言えば私の方が上だよ」
隣にいるエリンさんは腕を絡めて胸を押しつけてきた。今日は鎧を着ていないので、柔らかい感触が存分に楽しめる。
いつもとは違う人たちに言い寄られ、新鮮なドキドキを味わうのと同時に罪悪感も出てきた。
エリンさんが服を脱ぎだしたので、目をつぶってレベッタさんを思い浮かべ謝罪する。
『順番を守るなら気にしないよ!』
ああ、言いそうだ。しかも裏表のない、輝くような笑顔で。
女性ばかりの世界だから男をシェアするなんて当たり前で、気にするとしたら順番ぐらいだ。しかも多くの人は何番目でもいいって考えだから、強いこだわりがあるのはレベッタさんぐらいだった。
だからこそ僕は最初の人は決めている。
目を閉じたまま、迫ってきたエリンさんの肩を押して離した。
「私じゃダメ?」
「順番というものがありますから」
またそれとは別に、僕は精神的な問題を一つ抱えている。
結婚して家族になったはずの父親と母親の関係は最悪だった。
特に父親は日常的にDVをしていたし、僕にもその血が流れている。女性と深い関係になったら豹変してしまうんじゃないだろうか。そういった不安を抱えていて、キスまではいいけど、その先の一線は越えられない。
行為の直前になったら、きっと僕の息子はしぼんでしまうだろう。
この精神的な問題を解決しない限り子供は作れない。彼女たちの希望を叶えられないのは嫌なのでどうにかしたいけど、解決の糸口すら見えていない。
「馬車の中なら誰にも見られないし、ちょっとぐらいダメ?」
「しません」
「いいじゃん~~」
拒否してもエリンさんは、僕を襲おうとしている。
焦りはない。
目を開けてるルアンナさんを見ると、軽く頷いてくれた。視線だけで気持ちが伝わったようだ。
「男性が拒否しているのに迫ることは騎士団内でも禁止されている。エリンがそれ以上、イオディプス君に近づくのであれば、相応の処分を下さなければならない。それでもお前は前に進むのか?」
効果はてきめんだった。ピタリとエリンさんが止まる。
「ルアンナ隊長は、お隣に住んでいるからチャンスありますけど。私やリテートはそうじゃないんです。今を逃したら――いだっ!?」
文句を言ったエリンさんの頭上に、ルアンナさんの拳が落ちた。
「チャンスは平等に与える。順番があるのは理解できるよな?」
「…………本当にもらえるんですか?」
「スカーテ王女から許可は出ている。約束は違えないさ」
えーっと僕の許可は? と言える雰囲気ではなかった。
3人の騎士は集まってコソコソと話している。
「最後は王女が独占するんじゃないんですか?」
「そんなことはしない。特区内にいる女性なら誰でもチャンスを与えるらしい」
「ということはっ!」
「バカ! 声が大きい!」
エリンさんの頭が叩かれたけど、口元は笑っている。
良い感じに話し合いは進んでそうだ。
「チャンスの順番だが、最優先はレベッタパーティだ」
「イオディプス君を拾っただけなのに?」
「彼を見つけて我が国に取り込んだのは功績にならないと?」
「い、いえ。そんなことはありません!」
「わかったならいい。レベッタはアホだが、その純真さにイオディプス君は居心地が良いと思っている。それがナイテア王国を選ぶ理由になり、ブルド大国からの引き抜きを防ぐ唯一の手段ともなる」
「……なるほど。確かにレベッタの功績は大きいですね」
「ああ。だからこそ、今回の会談で同席を許されてないのが気がかりだ。あえて狙って指定したんだろうな」
僕が知らないところで、レベッタさんたちは高い評価を受けていたようだ。
なんだか鼻が高くなる気持ち。
ブルド大国のお土産を沢山買って帰ることにしよう。
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