死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?

わんた

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今のうちに伝えておきたいことがあります

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 夕食は野菜をドロドロに溶かしたスープだった。肉は入っていない。予定より遅れることになったので、食料の節約をすると決めたみたいなんだ。

 食事を持ってきてくれた女性は申し訳なさそうにしていたけど、僕は特に気にしていない。みんなと同じで問題ないからね。むしろ特別扱いされる方が恐縮しちゃう。

 女性に襲われないよう、僕は馬車で一人食事を進めている。

 塩はたっぷりと入っていて、野菜の甘みとあいまって美味しい。旅先だと考えれば十分だ。すぐに食べ終わりそうだ。

 スプーンを動かす手を止めず食事を進めていると、外が騒がしいことに気づく。

「何かあったのかな」

 窓から外を見ると、騎士のみんなが武器を持って空を見ていた。

 ここからじゃよく分からない。

 ドアを開けて外へ飛び出す。

 上空に光の球が浮かんでいて、蜥蜴型の鳥、たぶんだけどワイバーンが空中に一匹いた。

 何本もの矢が放たれているけど硬い皮膚に弾かれている。攻撃は効いてない。スキルを使えばダメージは与えられそうだけど、弓系等を持っている人はいないようだ。

「イオディプス君! 危ないので中に入っていてください!」

 僕の姿を見つけたスノーさんが、慌てて駆け寄ってきた。

 馬車へ押し込もうとしてきたので抱きついて抵抗すると、顔が真っ赤になって動きが止まった。

「僕のスキルで援護したいんです。スノーさんは遠距離系のスキルを持っていますか?」
「え、ああ、一応、私は火法のスキルを持っていますが、ランクは低いので強くありません」

 呆けた顔をしていたけど、すぐに真顔になって返事をしてくれた。

「スキルがあるなら大丈夫です。僕が援護するので使って下さい」

 スノーさんの背後に回って抱きしめ、首筋にキスをする。スキルブースターが発動してスキルが進化したはずだ。

「あぁっ! 体の奥……下半身が熱い! これがSSランクスキルの力っ!」

 全身を震わせながら、スノーさんは興奮していた。

 女性特有の甘い匂いが強くなっている。フェロモンってやつなのかな。少しだけ興奮してしまった。

『ファイヤーランス!』

 ワイバーンを越えるほど巨大な炎の槍が頭上に発生した。

 周囲にいる騎士たちが、僕とスノーさんを凝視している。

 そのなかにルアンナさんもいて、駆けつけてくれた。

「スキルブースターを使ったのですか?」
「うん」
「ずるいっ! ……じゃなくて助かりました」

 本音をポロリとこぼしたけど、今はそれどころじゃないのでつっこまない。

 空を見上げる。

「イオディプス君との愛の結晶を受け取りなさいっ!」

 初対面の時は冷たく、男性相手に一歩も引かない女性だったけど、スノーさんもこの世界の住民なんだなと安心した。

 愛の結晶――炎の槍はワイバーンを飲み込んで、消し炭にすると夜空へ消えていった。

 他に魔物の姿はない。

 無事に撃退できたみたいだ。

「団長が隔意を抱く理由が分かった……これは禁断の麻薬だ……」

 スノーさんが興奮気味に何か言ってたけど、勝利の歓声でうるさくて聞こえなかった。

 呆然とした顔をしていて動いてない。大丈夫なのかなと思って近づこうとしたら、肩に誰かの手が置かれて止められてしまった。

 後ろを振り返るとルアンナさんだった。

「今のうちに伝えておきたいことがあります」

 普段とは違った真剣な顔だ。何があったんだろう。

「移動中にブルド大国の騎士と交流をして情報を集めたのですが……」

 途中で止めて、誰もいないか周囲を見渡している。

 リテートさん、エリンさんの二人が、僕に近づこうとしている人に話しかけて、足止めをしている姿が見えた。

「現在、女王と一部の騎士団が反発しているそうです」
「それって良くないことですよね」
「はい。最悪、滞在中にクーデターが起こる可能性があります」

 軍事勢力が政治、今回だと王族に対して反乱を起こすってことだよね!?

 大国と呼ばれるほどの国力があるなら、大きな争いに発展しそうだ。

「もし本当なら、僕を招待する余裕なんてないんじゃない?」
「いえ。逆にこのタイミングだからこそ、かもしれません。スキルブースターさえあれば敵が倍の人数だとしても勝てますからね」
「そういうことっ!?」

 だから急いでいたのかな。

 強引だったのも納得してしまった。

 スノーさんが僕の方にやってきたので、ルアンナさんは「また後で」と言って去ってしまう。

「何を話されていたんですか?」

 クーデターが発生するんですか、なんて聞けない。

 取り繕うようにして笑顔を作り、嘘を言う。

「怪我がないか心配してくれたみたいです」

 目を細めて、スノーさんは僕が本当のことを言っているのか考えているようだ。しばらくして小さなため息を吐いた。

 この場での追求しても、真実はわからないと諦めてくれたのだろう。

「今回は仕方ありませんが、私の許可無く接触しないようにしてください」
「わかりました」
「うん。素直な男性は大好きです。さ、馬車へ戻りましょう」

 ワイバーンとの戦いを経て、スノーさんの雰囲気は柔らかくなった気がする。

 僕はこれから向かうブルド大国に不安を覚えながらも、手を繋いで馬車に戻った。
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