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第16話 愛の告白
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「今時、ラブレターなんて出す人いるんだ……」
そういうことか。告白されたとじゃなく、手法が古くて驚いていたのか。
今ならチャットか通話、もしくは直接伝える方が多い。
ま、一度も告白されたことない……いや、あったわ。変態コメントを書き込むメメさんだ。彼女は何度も俺に愛をぶつけるどころか、妊娠しましたなんてことすらまで伝えてくる。あれも一種の告白だと思えば、俺もモテ人生を送っていると言えるだろうけど、納得感はない。
あれは違う。ノーカウントだということにしておこう。
「読んでみる?」
「うん……写真で送ってくれるかな」
手紙を渡そうとして腕を伸ばしたけど、舞依さんは近づいてくれなかった。
ん? どうしたんだろう。嫌われていたのは勘違いだったはずなのに。動けない理由でもあるのかな。
立ち上がって近づこうとする。
「まって! このままでいいから! 今日は成分摂取しすぎてギリギリなの! これ以上は死んじゃうってっ!!」
「ギリギリ? 死んじゃう? どいういう……」
「お願い!! これ以上は聞かないで!!」
美容系のサプリメントを取り過ぎて体調が悪い、とか? いや、それは違うか。俺の体臭の問題なら、舞依さんはその場は我慢する性格をしているだろうから、原因ではないと思う。どうして近づいちゃいけないんだ?
考えても理由は不明なままだけど、今は大きな問題ではないので一旦放置でいいか。困ったときに考えよう。
ラブレターを写真に撮影してチャットで共有するとすぐに既読が付いた。
「…………情熱的、なのかな? 難しくてよくわからないや」
しばらく沈黙してから出た言葉だ。
ポエムは比喩が多くて理解しにくい。かろうじて愛を伝えているんだと気づけるレベルで、ラブレターとして機能していなかった。
「SDカードの方も見てみようか」
「うん」
昔に使っていたノートパソコンは設定を変えてないので、新居のネットには繋がっていない。仮にウィルスに感染しても被害は最小限で済む。
ログイン情報を入力してからSDカードを差し込むと、しばらくしてフォルダが表示され、動画が一つあった。
ネットが接続されてないことを確認してから、カーソルをファイルの所までもっていく。
「一緒に見る?」
「うん。一人だと怖いから義兄さんとがいい」
頼りにされている嬉しさがわき上がる。
一人っ子だから新鮮な感覚だ。自然とヤル気が高まっていく。
「じゃあ開くね」
動画ファイルをダブルクリック、立ち上げると制服を着た男が立っていた。グランドで盗撮していたヤツで間違いない。背景は河原だ。ギターを肩からぶら下げていて何をするのかわかってしまった。
「アイラーーービューーー」
歌だ。
愛の歌だ!
ポエムは遠回しな言葉が多かったけど、歌は直球だった。I LOVE YOUだけじゃない。一緒に暮らそう、君しか見えない、将来は子供を三人作ろうなんてことまで言っている。対象じゃない俺でも恐怖を覚えるほどなのだから、舞依さんはもっとキツイだろう。
心配になって顔を確認すると予想していたとおり、顔が青ざめて自分の腕で体を抱きしめ、嫌悪感をあらわにしていた。
数々の男に告白されてきただろう舞依さんにとっても、初めて経験する行為ということであれば、盗撮男は非常にレベルが高い。悪い意味でね。
「この人、何を考えているの?」
「舞依さんのことだよ」
「義兄さん……」
目を半分にしてじとーっと軽く睨まれてしまった。
冗談を言って良い場面ではなかったので、素直に謝る。
「ごめん。でも完全に間違いって訳じゃないよ。彼は想像上の舞依さんのことばかり考えている。きっと脳内では告白を受け入れてもらった後のことを考えていると思うよ」
「私が断るなんて想像すらしてないってこと?」
「うん。だから厄介なんだよね」
断れば逆上する可能性があるのだ。脳内での落差が大きい分、何をしでかすかわからない。
「舞依さんに直接会わせるのは止めておこう。俺が忠告して付きまとうのを止めてもらって……」
「それはダメ。義兄さんに迷惑はかけられません」
「でも、あれは危ない相手だよ?」
「大丈夫です。予想外の歌に戸惑いましたが、あの手の人には慣れていますから」
「慣れてるって……」
「何度もあるんですよ。相手の迷惑を考えず、一方的に感情を押しつけられることって」
話している間に落ち着いてきたのか、顔色は戻って自分を抱きしめているのもやめている。
愛の歌やラブレターは初めてでも一方的な押しつけには経験があるみたいだ。
「それじゃどうするの? 正面から告白を断る?」
「徹底的に無視します。友達に事情を話せば私が一人になることってほとんどないので、逆上されても大丈夫です。安心してください」
「凶器を持ちだしてきたらどうするの?」
「何度も同じ方法で断ってきました、そんな物を持ってくる人はいませんでした。大丈夫ですよ」
経験に裏付けられた自信があるのだろう。きっぱりと言い切った。
俺が何を言っても考えを変えそうにはない。出来ることとしたら陰で見守るぐらいだろうか。
配信する時間は減ってしまうが、舞依さんの安全には変えられない。リスナーの皆にはちゃんと説明しておけば変な心配はしないだろうし、理解はしてくれるはず。
一旦は舞依さんの話を受け入れよう。
「わかった応援するよ」
「義兄さんにそう言ってもらえたら負ける気がしません!」
小さく拳を作って力強く言われてしまった。
しょっちゅう倒れてしまうほど体は弱いイメージがあったんだけど、なんだか頼もしく見えるから不思議だ。
そういうことか。告白されたとじゃなく、手法が古くて驚いていたのか。
今ならチャットか通話、もしくは直接伝える方が多い。
ま、一度も告白されたことない……いや、あったわ。変態コメントを書き込むメメさんだ。彼女は何度も俺に愛をぶつけるどころか、妊娠しましたなんてことすらまで伝えてくる。あれも一種の告白だと思えば、俺もモテ人生を送っていると言えるだろうけど、納得感はない。
あれは違う。ノーカウントだということにしておこう。
「読んでみる?」
「うん……写真で送ってくれるかな」
手紙を渡そうとして腕を伸ばしたけど、舞依さんは近づいてくれなかった。
ん? どうしたんだろう。嫌われていたのは勘違いだったはずなのに。動けない理由でもあるのかな。
立ち上がって近づこうとする。
「まって! このままでいいから! 今日は成分摂取しすぎてギリギリなの! これ以上は死んじゃうってっ!!」
「ギリギリ? 死んじゃう? どいういう……」
「お願い!! これ以上は聞かないで!!」
美容系のサプリメントを取り過ぎて体調が悪い、とか? いや、それは違うか。俺の体臭の問題なら、舞依さんはその場は我慢する性格をしているだろうから、原因ではないと思う。どうして近づいちゃいけないんだ?
考えても理由は不明なままだけど、今は大きな問題ではないので一旦放置でいいか。困ったときに考えよう。
ラブレターを写真に撮影してチャットで共有するとすぐに既読が付いた。
「…………情熱的、なのかな? 難しくてよくわからないや」
しばらく沈黙してから出た言葉だ。
ポエムは比喩が多くて理解しにくい。かろうじて愛を伝えているんだと気づけるレベルで、ラブレターとして機能していなかった。
「SDカードの方も見てみようか」
「うん」
昔に使っていたノートパソコンは設定を変えてないので、新居のネットには繋がっていない。仮にウィルスに感染しても被害は最小限で済む。
ログイン情報を入力してからSDカードを差し込むと、しばらくしてフォルダが表示され、動画が一つあった。
ネットが接続されてないことを確認してから、カーソルをファイルの所までもっていく。
「一緒に見る?」
「うん。一人だと怖いから義兄さんとがいい」
頼りにされている嬉しさがわき上がる。
一人っ子だから新鮮な感覚だ。自然とヤル気が高まっていく。
「じゃあ開くね」
動画ファイルをダブルクリック、立ち上げると制服を着た男が立っていた。グランドで盗撮していたヤツで間違いない。背景は河原だ。ギターを肩からぶら下げていて何をするのかわかってしまった。
「アイラーーービューーー」
歌だ。
愛の歌だ!
ポエムは遠回しな言葉が多かったけど、歌は直球だった。I LOVE YOUだけじゃない。一緒に暮らそう、君しか見えない、将来は子供を三人作ろうなんてことまで言っている。対象じゃない俺でも恐怖を覚えるほどなのだから、舞依さんはもっとキツイだろう。
心配になって顔を確認すると予想していたとおり、顔が青ざめて自分の腕で体を抱きしめ、嫌悪感をあらわにしていた。
数々の男に告白されてきただろう舞依さんにとっても、初めて経験する行為ということであれば、盗撮男は非常にレベルが高い。悪い意味でね。
「この人、何を考えているの?」
「舞依さんのことだよ」
「義兄さん……」
目を半分にしてじとーっと軽く睨まれてしまった。
冗談を言って良い場面ではなかったので、素直に謝る。
「ごめん。でも完全に間違いって訳じゃないよ。彼は想像上の舞依さんのことばかり考えている。きっと脳内では告白を受け入れてもらった後のことを考えていると思うよ」
「私が断るなんて想像すらしてないってこと?」
「うん。だから厄介なんだよね」
断れば逆上する可能性があるのだ。脳内での落差が大きい分、何をしでかすかわからない。
「舞依さんに直接会わせるのは止めておこう。俺が忠告して付きまとうのを止めてもらって……」
「それはダメ。義兄さんに迷惑はかけられません」
「でも、あれは危ない相手だよ?」
「大丈夫です。予想外の歌に戸惑いましたが、あの手の人には慣れていますから」
「慣れてるって……」
「何度もあるんですよ。相手の迷惑を考えず、一方的に感情を押しつけられることって」
話している間に落ち着いてきたのか、顔色は戻って自分を抱きしめているのもやめている。
愛の歌やラブレターは初めてでも一方的な押しつけには経験があるみたいだ。
「それじゃどうするの? 正面から告白を断る?」
「徹底的に無視します。友達に事情を話せば私が一人になることってほとんどないので、逆上されても大丈夫です。安心してください」
「凶器を持ちだしてきたらどうするの?」
「何度も同じ方法で断ってきました、そんな物を持ってくる人はいませんでした。大丈夫ですよ」
経験に裏付けられた自信があるのだろう。きっぱりと言い切った。
俺が何を言っても考えを変えそうにはない。出来ることとしたら陰で見守るぐらいだろうか。
配信する時間は減ってしまうが、舞依さんの安全には変えられない。リスナーの皆にはちゃんと説明しておけば変な心配はしないだろうし、理解はしてくれるはず。
一旦は舞依さんの話を受け入れよう。
「わかった応援するよ」
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